第4話 温泉にて

(チョロチョロと湯船に水が流れていく音)


トウカ「いい湯だねー」


アキラ「露天風呂を貸切りでゆっくり出来るっていいねぇ」


ナツ「ハルキ、もうちょっとどっちか寄って」


ハルキ「あぁ、いいよ。ここ浸かって。私、ちょっと上に座るから」


(湯船から立ち上がる音)


ナツ「ありがと」


(湯船に浸かる音)


ナツ「はぁーあ、そういえば2月ももうすぐ終わりなんだねぇ……」


ハルキ「その声は、我が友、李徴子!」


ナツ「なぜ、山月記……」


ハルキ「山月記……さんがつき」


ナツ「なるほど? もっと尊大な羞恥心と臆病な自尊心を持とうか?」


ハルキ「え、虎になりそう」


アキラ「(バシャッという水飛沫の音)え、虎になったハルキがナツを!?」


トウカ「薄い本が厚くなるー(ブクブクと泡立てる音)」


ナツ「バカなの? 貸切り風呂だからってのぼせてるの?」


ハルキ「爆砕点(激しい水飛沫の音)」


アキラ「ギャー! 目がぁ! 目がぁ!」


ナツ「ちょっ、いくらなんでも!」


トウカ「あばれんなー……あばれんなよー……」


ハルキ「あははは、ごめん、思ってたより飛び散った」


ナツ「せっかくいい温泉なんだからさ……ゆっくり入ろうよ」


ハルキ「そうだね。悪かったよ」


トウカ「あー、そういえば、この辺りに美味しいチーズケーキを出してくれるカフェがあったはずー」


アキラ「チーズケーキ!」


ナツ「あー、前にいったところ?」


トウカ「そうー」


ナツ「でも、少し下ったところじゃなかった?」


トウカ「そうだねー、普通に歩いたらちょっと湯冷めしちゃうかもなー」


アキラ「えー、寒いのはやだよー」


トウカ「あー、誰かが車だしてくれたらなー」


アキラ「あー、なんか目がしばしばしてきたなー」


ハルキ「あはは。はぁ、わかったよ。場所知らないから案内はお願い」


トウカ「やったー」


ナツ「え、いいの?」


ハルキ「全然。それに、酔わねばならぬときが近づく前に行っておかないと」


ナツ「山月記から離れなさい」

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