第43話 採掘依頼 3
カイヌ山へ出る前。
オレは再びBから連絡を受けた。
例の場末の酒場。
『すまねーな。が、ドルフにフォローしとけって言ったから何とかなっただろ?』
「ええ。裏依頼をギルドが新人にゴリ押しした事になってました。親分、ボーレック商会と取引あったんですね?」
『“蛇の道は蛇”ってな。アチラさんもなりふり構わずだろうから、モチは餅屋に頼むのが手っ取り早い。そのツテは色々ある。その意味ではアドレーも同様だ』
「その上でギルマスにフォローを?」
『姑息な悪党にも通すべき筋ってモンがあらぁな。ま、ドルフも平民じゃねぇし、皇家や法皇家への借りも何とかなるだろ』
いや、借りを押し付けてるって言うか、矢面にわざわざ立たせてるって言うか。
ギルマスの境遇には少し同情するけど、それも仕事のウチだよね。
「で、今回はわざわざ謝る為に?」
『言ったろう?筋は通すって』
ニヤリと笑うビリー親分。
やっぱ、憎めない人なんだよね。
それに、こちとら登録数ヶ月の新人だ。親分とのツテはコッチからは切りたくないし。
オレは納得した旨を伝える。
親分も高笑いし、水晶球の会見は終わった。
カイヌ山の火口湖は天然の冷凍庫だ。
この
見るとグランは羽毛を膨らませて暖をとってるし、アリスはハナから出て来ていない。フェンはこの気候が快適みたいだけど。
この湖水が、永久氷土みたいになってて、最終的に結晶化する。それが水魔晶石と呼ばれるモノなんだけど、薬の原料となるのは、その中でも純度の高い透明なヤツ。濁りがあるのは不純物がある証明。薬として効能が低いものになっちまう。
これを採掘となると、時空系転移系複合魔法を使うしかない。だから採掘出来るヤツが限られてくる。工具使っての手掘りもあるけど、氷を掘り進めるのはメチャクチャ危険。
何故ならこの火口湖はかなり深い。しかも湖水全てが凍り付いてる訳じゃ無い。水部分に落ちたら死ぬよ、多分。
「えーと、探知し辛いんだよなぁ、コレ。『
悪戦苦闘する事数時間。
何とか必要数量を確保してオレは帝都へ帰った。
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一方その頃…。
エラムの冒険者ギルドマスター、
「事情は分かりました。ですがエラムギルドのゴリ押しが危うく帝室の権威を損うかもしれぬ事態を引き起こしました。ラング子爵子息ドルフよ。エラムギルドに賠償を求める事とします」
対応するのが皇太子ルシアン殿下や宰相ルキアル殿下ならば闇に葬ったかもしれないんだが。ともあれ宮廷官吏は役人としての本分を遺憾なく発揮し、前例通りの事情を全く考慮しない罰則を言い渡してくれたよ。
殿下達が知ったのは、賠償金を支払ったという事実の報告後であり、苦笑するしかなかったらしい。
また、領主たるアンバー辺境伯も同様のタイミングでしか知らされておらず、補填を打診してきてくださったが、今更ギルドが受け取れる筈もなかった。
ビリー。マジで恨むぞ。
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「感謝するわ、ロディ。この依頼、こんな短時間で熟るの貴方だけよ」
「選択肢処か拒否権すら無かった気がしたけど」
「気のせいね」
うわぁ、一刀両断されたよ。
中々どうして、
「ま、今回の仕置はエラムギルドへ行ったみたいだし。これで手打ちとなったと思うわよ」
「ギルマス・ドルフさんにも借りが出来た気がしますよ」
「気にしない方がいいわよ」
気にするよ。
後で聞いた。結構な賠償金払ったって。
只、売れっ子の高ランク冒険者を有するエラムギルドの収益はかなり高く、他のギルドならば財政が逼迫する程の賠償金もそれ程でもなかったみたい。オレは勿論『裁きの刄』の存在も大きいし。
どっちにしろ顔を出さないとまずいだろうし。
そんなこんなでオレはエラムへの帰途についた。
それはそうと、オレの採掘技術は
コッチはランクBだから、オレを指定した依頼は相場的にそんなに安くない。採掘の相場とかけ離れるのはどうなのかと思う。それにオレも採掘だけに時間を取られる訳にもいかなくて…。
そんな時に、前に
瘴気のモレも増えてきてるみたいだけど、ダンジョン内にいる魔物も少し凶暴化してるらしくって。
只、あの時は山賊デボルドの討伐依頼と重なったから高ランク冒険者が出払ってたけど、本来フランにもその手の依頼を熟る者はいる訳で。
だから、オレに依頼がくるとは、この時は思ってなかった。
実際、グリフォンの持つ機動力をアテにした依頼もあり、お使いとは言え忙しい毎日を送っていたんだ。
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「ダンジョンが増えてる?」
「あぁ。10階層も無かった筈のダンジョンなのに、今回我々は12階層まで降りた。出てきた魔物は確かにランクDだから平均的なダンジョンだとは思うが…」
「問題は何階層まであるかだ。まさか50を超える事はないとは思うが」
「このままじゃランクSの主が現れてもおかしくない。そうなると厄介だ」
フランの迷宮は、予想を超える成長をしていたんだ…。
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