第33話 妖精、増える

「えっ? えぇっ?」


 気がつくと、新たに妖精がふたり増えていた。


「どうかしましたか、主様」


 赤く長い髪をした妖精が不思議そうに首を傾げる。まるで、自分たちは最初からこの場にいたのに、と言わんばかりだ。

 一方、青いショートカットヘアーの妖精は、


「もしかしてお腹が空いたんですか~」


 なんというか……独特の間を持った子だ。のんびりというかマイペースというか、とにかく、自分のリズムを持っている。


「リリ! それにレインまで!」


 シャーニーがふたりの前を叫びながら抱きついた。どうやら、赤い髪の子がリリという名前で、青い髪の子はレインというらしい。

三人は互いに再会を喜び合っているが……俺としては少々気がかりな点がある。

なぜ今になって、ふたりは姿を現したのか、ということだ。


「ちょ、ちょっといいかな」

「この子たちが姿を見せた理由でしょ?」


 察しがいいな、シャーニーは。

 ……まさかとは思うけど、心の中を読み取る能力とか持ってないだろうな。

 まあ、それは置いておくとして、シャーニーから妖精たちの秘密についての説明を受けた。


「聖樹の魔力が安定してきたから、妖精たちが姿を現すことができるようになったの」

「魔力が安定してきた?」

「あら、気づいてなかったの? まあ、見た目からは分からないからピンと来ないかもしれないけど、聖樹は日々成長を続けているのよ」

「成長……?」


 最初の時のような、見た目の劇的な変化は見られない。

 けど、シャーニーからすれば今も聖樹は成長を続けているという。その影響で、この聖樹を拠り所とする妖精たちの数が増えているってわけだ。

 今のところ、目立って害があるってわけじゃないし、体は小さいからスペースも取らない。何より、シャーニーとウィラが嬉しそうだからな。とりあえず、現状維持で問題はなさそうだ。


「ねぇ、主様! みんなの部屋なんだけど……」

「っと、そうだな。すぐに用意するよ」


 俺は聖樹の能力を駆使して、新たにふたつの小さな部屋を用意する。これを機に、さらなる聖樹の改装に取り組もうと思った。


「シャーニーの話だと、妖精たちはこれからも数が増えていくようだし、いくつか用意しておいてもよさそうだな」

「妖精たちの部屋、か。なんだかおとぎ話を読んでいる気分ね」


 それはちょっと分かる。

 今も、妖精三人とウィラが仲良く話している姿を見ると、絵本の一ページを見ているようだ。


「どれくらいの数の妖精が、この聖樹にはいるのかしら」

「まったく想像できないな。……十人ってところか?」

「もっといるんじゃない? 百人くらいとか」

「ははは、それだと部屋の数が追いつかなくなりそうだ」


 そんなことを話しながら、俺は聖樹をより住みやすく、快適な空間とするため改装を施していく。


 いつか、村のみんなやジェファーズ様もここへ招待したいな。

 できたら……グリニスさんも。

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