第46話 迷宮探索 2

「それはそうと、あの子ロディ、この依頼を達成するとランク昇格条件を満たします」


 今、ロディはランクB。

 戦闘力、判断、対応…。能力的にもBレベルは超えていると思う。これでもリリア、受付嬢として色んな冒険者と接してきたから。冒険者を見る目はあると思ってます。


「そうだな。先日の法皇家の依頼で貴族対応もクリアした訳だ」

 ギルマスドルフさんも頷いている。


 法皇家だけではなく皇女殿下の依頼も熟していたみたいだけど、これは冒険者ではなく派閥貴族として動いていたようだし。


「本当なら昇格試験なんだが、ギルマス推薦認定でも多分、何処のギルドも不服申立はしないと思うね。彼奴ロディの能力や仕事は皆の認める処だ」


 ランクAともなるとギルド共通の昇格試験を通じて他のギルドの承認も必要となります。他国は兎も角帝国ではそうなんです。


 尤も、ロディは「なんでまだランクBなんだ?」と他のギルドから突っ込まれる存在でした。レッサーとは言えドラゴンを瞬殺出来る魔法を持ち、従魔も単体でドラゴンを倒せる実力です。ロディに不足しているのは達成件数。でもコレはやむを得ない所。


 何せロディはまだ、ギルドに登録して数ヶ月。もうすぐ半年経つ?そんな期間で件数をギリ熟しているのって、やっぱり凄い。

 グリフォンが従魔だから、ロディの機動力は群を抜いてる。馬車で5~6日かかる場所であっても、ロディ達は1日もかからず動けてしまうから。

 そして何より、彼は未達成が無い。

 受けた依頼は全て達成してる。

 当たり前だけど、でも凄い事なの。特に低ランクの者は背伸びして能力以上の依頼に手を出す事がある。そして、彼等は大概失敗する。下手すれば生命をも失ってしまう。

 未熟故の過ち。

 それで死んでしまっては本末転倒。冒険者に向いてなかったって烙印を押されて、ともすれば皆の記憶から消えてしまう。

 憶えられたとしても「そんなマヌケがいたな」程度の話。


 でも受付嬢の立場では、そんな一言では済まされない。どうしてもっと強く引き留めなかったのか?自己嫌悪に陥る程私は落ち込んでしまう。


「リリアのせいじゃないよ」


 ギルマスドルフさんやジェシー女史、他のギルド職員も声をかけてくれるけど…。


 それが身内なら尚の事。

 だからあの子ロディが、ドヤ顔で「達成しました!」って帰ってくると本当に嬉しいし、身の丈に合わせた依頼を受けている事にホッとしてるの。


異世界人エトランゼ以外の、本当に久しぶりのランクAだな。それも最年少記録更新と言うオマケ付きだ」

 ギルマスの感心したかの頷き。


 本当に凄いわ、ロディ。


 フフ、貴方はどうして甥っ子身内なのかしら…。婚約者カミーユが羨ましい…。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「よく来てくれた。助かるよ」

 フランに着いたオレを出迎えてくれてのはフランギルドのギルマス、ケインさん。

「オット。クロノ男爵閣下と呼ばないといけませんな」

「ランクBのエラム所属冒険者として来てます。只のロディマスで充分です」


 ケインさんはフラン代官ゴーダ准男爵の異母弟で騎士爵位を持つ身。で今のオレは男爵だから領主代官よりも上位の貴族なんだよね。これ、真っ当に対応してたら面倒くさいからギルマスと新人冒険者って関係だけで話しようと思うワケ。


「ランクBのねぇ…。私も色んな冒険者に会ってきたが、お前さんみたいな規格外は初めてだよ」

迷宮ダンジョンが16階層まで成長したって聞きました。その上狭いトコが多々あるから小柄ガキのオレに要請まわってきた、と」

「うん、まぁ、身も蓋もない言い方だがその通りなんだ。それに商都のフランは護衛向きの対人戦力高めの冒険者が殆どだ。それ程階層のある迷宮ダンジョンではなかったから、探索メインの冒険者は、迷宮都市ブリドニーの方へ行くだろうし」


 帝国東部のセルズ辺境伯の領都ブリドニーは、街外れに広大な迷宮が有る事で知られてるんだ。この迷宮ダンジョンは35階層まで確認されてる。36階層から下は人跡未踏の地。で探索魔法で後12階層在る事がわかってるんだって。

 母さんメーヴ並の魔法使いが研究の為に拵えた迷宮ダンジョンみたいで、まぁ罠やら仕掛けもてんこ盛りだけど、研究の成果たるアイテムや武具も其処彼処にあるんだと。

 そう。この人の研究のメインは付与術。

 だから魔剣や希少アイテムがザックザク。


 ゲーム内でも同様だったから、数100年前の世界である今は、ゲーム時よりもアイテムの宝庫だと思うよ。探索メインならばコッチに行くよね。


「ここ迄急激な成長は聞いた事ないですけど?魔物暴走スタンピードの時には8階層だったんですよね?」

「それは間違いない。だからこそギルマス代官アニキも戸惑っているんだ」


 オレはエラムギルドでした話、迷宮核晶石ダンジョン・コアへの人為的魔力付与の可能性を話した。


母さんメーヴに教わってる知識で考え付く、1番可能性があるのはこの方法だと思うんです」

「目的は?その、皇女殿下を害そうとするのは二の次だとすると、何の目的で迷宮ダンジョンを成長させようとするんだと思う?」

「1番単純なのは迷宮守護者ダンジョン・ボスたる魔物のランクアップですね。10階層未満ならランクC位の魔物だと思うんですけど」

「ああ。オーガ・ジェネラルだからランクCだよ、間違いなく」

「多分、もうオーガ・キング位のヤツになってるんじゃ…」

「1ランクは上がった後か…。とは言えお前さんなら余裕だな。単純ねぇ。だとしても…」

「弱いですよね。次の理由も結構単純で、兎に角魔物暴走スタンピードを起こしたかった。確実に起こせる方法ですので」

「おぅ。まだ納得出来そうな感じだなぁ」

「どうでしょう。明日にでも潜ります」


 チョイと悪い予感がしてたけど…。


 翌日、オレは迷宮ダンジョンに入った。

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