第44話 採掘依頼 4
「勘弁して欲しいなぁ」
「それは申し訳なく思うの、ロディ。でも実際、指名依頼で採掘がもう10件近く来ているのよ」
リリアさんのせいじゃない。
それは分かっちゃいるけど…。
名指しでの採掘依頼。それも水魔晶石が半数。
確かに採掘にコツがいる。安全に必要量を手早く、となると多分今のオレ以上の奴なんていないと思う。でも依頼がここ迄被る?
依頼主は殆ど薬師。或いは教会。
採掘が難しいから希少価値がある魔晶石。その為に高価な薬になってしまっていた解熱剤。
安定して確実に採掘出来るのならば薬の値を下げられる。購入出来る者が増える。高熱で苦しむ人が減る。
良い事づくめなのは分かる。手を尽くす事も吝かじゃない。
自ずと限度ってモンがあると思う。
魔力循環による保温って、皆が考える以上に魔力を使う。でも保温しないと体力をゴリゴリ削られていく。そこから割り出すと1回の採掘て採れる量は麻袋3つが限界。
大概の依頼は袋1つなんだけど…。
「コレ、転売目的は無いよね」
「と思いたいわね。依頼手続では流石にそれは感じなかったけど」
リリアさんも熟練の受付嬢だし、そんな下手な依頼は受けないとは思うんだけど。
「とりあえず、コレとコレと…コイツ。に、コレとコイツにしよ。ここ迄が急ぎだよね」
「そうだけど、あまり無理はしないでね、ロディ」
「それにしても、何だって先だっての法皇様の依頼内容がここ迄広まってんだ?水魔晶石採掘なんて有名処でもないのに」
「要望は高いのよ。かなり採掘技術の必要な依頼だから熟る冒険者の絶対数が少ないし。だからこの手の情報、薬師とかは懸命に聞き集めていると思う」
「はぁ。つまりどっかの情報屋がこの話を売ったかもしれないって事?で、ギルドにもチョイ口の軽いのがいるって事だ」
「否定はしないわ。コレ、守秘義務が必要と言う依頼レベルじゃ無いから。でも、それが迷惑だと言うのなら、今後は対応レベルを引き上げる。ロディには申し訳ないけど今はそれしか言えない」
だからリリアさんのせいじゃ無いんだって。
何せ世話になってる姉の様な存在。コッチも強く言えない。
「迷惑とまでは言わないけどさ。ま、いいか。この5件、パパッと済ませて残りに早く掛かれる様に努力するから」
受けの手続を済ませると、オレはギルドを後にする。
そのまま大急ぎで街を出ると、口笛を鳴らし
「またカイヌ山。ひとっ飛び頼む」
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「5件、一気に請け負ってくれたか」
「なんか、申し訳なく思えます。
「本人からの要請があればな。とは言え実際そこ迄守秘義務制約が高いとまでいかないしなぁ」
戦闘力の凄さはフランの
尤も、その後のドラゴン征伐で認識が甘かった事を痛感させられたが。レッサードラゴンを3頭瞬殺出来る呪文を持つとは?『
フェンリルとグリフォン。
ランクA魔物の強さは恐ろしい物がある。
どちらも単体でこの街位は破壊出来る力を持つ事をまざまざと見せつけられた思いだ。
ならばこそ他国にとっては脅威なのだろう。
彼は刺客を送られたが全て返り討ちにした。
刺客達が震え上がった事に、
「ティムしたからとか、兄弟同然に育ったからとか全く関係ないとは言わないけど、魔物って根本的に強きに従うんだ」
魔法で彼等を捕まえた時に、そう呟いたそうだ。
全属性の魔法に魔神並みの魔力。
魔法使い系の魔法で使えないモノは無い。
つまり彼に使えないのは回復系と精霊魔法だ。
勿論神聖系もだろうが、光属性魔法でカバー出来る。今の彼はランクBだが、実力的にはSでも言い過ぎではないだろう。
そして彼はまだ14歳だ。
彼のステータスは今後も成長するだろう。
「本当に君の甥っ子には驚かされてばかりだな」
「信じられない思いです。ウチでご飯食べる時なんて本当に只の食べ盛りなんですよ」
そう言えば男爵なのに
リリアから芋煮を2人前平らげたとか聞くと、彼が貴族だと言う事が間違いだと思えてしまう。
「只の食べ盛りねぇ」
本当に貴族らしくない。
まぁ魔の森の塔で自給自足の生活~日々食えて寝る場所が有れば良いという暮らしをしていればそうなるのも当たり前か。
逆に言えば、彼を味方に出来る欲求が何も無い訳だ。金も権力も興味無し。物欲も乏しい。女っ気も
陞爵祝の夜会で、手を握り合っては紅くなる2人の姿は、若き恋人達に幸あれと微笑ましく思われたとか。
帝国中枢に近い、
「私は胃痛持ちではなかったんだがなぁ。しかも最近抜毛が増えた気がするよ」
リリアが目を逸らすのを見ると、残念ながら気のせいではなさそうだ。確かに依頼仲介料の増加は有り難いんだが。
恨み言言ってもバチ当たらないよな。
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