第8話 出会い 4
昇格試験まではまだ間がある。
オレだけが受ける訳じゃない。現在ランクEである程度実績や経験がある者。定期的にある訳ではなく、「今年はEの有望株多いな」とかで実施が決まる。で、オレの他に4人程居る訳だけど、その中の2人が若干実績と依頼件数が足りていない。
「ね、待ってくれるよね」
ちょい涙目になって懇願する戦士の少女ローラとその弟分で魔法使いのアルト。隣の村からやって来た幼馴染の2人。少しは剣も熟せるからアルトは魔法戦士か?そう聞いたら「真似事だけです。恥ずかしいですよ」って。
いや、いい線いってると思うよ。
元魔法戦士が言うんだから間違いない(笑)。
EやFって採取やお使いが多い。
でも採取は、特に薬草採取は結構専門知識が必要だ。
もう2人…こっちは戦士のみ、は面倒見の良い先輩パーティに入っていて、先輩達のフォローを受けつつ高ランクの依頼をこなしている。
受験の説明の時に涙目で頼まれたオレ達は、2つ返事で受諾した。
「ホントに?ありがとう、ロディ君。ハリーにクリントも」
「いや、俺達はロザリアさんのお陰でCとかの依頼熟しているしさ。その意味じゃ
「
同世代同ランク。情報交換や共有もあって、オレ達偶にギルドに併設された酒場で一緒にメシ食ったりしてる。確かに
同世代って他にもいるけど、パーティ内で見習い扱いになってる場合が多くてFのままが殆ど。オレみたいに
ソイツ等ともメシ食ったりする事もあるけど、気が付けば愚痴の聞き役になったりして正直コッチまで気が滅入る。
だから、結局この5人で集まって…、の場合が増えていく。
ハリーやクリント達のパーティ『光の剣』はランクBの
でもビーナスは、治療を仕事と割り切っていた。依頼料が無ければ絶対に治療しない。それでも聖女と呼ばれたのは金額お構い無しだから。つまり、その依頼料が金貨1000枚だろうが真鍮貨1枚だろうが関係ない。お金さえ貰えばOK。余程の貧困…スラムの中でも底辺中の底辺じゃなければ真鍮貨1枚払えないなんて奴は早々お目にかからない。そして、金さえ貰えばそれが不治の病と言われてるモノ、致命傷の大怪我であろうとも完治してみせる。ドライ過ぎるけど『聖女』の名に偽り無し。それがビーナスって女性。
あはは、話逸れたね。
兎に角昇格試験まではまだ間がある。それまでは塩漬け依頼でもやっとこうかな。
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依頼掲示板の前をウロウロしていたロディが、何やら依頼書の木簡を取って受付へ向かう。
それを見送りつつ
彼奴変だよ。
「ロディ、凄いわ。ドンドン依頼こなしていくんだもん」
「それなんだけどさ。計算合わないんだよね」
俺の疑問。
それはロディが熟している依頼件数。
いや、基本的に彼奴が受けるのはランクEの奴。薬草採取がメイン。で、何でそんなに依頼があるかと言えば、彼奴は塩漬け依頼ってのも熟しているから。
塩漬け依頼。
つまり割りが合わないから引き受け手がいない依頼。これが増えるとギルドの調整能力をも疑われるようになってしまう。ロディはこういった依頼もガンガンやっていくからギルド貢献度が高いんだ。
で、何故割りが合わないかというと、例えば薬草採取依頼で『コリンジントの根』っていうのがある。下級回復剤の原料なんだけど、煎じてから煮詰める必要がある為かなりの量を確保しなくちゃダメなんだ。で、この草湿地帯を好むから沼地メインで採取って話になる。
でも、このエラムは街を挟んで片や森、片や岩山地帯ってなってる。森があるから井戸には困らない。地下水脈も多いし。
でも沼地は少ない。地底湖はあるけど、コリンジントは生育に充分な日光を必要とする。だから日当たりの良い湿地帯に生えてる。
その条件でいくとエラムから1番近いのは『毒蛙の沼』。ここは歩きじゃ5日はかかる。下級薬だから依頼料も安く、この採取で往復10日潰れるのは全く割りが合わないし、馬なんて使うものなら大赤字。騎士とか傭兵なら自前の馬もあるだろうけど冒険者で馬持ちなんてかなり珍しい。厩舎や飼葉等維持費が高過ぎるんだ。
だからこの依頼は敬遠される。結果放置されて掲示期間を過ぎてしまう。依頼人に依頼請負該当無しと報告しないといけなくなり、ギルドとしては有ってはならない事態って話になる。
その為ギルドが赤字覚悟で依頼料の上乗せを図る場合もある。赤字って上乗せを依頼人に出させる訳にはいかないから。
この依頼、ロディは何と2日で終わらせてきた。どんな移動方法で?近くに群生地があるなんて聞いた事無いし。
身内であるギルド受付嬢リリアさんも不思議がってた。どう考えても移動時間がおかしいんだ、彼奴。絶対何か秘密がある!
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オレが手にとったのは『お使い』依頼。
西の都と呼ばれる皇帝直轄領都フラン。2週間はかかるね、普通なら。
でもオレには
一っ飛びなんだけど、この移動が噂になってるなんて全く考えてなかった。これで秘密にしてたなんてお笑い草だよね。後々考えると恥ずかしいったらありゃしないけど…。
街門を出て森に入る。
人目につかなくなってからグランを呼んで、いざ出発!
これが、オレの人生の転機になった…。
フランで、エライ目に遭ったんだ。
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