第21話 暴走の果てに 1
私の名はカミーユ。カミーユ=レノ・ブヌア。
皇太子殿下の乳母を母に、殿下の副官で側近中の側近と呼ばれる兄を持つ。
父は近衛騎士団の第1突撃班長で、敵陣に斬り込み突破口を開く勇猛果敢な騎士。
そんなブヌア家の娘に生まれた私は、やはり騎士を目指して精進を重ね、14歳の現在帝国騎士学校に通っている。
家族にしか見せていないが、私は先日『血の変革』を顕現し精霊魔法使いとなった。先祖返りとも呼ばれる体質及び魔力の変化で、祖先にいたエルフの血が私に現れたのだとか。
そのせいで酷い高熱が続き危うく死にかけた。
そして私は生まれ変わった。
今迄の記憶はそのままに、
それでより強い身体になった私は『血の変革』を乗り切った。
ただ、知り合いも誰もいないと諦めていた。
「ジュピター、貴方に会いたい」
望んでも無理だってわかってる。
もう、カミーユとしてこの
そんな時だった。
信じられないテイマーの話が伝わってきた。
「本当に?お兄様」
「ああ。私も殿下から聞いて、確かに信じられない話なんだがね」
その皇太子殿下は妹君リスティア皇女殿下から聞いたとの事。
皇女殿下を狙ったらしく、皇帝直轄領フランで
らしい、と言うのは詳細がまだわかっていないとか。でも
「
「全く、それで皇女殿下を罠に嵌めようとは神をも畏れぬ行為だ。捕まった刺客は今色々調べられているらしいが、裏にはボルト家がいるとか噂もあってね」
ボルト子爵家が?
確かに、御当主ロバート=パイル・ボルト子爵は皇室神格論の絶対的信奉者で、自由人の皇女殿下を忌み嫌っていたけど。だからと言って皇族のリスティア殿下に直接手を出す事があるの?
「リスティア殿下は自由人ですけど、でも皇位継承権をもお持ちの皇族です。ボルト家の方が皇族を害そうとする筈が」
「だからあくまでも噂だよ」
その噂だけでも致命的だ。
皇族を害そうなんて、下手すれば三親等死罪を免れない。
「殿下を害する為に
「テイマーが?」
「
「それは凄いです!」
確かに信じられない。でも、魔法剣?
「お前と同じ歳だそうだ。何とあの『滅びの魔女』の子だと。見た目は黒髪で波目の穏やかな童顔と聞いた。一見して手練れには見えないらしいが。この功績により陞爵される。もうすぐ帝都に来る筈」
魔法剣を使う…波目?波目⁉︎
まさか、でも…?
「うん?どうした?カミーユ」
「いえ。お兄様、興味深いお話、ありがとうございました」
彼のテイマーの事は皇太子殿下も多大な興味を示され、またルキアル皇子殿下も同様で、リスティア皇女殿下の口利きで陞爵の後懇談されるらしい。なので兄ファブリを通して噂のテイマーが宮中に上がる日を私は知り得た。
皇帝陛下から陞爵の詔を受け、皇太子殿下達と懇談された後、時間的に彼は帝都に宿を取ると思える。うまくいけば街中で会えるかも。
丁度学校は考査期間中。
昼からは街へ繰り出せる筈。
そう思って街中へ出かけた。が、お忍びもあり、私は街娘に近い格好でメイドのリネット1人を伴い街中に繰り出した。そして酔っ払いに絡まれてしまった。
でも嘘みたいな幸運。
私達を酔っ払いから助け出してくれたのは件のテイマー。お礼にと食事に誘う。少し大胆かな?
リネットを払って2人っきり。益々大胆。
で、カマを掛けてみる。私とジュピターしか知らない事。
「その…、あの時貴方は、その…、私の胸、見てませんでしたか?」
生前…、何かおかしな言い方。
この
アバターでエルフを選んだ理由。
私の胸は、学年トップと言われ揶揄いの対象にしかならない程の大きなモノで、私は嫌で嫌で仕方なかった。男子は絶対揶揄しながらもガン見してくるし、酷い奴は触ろうとしてきた。時には女子からも言われない中傷を受けてきた。
素の自分同士で出会った時、ジュピターも私の胸元をチラ見していた。その時私は部屋で「
でもジュピターはチラ見はしたけどガン見じゃ無くて、勿論揶揄も無かった。
単純って言われてもいい。
それで、私のジュピターへの好感度はかなり上がった。
「ガイア?」
彼はやっぱりジュピター!
また会えた。フフ、目が一緒だぁ。
瞬間、私は彼に抱きついていた…。
「オレの所為だよね。ホントごめん」
そう言って謝罪し、彼は私を強く抱き締めてくれた。その上、交際…婚約を申し出てくれた。
様々な思惑が重なり、私は晴れて件のテイマー、クロノ准男爵ロディマス様と…ジュピターと婚約した。
その所為で、私は第2皇子派~それもガスター侯爵の息がかかる者達より嫌がらせを受ける様になってしまった…。
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