第7話 出会い 3

 魔の森の中心部。魔女の塔周辺はランクA魔物の巣窟。これもよく知られる事だ。

 テイマー歴数年とは言え、流石にそのランクを契約ティム出来るとは誰も思わないだろう。だからオレの従魔がピクシーだという事をサラさんに納得してもらえた。


 それはそうと、『裁きの刄』って4人パーティじゃなかった?そう、この2人と盗賊キャラに治癒師ヒーラーキャラ。『地上の星』もだけどオレの知識にあるパーティじゃないんだよな。

 そう思いながら、オレは繁々とブレードさんを見てしまった。


「何かついているかい?フム、何処かで会っているのかな」

「あ、ごめんなさい。その…異世界人エトランゼに会うの…初めてで…」

 焦る雰囲気のオレ。誤魔化せたか?

「ウフフ。そうは言っても変わんないわよ?私達」

 ダガーさんが微笑んで戯ける。うわっ、可愛い。凄い無垢な笑顔。

 オレの歳で森の奥の引き篭もりとなれば…。そう受け止めたのだろう。そのダガーさんの笑顔に引きずられてか?ブレードさんもサラさんもウンウン、フムフムって頷いてる。


 よし、誤魔化せた。


 ふと見るとスライム達が順調にゴミを喰っている。

「サラさん。スライム達はいい感じでゴミ喰ってるみたい。当分ここのゴミ処理はこれで賄えると思います」

「そうね。ありがとうね、ロディ君。依頼完了・達成を確認しました」

 ギルド職員に言われてオレも破顔。これでランクEとしても順調にいってる。いや、多分これで…。

「ロディ君。貴方はこれでランクDへの昇格受験資格を得ました。ギルド登録1ヶ月チョットでの資格獲得は最短…と迄はいかなくてもかなりの好記録よ。この達成確認書にもその旨記載しておくね。フフ、またリリアが自慢するわね」


 叔母甥の関係のリリアさんは元々世話好きなのもあって、オレの事を弟?子供?みたいに親身に色々手を貸してくれる。お陰でガキの1人暮らしでもどうにか生活出来てるんだ。

 コツコツ薬草採取や清掃依頼をこなして来て実績と小銭を確実に貯めてきたのもあるけど、リリアさんの援助はマジで助かってる。

 だからリリアさんが身内贔屓って後指差されない様にオレもコツコツ頑張ったんだ。


「ランクD…。そしたら受けられる依頼の幅が拡がるよね」

 ここまで来ると一気に討伐系が増えてくる。低レベルのテイマーでは厳しいと思う。でも…。


「ここにいたのか、ブレード」

 声がして、そっちの方向を見る。ハードレザーの軽装備の男性。少し年配…年季の入った感じで古参の冒険者がやって来た。

 『裁きの刄』の盗賊キャラ…。


 忍者のシュリケンさん…。


「シュリケン。で、どうだった?」

「王国の勇者パーティ。基本は4人だ。勇者に重装兵、賢者に聖女。儂と同じ忍者の者は表に出とらん。裏方というか王国直属の諜報員という形じゃな」


 この人、『地上の星』を調べていたんだ。


「裏方ねぇ。光を浴びないんじゃ腐らないか?」

「表に出ねぇだけだ。王国はキチンと厚遇しとる。それに奴は若い乍ら裏に有る事を喜びとしとる」

「まぁいい。で残りの2人は?」

「おらん。最初から召喚されとらんのだ」

「召喚されてない?何かあったのか?…まぁいい。精霊魔法使いは兎も角あの魔法戦士が召喚されていないのは有難い」


 魔法戦士オレが?


「魔法剣ってなホントに厄介なんだ。しかも奴は不得意属性が無かった」

「確かに。『全属性』だったか?高レベル高ランクの魔法使いですら苦手属性があったと言うのに」


 苦手属性。

 一般的に炎属性を得意とする魔法使いは水や氷属性が少しお粗末になる。威力が小さかったりコントロールが微妙だったり。反対属性を苦手とする事が多々ある。特に光属性と闇属性は微妙なんてもんじゃない。相反する属性の魔法はほぼ使えない。

 これを無くするにはスキル『全属性』が無いとどうしようもないが、このスキル、先天性タイプなんだ。クラスを決めた時にごく稀に現れる珍スキル、これが先天性タイプ。自分で取捨選択出来ない稀有なスキル。

 ジュピターオレは魔法戦士に転職クラスチェンジした時に偶々手にした。本来なら再びの転職クラスチェンジ時に、魔法職じゃ無ければ消えるスキルなんだけど、流石は『神の金貨』。伊達に宝くじアイテムって呼ばれていない。

 オレの魔法戦士としての使えるスキルとして、『全属性』は残ってるんだ。


 最近思うんだ。

 オレって、異世界転生物のチート主人公扱いになってねぇ?


 つくづく誰が仕組んだのやら…。


 それにしても2人召喚されていない事になっているなんて…。


 ガイア、君に何があった?



 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「どこまで干渉する気だ?」

「何のことかしら?」

「………」

「遊戯の神としては本望だと思うわ。でも生命の神としては、貴方神のやりようは看過出来ない」

「成る程。駒の生き死にが気に入らぬか…」

「ですが、あの世界は貴方神の世界。これ以上は私も…」

「まぁ良い。これはこれで駒の変数としては有りであろう。中々興味深い事だ…」


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 ランクDへの昇格受験資格獲得。

 予想通りリリアさんは大変喜び、ご馳走で祝ってくれた。


「試験内容だけど、大っぴらには言えないけど、要人警護か盗賊討伐かの何方かになるわ」

「対人…。場合によっては人との戦闘って事?」

 リリアさんは真顔で頷く。

「場合によっては…、ではなくて必ず。悪人を殺す事が出来るか?それも問われるから」


 『地上の星』は魔物討伐系が多かった。要人警護すらあまり請け負っていない。

 また、所詮ゲームって言う感情もあったんだ。

 

 躊躇うと、多分コッチが殺される。

 こんなガチの殺し合いなんて…。


「盗賊は捕らえるのじゃなくて?」

「まぁ、それも確かに選択肢の1つ。でもこの場合は即処刑レベルの盗賊相手だと思う」


 帝国の法では、山賊海賊共に縛り首。生かして捕らえても結果は同じ。自分の手を汚さないってのは大きいかもしんない。でも冒険者としては多分何処かでやっていけなくなる。

 捕まえられるのなら兎も角、逃げられたりすれば単純に被害が増すだけ。自分のとった行動の責任。殺した事の罪悪感、甘ちゃんのお陰で増える市民の被害。どっちの後悔がまだマシか。


 まだ吹っ切れてはいないけど…、オレはランク昇格試験を受けることにしたんだ。

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