第39話 刺客 3
陞爵記念パーティは終わりました。
…婚約者の、とは言え他家の殿方の家にお泊まりです。
大胆…だよね。
この帝都にブヌア家はあります。本来、泊まらなくても大丈夫なんです。
両親も兄も、よく許してくれたと思います。
ロディへの信頼。勿論あるでしょう。
両親には多少の打算もあるみたいです。
末席傍流と言え法皇家一族。しかも男爵になりました。手放す訳にはいかない優良物件です。
まぁ、それ以上に、誰が見ても娘の幸せな未来が確実だという事が大きいとは思うのですけど。
従魔に、ハイ・ピクシーに嫉妬してる私がいます。見た目が美少女でなかったら、こんなにモヤモヤしないでしょう。
ロディの
勿論、私は彼に愛されています。眼差しも言葉も雰囲気も。触れられた手から伝わるモノも。全てから愛が伝わってくるから…。
「独占したい?そんなに嫉妬深かったの、私」
しっかりしないと。
ロディの強さと存在。
敵対する者にとって無視出来ないモノなのでしょう。法皇家別邸にも関わらず刺客を送られる程なのですから。
でもロディと従魔達は、それを相手にしない程の力量を示しました。法皇家の権力も同様。
だとしたら、彼の
お泊まりの理由の半分です。
目の前の暖炉の前。あ、火はついていません。
まだ、そんな時期じゃないし。
暖炉の前に、灰色の仔犬が眠ってます。
…見た目が小さな、可愛らしい仔犬。実は
本来なら10mを超える程の大きさを持つ
この大きさでも、ランクAの実力は発揮出来るってロディは言ってました。
フフ。
心配症だなぁ。
厩舎にはグリフォンもいるみたい。その知覚は人は勿論フェンリルをも上回るって。
だから夜半も、この館を襲う事は不可能。
法皇家別邸を襲う度胸のある者は、そうそういないとは思うのですが…。
14歳。
まだ同衾は出来ない年齢。
前世日本人の時より身体的発育はしている、と思うの。胸は兎も角…。それに前世でさえ、この歳なら子を産める身体になってたし…。
ロディに抱かれたい。
ふと思い赤面してしまった。
カミーユは淑女なのよ、ガイア。
成人迄後2年…。
おやすみ、ロディ…。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「で、ですが…」
「
水晶球から聞こえる冷たい声。
本国王宮からの直接指令。
宮廷魔術師ロイス・テレーゼ=パルム侯爵夫人。
「お待ち下さい、我等はまだ…」
「愚か者!此度は失敗。貴様等はしくじったのです。既に帝国に攻め込まれてもおかしくない事由を与えた事が分からぬのですか‼︎」
「そ、それは…。申し訳ありませぬ。よもや自害も出来ぬとは」
「流石は帝国正教会法皇。蘇生魔法迄駆使するとは。私達の見通しが甘かったわ」
くっ。この無念。この恨み。
忘れぬぞ、クロノ男爵…。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「お姉様?」
「あぁ、コレ。詰問状よ。取り潰してやってもいいのだけど、ロディはあまり大事にしたくないみたいね。それにミリシアとのパイプ、使い道も有りそうだから」
「内々に処理する、と?」
「政治の汚い処を見せているわね、エレンディア。幼き頃の、唯人を癒す事だけ考えていた時に戻りたいわ」
私もだが、姉は本当に
だが
「ロディが羨ましい。彼の
魔法の才は、最早宮廷魔術師をも超え大賢者レベル。しかも剣技として応用し得る。
従魔の力も都市を軽々と滅ぼす事が出来る程。
にも関わらずロディマス様は、権力欲は勿論金銭欲すら持っていない。いや、物欲すら乏しいのでは?と思える程だ。
日々食えて寝る場所が有ればいい。
多分、塔にいた時がそんな生活だったのだろう。
でも街に出て来て、国家権力中枢に近い所に来ても、その意識が変わらないのは凄いと思う。
その上、彼は基本的に性善主義だ。
~この世には善人しかいない~。
その前提で対人関係を考えるのが性善主義。
エラムは辺境という事もあり、街の雰囲気も助け合いに満ちている。塔から出て最初の街がエラムだったのも彼にとって良かった。
また、ロディマス様はテイマーだ。
魔物と心通わす者はピュアな者が多い。ロディマス様もその例に外れていない。
貴族の価値観に理解があるから権謀詐術を嫌悪しつつ納得はされている様だけど…。
その意味でも、本当に稀有な存在。
そんなロディマス様が末席傍流でも私達一族なのはとても有り難い事だと思う。
親戚…って言うより頼れる弟って言いたい程に。
「
ありがとう、ロディ。
私も、そう呼んでいいですか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます