第53話 ベルン侵攻! 1

「ミリシア王国より要請がありました。陛下」

「うむ。元帥もよいな」

「御意」


 ミリシア王国よりの非公式ながら、援軍の要請があり、ベルン王国は近衛師団3軍を援軍として出撃させた。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 ミリシア~ベルン国境より、ベルン王都方面へ入り込んだ街道。


 の上空にある魔物の影。

 って、グリフォングランに乗ってるオレロディマスしかいないよね。


「近衛師団が…。あれ、ホントに援軍?ミリシア支援だと思う」

『思いたいが…、これは、軒先を貸したら母家を取られかねんな』

「だよねー。その、セラ=マドウ伯爵夫人だっけ?彼女にとってもコレは想定内なのかな?」

『流石に売国奴に堕ちたとは思いたくないな』


 あ、オレ、1人漫才やってる訳じゃないからね。幻体通信ファンタム・コール使って、パルム夫人がグランの背に載ってる形にしてるから。


 普通は、これだけ離れると幻体は届かない。だからちょいと支援出来る魔導具を使ってる。


 通信針コーリング・ニードル


 体内に埋め込む事により見た物聞いた物を相対する針を持つ者に伝えられる魔導具。


 とは言え抜き差し着脱は自由意志で出来る上に使い捨てアイテム。しかも1日しか持続時間も保たない。


「で、あれ、どうすんの?」

『何もしない。寧ろあの者達に何かさせた方が話は早いだろう』

「敢えて侵略させるって?」

『そうだ。かなりの荒療治だがな。まさか全土を奪われる事はあるまい。かなり国土は割譲されるであろうがな』

「かなりの荒療治…ねぇ」


 一歩間違うと国を失うよ?


「それは、最悪ミリシアが地図から消える事も止む無し、と考えてる?」

『最悪な。フフ、地図から消える、か。中々面白い表現だな。国が滅ぶ、と言われるかとも思っていたが』


 直球過ぎ!オレ、も少し察する男だよ。


「デリカシーあるいい奴、って認識改めて欲しいですね」

『成る程。考えておこう』

「じゃ戻ります。フェンがいるとは言え、あまり貴女を1人にはしたくないですから」

『ふむ。未亡人も対象に入るのかな?もしかして私は口説かれている?』

「ネェよ」


 流石に否定するツッコむよ。


『まぁ、孫のいる身だ。笑い飛ばしてくれるかと思ったがな』

「知りませんよ」


 マジで漫才になりそうだ。オレは帝国との国境方面へ引き返す。


「このまま帰ります。後はよろしく」

『うむ。ほう、どうやら我が館では騒ぎになりつつあるな』

「貴女の失踪は、かなりの大事だと思いますよ」


 中々肝のでかい夫人だな。

 流石に一国の軍師だけの事はあるよ。マジで尊敬する。


 魔法で姿を消した後、一旦地上に降りたオレはフェンを回収する。


 幻体では無い、パルム夫人本人と別れの挨拶をすると、直様帝国への帰途に。


「本当に感謝する。ロディマス卿にも帝国正教会法皇にも。さて、マドウ夫人。私とはっきり敵対した事のツケを取り立てさせてもらおうかな」


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 で、国境過ぎて。

 この辺はモルド辺境伯の領地。国境警備隊の砦もある最辺境の地、サマカーンの街。


「来た来た。コッチです、ロディマス卿」


 街の外れ。ちょいと広くなっている場所。

 手招きしている男女2人。


 異世界人エトランゼのハヤトさんとヒカリさん。モルド辺境伯令嬢ドリスさんに仕える護衛騎士の立場にある人達。


 オレはグランを広場に降ろす。

 駆け寄ってくる2人。


「今は冒険者として動いてます。"ロディ"で構わないですよ」

「じゃあ、ロディくん」


 確か、日本ではこの人達大学生って言ってたな。どっちにしろ先輩だよ。当時のオレは高校生だし。だから、くん呼びがしっくりくるね。


「グラン。我が影に控えて」


 グリフォンが目の前から消える。


「わかっていても不思議ね」

「これがないとスライムですら連れて回る事になりますから。益々テイマーが面倒なクラスになっちまいます」

「確かにな。で、首尾は?」

「微妙」


 オレは見てきた状況を話す。

 そこ迄守秘義務は無いし、ドリス嬢付き騎士で異世界人エトランゼの2人は特例扱いに入る。


「ベルン王国がもしかすると…。そう言う可能性が、って事か」

「ほぼ、それを狙ってない?後さ。セラって言ったわね、ミリシアの諜報活動のTOP。闇魔導師だっけ?召喚者プレイヤーにいたわ」

「は?あ、でもセラ=マドウ伯爵夫人って。なんでも4~5年前からご主人の後を継いで諜報の長になったと聞きましたよ」

「そう?でも、これは偶然?セラって娘、かなりの策士で魅了の術に長けた闇魔導師だった…、まさか?でも、ひょっとして⁉︎ハヤト、あのアイテム!私達と一緒に熟した『精霊の聖地』のクエスト‼︎」

「『時空の扉』か。オイオイ。まさか召喚時にアレを使って召喚時代を変えたって言うのか?ンなバカな」


 『時空の扉』って、1回だけ時間を巻き戻せる神のアイテム?


「成る程。強引だけど辻褄が合わない事もない、か。召喚者プレイヤーの人って、世界レムルの歴史を知ってるって、ヒカリさん、こないだ言ってましたよね?」



 「ここだけの話ね」

 ハヤトさんとヒカリさんとの交流の中、2人はゲームという名の、この世界レムル歴史バックボーンの事話してくれた。


「だからミリシアの動き、ドリスお嬢様に話せたんだけど、根拠がね。勘としか言えなくてね」


 言ってないけど…、言えないけどオレも召喚者プレイヤーだ。特例扱いの転生者だけど。だからヒカリさん達にゲーム内レムルの事を聞いての驚くフリは、我ながら中々の役者だったと思うよ。多分。



「そうね。貴方達にとっては信じられない話かもだけどね」

「こうなると信じざるを得ませんね。その、歴史からは…」

「外れてる。私達が知る歴史バックボーンならミリシアが帝国のミズル公国を割譲して3国時代になるもの。でも今は」

「ミリシア存亡の危機…ですね。貴女方が世界レムルに来て、歴史が変わっていってる訳だ」


 心が痛いな。

 1番歴史を変えてるの、オレロディマスだよね。しれっと現地民の顔してっけど。


「最悪、ベルンとの戦争になるなぁ」

「ハヤト?私達も他人事じゃないのよ。お館ソーザ様に従軍するかもしれないんだから」


 だよね。

 貴族の義務…。戦争にならなきゃいいけど、無理っぽいんだよなぁ。


 ミリシアの地に、思いを馳せて…。

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