第106話 北の合成大会

「それじゃあ合成大会再会だよー!」


 新たな素材を仕入れた私は、さっそく合成を再開する。


「まずはクズ石を一括合成!!」


 宝石は品質を上げればシンプルに高額商品になるから良いよね!


『最高品質のサファイア:最高純度のサファイア。氷属性魔法の威力を増幅する効果がある』


『最高品質のラピス:最高品質の純度を誇るラピス。このレベルまで来ると貴石に等しい価値を持つ。水属性の魔法の威力を増幅する効果がある』


 おおー、何ていうか青色だ。

東部は黄色い宝石が多かったし、もしかして土地によって宝石の色が決まるのかな?

 異世界だから、魔力とかマナとかが原因で出来上がる宝石の属性が変わるのかもしれないね。


「そう考えると、南部でも宝石を探さなかったのは失敗だったかも」


 うん、今度南部に行く機会があったら、南部特産の宝石を探すことにしよう。


「それにしても北部の宝石は氷魔法や水魔法の性能をあげてくれるんだね。となると熱い土地の宝石は炎魔法の威力を上げてくれるのかなぁ?」


 うーん、これは楽しみになって来たなぁ。

 そう言えば一括合成で最高品質になってなかったトパーズとシトリンが残ってたっけ。

 余ったサファイアとラピスに合成してみようかな。


「サファイアにトパーズを合成!」


『高品質のエメラルド:美しい緑の輝きの宝石』


 成程、黄色と青を混ぜて緑かぁ。


「じゃあシトリンにラピスを合成したらこっちも緑になるのかな?」


『やや低品質のジェイド:緑色の宝石。硬玉ともよばれる』


 おお、やっぱり緑色だ!


「じゃあ逆だと何になるんだろ。トパーズにラピスを合成! そしてサファイアにシトリンを合成!」


『やや低品質の緑水晶:色の付いた水晶。特定の魔物が好んで食べる』


『高品質の黄水晶:色の付いた水晶。特定の魔物が好んで食べる』


 何と色付きの水晶になった。

 装飾品として色々使えそうだね。

 全色集めるとレインボー水晶とかになるのかな?


「じゃあ最高品質同士を合成させてみようか!」


『最高品質のエメラルド:最高純度のエメラルド。このレベルまで来ると貴石に等しい価値を持つ。植物属性の魔法の威力を増幅する効果がある』


『最高品質のジェイド:最高純度のジェイド。このレベルまで来ると貴石に等しい価値を持つ。回復属性の魔法の威力を増幅する効果がある』


『最高品質の緑水晶:最高純度の緑水晶。蓄魔石にすると込めた魔力が植物属性に特化するが、地属性魔法を使う場合には魔力消費が少なく済む』


『最高品質の黄水晶:最高純度の黄水晶。蓄魔石にすると込めた魔力が地属性に特化するが、地属性魔法を使う場合には魔力消費が少なく済む』


 うおお、こりゃすごい。

 素材としても宝石としても価値が出るなぁ。


「よし、それじゃあ次は魔物素材を合成だー! まずはこのデッカイカニのハサミを……」


 ふと、私はあれ? 引っかかるものを感じて手にしたハサミを見る。


「カニ?」


 それは確かに蟹だった。しかもデッカイ、凄くデッカイカニのハサミだった。

関節部に空いた穴に私の腕が余裕で入る程に大きいハサミだ。


「……」


 ふと私はハサミの関節から空いた穴をのぞき込む。

 けれどハサミの中から見えるのはハサミの殻の内側のみで、白い繊維質の身の姿は見当たらない。


「残念……」


 この大きさならかなりの量のカニの身が食べれると思ったのに。


「……いや待てよ、カニが居るのなら、つまりカニ料理のお店がある筈!!」


 だってこの世界魔物肉料理とか普通にあるし!

 しかもハサミだけでこの大きさって事は、本体はもっと大きいって事だよ!


「つまりカニ食べ放題!?」


 ヤバい、北都の料理に期待しか沸かない。

 しかもこの大きさって事は、いちいちカニの足をほじくり返さなくても良い筈!

 ノンストレスでカニを食べまくれるって事じゃないですかー!


「よーっし、魔物素材を合成したらカニを食べに行くぞーっ!!」


 ぐふふ、今夜は蟹パーティですよ!

 カニグラタン、カニコロッケ、そしてカニ鍋!!

 あっ、涎が出てきた。


「それじゃあ気を取り直して、まずはこのカニ素材を一括合成!!」


『ビッグレイククラブ変異種のハサミ:希少な変異種のハサミ。湖に生息する巨大なカニの魔物のハサミ。固く軽いので、防具にも武器にも使える。内側の身を綺麗に取り除いてしっかり洗わないと、カニの匂いが漂うので注意。錬金術で防具と合成すると硬さが増す』


「へぇ~湖に生息するカニなんだ。味は海の蟹と変わらないのかなぁ?」


 いかん、もう完全に頭がカニになっちゃってるせいで味の事しか考えれない。

 落ち着けー、落ち着くんだ。今は合成に専念するんだ私!


「ええと、変異種ボーナスは堅さか。盾に合成するにはぴったりだね」


 しっかり洗わないと合成してもカニの匂いしそうだけど。


「じゃあ他の素材も合成しようかな。ええと、こっちの小さい魔石を一括合成!!」


 すると一部の魔石を残して魔石がピカッと光り、ごっそり数が減る。


『ノースボールスライム変異種の魔石:希少な変異種の魔石。氷属性。北部に生息するボールスライムの亜種。触るとひんやりする魔石。錬金術で防具と合成するとちょっと堅めの弾力が得られる』


「へー、北部に住むボールスライムの魔石なんだ」


 そして違いは弾力の堅さだけど。


「まぁボールスライムだしね」


 そこでふと気づく。


「あっ、一括合成だと他の魔物の魔石は合成させれないんだね」


 ボールスライムの魔石をより分けようと鑑定していた私だったけど、一部の魔石は鑑定できないことに気付いた。


「武器は合成すると同じジャンルの武器は合成できたのに、魔石は出来ないんだ」


 同じ魔石でも種族が違うとジャンルが違う扱いになるのかな?


「でも合成したくない時にうっかり一括合成しなくて済むから便利なのかな?」


 と言う訳でノースボールスライムの魔石をより分けたら、また魔石の一括合成を行う。


『ノースウルフ変異種の魔石:希少な変異種の魔石。氷属性。北部に住む狼の魔物。錬金術で装備に合成すると僅かに速く動ける』


 おおー、これは戦闘に便利だね。


『ホワイトベア変異種の魔石:希少な変異種の魔石。氷属性。錬金術で装備に合成すると寒冷ダメージをわずかに減らす』


「ホワイトベアの魔石はこれだけかぁ。寧ろボールスライムとウルフが安い素材だったから沢山貰えたのかな?」


 全体的にホワイトベアの魔石がちょっとと、残りはノースボールスライムとノースウルフか。


「変異種の魔石はどれも使えるね」


ノースボールスライムの魔石効果で盾に弾力を付けてダメージを減らしたり、ノースウルフの魔石効果で素早く動いて、ホワイトベアの魔石で寒さからも身を守れるのは強いよ。


「もっとレアな魔物の魔石を合成したら凄い事になりそうだよね」

 とはいえ、レアな魔物の魔石を変異種になるまで合成するのは大変かぁ。

 レアな魔物だけに普通の魔石でも入手が大変だろうからなぁ。


「まっ、そっちは地道に集めるとしようかな」


 それじゃさっそく 合成だ。

 私は盾の裏側に宝石と魔石を置くと盾に素材の合成をおこなう。


『最高品質のノースタートル変異種の盾:冬でも冬眠しないノースタートルの甲羅を加工した盾。ノースボールスライム、ノースウルフ変異種の魔石、ホワイトベア変異種の素材を使っているので堅いが増しており、弾力があるので衝撃にすこし強い。盾として構えている間は動きが少し早くなる。氷、水、回復魔法の効果が高くなる』


「凄い物が出来ちゃったな」


「またトンでもないモノを作り出したニャア。他の連中に目を付けられないように、せめて裏側の宝石は皮を張り付けて隠しておくのニャ」


「はーい」


 ニャットのアドバイスに従って、金目の物っぽさが増す宝石を隠すことにする。


「よーし、これでロスト君へのプレゼントは完成だね!」


 後はティキルタちゃんにこれを納品すれば依頼達成だよ!


「それじゃあカニ食べに行くぞーっ!!」


「ニャーッ!!」


 一仕事終えた私達は、さっそく北部の蟹を満喫するために夕暮れの町に繰り出すのだった。

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