第49話 戦争への道 1
「正面から抗議…。皇帝の名に於いて詰問されるとはね」
溜息しか出ない。
宮廷魔術師と言われても、この程度の知恵しか持てないのか?
全て…、1人のテイマーの為に。
ロディマス=クロノ男爵…。
魔法使いの魔法を全て修めて、尚且つテイマーとしてランクAの従魔を2頭も持つ
フランでの
ミズル公国での
帝国領へ侵攻し、上手くいけば領土割譲も描けた筈。実際途中までは上手くいきつつあった。
だが…。
「
この事、事実で有りや無しや。
グランザイア帝国皇帝ルーファス1世の名での詰問状。勿論ミリシア王国としては事実無根と返答するしかない。あくまでも帝国のでっち上げ、謀略難癖として
「本当に情け無い限りです」
私の目の前には王国国軍元帥のエイクロイド公爵が沈痛な面持ちで佇んでいる。
「やむを得まい。君以上に策を巡らせる者等この国には居らぬ。で、どう思う。帝国の陰謀・でっち上げと発した場合、帝国が取る道は」
「報復。彼等からすれば懲罰と言えるやもしれません。どれだけの規模で攻め込まれるか、ですが、最悪の場合我が方1国では太刀打ち出来ない可能性も有り得ます」
「ベルンに救援を頼むしかない。が、見返りとして要求されるモノも大きかろう。勝っても負けても王国が無くなる?どこまで交渉できるのか。厳しい戦いになりそうだな」
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ゴーダ家謀叛。
ミズル公国動乱と併せて、帝国の権威を揺るがす事件が立て続けに起こった事は帝国全土を怒らせるに充分だったんだ。
政教一体となっている帝国は、教会トップこそ
つまりは神への冒涜だ。
それに現皇家は帝国臣民の
ミリシア王国討つべし。
熱狂的に機運が高まってるんだよね。
「もし戦争にでもなったら、ロディはどうするの?」
ギルド併設酒場にて。
ランクA昇格おめでとーパーティ、という名のささやかなランチ。オレを含むいつもの5人で食事してる時に、ローラから聞かれた。
「帝国貴族の義務もあるし、従軍するしかないよ。多分一兵卒って訳にもいかないだろうし。独立遊軍として単独行動させてもらうのがベストなんだけどね」
「そうか。フェンリルにグリフォンがいるんだから、ロディはワンマンアーミーで充分戦果を期待出来るんだ」
納得する様にハリーも頷く。
「部隊の指揮とかじゃなくて?」
クリントの疑問。
「それ、オレの年齢がネックになると思う」
「そっか。ロディ、未成人だもんな」
本来なら男爵位を持つオレに、あんな口調や態度だと不敬罪って話になる。
だから准男爵へ陞爵された時に、オレは声を大にして繰り返し訴えたんだ。
「ギルド内では1冒険者。貴族扱いは一切無用。爵位は勿論、法皇家一族である事も無視して欲しい」
冒険者として動く時と貴族としての時。
オレはしっかりとケジメをつけてきた。
幸いギルドもアンバー辺境伯も衛士達も、オレの言い分を納得してくれた。冒険者仲間も賛同してくれて、仲間と言うべき同輩4人は態度を変えずに接してくれてる。
戦士のローラ、ハリーにクリント。魔法使いのアルト。バカ言い合える
このランチタイムって、ホント楽しいんだ。
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「あぁしてると、ホントに年相応っていうか、新人冒険者のガキなんだがなぁ」
「
ランチタイムだからか。依頼受付の手も空いたので、ふと併設酒場の方に目をやった
ロディ達だ。
同年代~ロディのみが未成人だが~の子等が語らってる。あの子達は登録も同じ位。ランクDの昇格試験を共に受けようと色々競い合っていた若者達。
フランの
微笑ましいなぁ。
「そう、お貴族様だ。だからおそらく、ミリシアとの戦争になれば彼奴は戦場に駆り出される。貴族の義務もあるし、彼奴自身が最強のワンマンアーミーだ」
広域極大呪文を複数使える魔法使いで、それを全て魔法剣として駆使出来る。その上、従魔達はフェンリルとグリフォンだ。
「今のアマレゴ位ならばオレだけで対抗出来そうです」
ベルン王国とミリシア王国に挟撃されたアマレゴ王国は、都市国家レベルの領土と国力になってしまってる。ロディは、それを自身と従魔達だけで、と言い切ったの。
只の男爵ならば、上位貴族にいいように使われたかもしれない。でもあの子は
ついでに
自身の力もだけど、バックにいる人達が強力過ぎて…。
「あの笑顔を見てると、本当にあれが素なんだろうな。
「かもしれませんね」
マディアス兄さん。アナタの子は、本当に素敵な、本当に私の自慢の甥っ子です。
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