第50話 戦争への道 2
「ほう。でっち上げ、で通すつもりか」
「宰相閣下。これでは穏便な策は取れませんな」
「ええ。国務大臣。では手筈通りに。王太子殿下もよろしいですね」
「やむを得ない。兄上、いや、宰相よ。いくぞ」
皇帝、宰相、国務大臣に王太子。
国政中枢の語らいで、この日、グランザイア帝国はミリシア王国への懲罰侵攻を決めた。
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「指名依頼だよ、ロディ。
「貴族ではないのは、斥候か先制攻撃か。そう言う事ですね」
やっぱ、きたかぁ。
「とりあえずアンバー辺境伯のとこへ行ってもらえるか。確かにギルドを通す依頼なんだが、詳細は我々では伝えられない、知らされていない」
これは厄介事だなぁ。
「依頼、受諾します。手続きして辺境伯閣下へ。直ぐに参りますとお伝え下さい」
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目の前の密書。
グランザイア帝国正教会法皇の名で、宮廷魔術師たる
「法皇キティアラ…。これは…、確かに魅惑的な話だが…」
密書によると、やはり
「法皇には別の思惑がある…、いや、どちらかと言うとリスティア皇女殿下の思惑か?」
手紙には、形だけの侵攻が書かれていた。
国境付近の砦街ミィゼナー。
元々、警備の砦だけがある地だったが、いつからかそこに市が立ち、人が暮らす様になった街。
その砦と城壁を潰す。そこから住民と警備兵は立ち去るべし。
密書には、そう記されている。
確かにここはグランザイア帝国に対しての国境警備隊であり、帝国側の城壁がメインの防塞だ。ここを落とされたら帝国からの侵攻を主街道から許す事になる。
王都側に城塞都市ラズワゥがあるから、侵攻が簡単に出来る訳では無いとは言え…。
しかも、この城壁はガルエイプの森に対しても守護の任をとっている。
この森には魔物猿人ガルエイプの集落がある。しかも群れのボスはオルガエイプというオーガ並みの力と体格を誇る人喰い猿人だ。住民を避難させたとは言え、ここの防壁を破壊するのは本来なら悪手だ。
だが、密書はそこにも触れている。
砦侵攻の前に、魔物猿人集落の壊滅とオルガエイプ討伐を成す、と。
信じてよいものか…。
尤も、あまり選択肢も無いのだが。
「エイクロイド元帥に連絡。宮廷魔術師の名に於いて、ミィゼナー砦及び砦街を放棄する」
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領主アンバー辺境伯から依頼の詳細を聞いた
懲罰として砦を落とす事。
その際、城壁を完膚なきまで破壊する事。
但し、その為に街が魔物猿人に蹂躙される事は看過できる事では無い。近隣の森に棲む当該魔物猿人の殲滅も成すべし。
指名依頼な訳だよ。
まさかオルガエイプをリーダーとするガルエイプの集落が近くの森にあるなんて。
オルガエイプは獰猛な肉食。下手すれば配下のガルエイプまで喰ってしまう程だ。コイツの食事が週1或いは10日に1度だという自然の摂理に助けられてる。しかも狡猾で慎重。オルガエイプは身の危険を侵す事を極端に嫌う。だから高い城壁で足止めされる事も避けるんだ。
この城壁が無くなれば…。
街が魔物猿人の狩場…って言うか、もう食堂って言ってもいいくらいのヤベー場所になる。
リスティア皇女も
今回は殲滅戦だ。
「フェン、グラン!頼むよ」
森に入るや否や、従魔達を先行させる。
ウォーオン!
グルルルルゥ‼︎
フェンは元の、10m程の体格に戻り森の中で暴れ出した。
ウッキャッキャッキャッキャアー!
ガルエイプ達も流石に逃げ惑う。
観念して立ち向かって来る奴もいるが、フェンは全く気にせず前脚で叩きのめしていく。
グランは上空から急降下してのブチかまし。ガルエイプ達は弾き飛ばされ、呻き声をあげながらのたうち回り、嘴でトドメを刺されていく。
ウッキャアアー!
配下を倒され、怒り心頭のオルガエイプ。
「おっと!お前の相手はオレ。必殺!
切り付けた相手を石化する必殺剣!
ピシッ!
オルガエイプは炎にも電撃にも強い。その上水属性は無効化という嫌なステータスを持つランクBの強敵と言える魔物だ。
でも「石化」持ちにとってはカモでしかない。
それ位、コイツはこの呪文に弱い。
確かに「
魔法剣は『溜め』が必要ないから。
目の前のオルガエイプ石像に向かって、念の為に
そうしてるうちにガルエイプ達はグランやフェンによって駆逐されたみたいだ。グランは飛び上がると上空から狩り残しがないか森を見渡す。
フェンもクンカクンカと匂いを追う。
どうやら殲滅したみたいだ。
よし。次は城壁だ。
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