第6話 小さな村

 ルパートさんのローナに連れられて、俺はふたりの故郷である小さな村を訪れた。

 名前はシェルフィス。

 人口約二百人。

 農家や木こりを生業としている者が多いらしい――が、俺が気になったのは村にある家の数だ。人口に対してその数が多すぎる。なぜかと尋ねてみたら、


「ここは……昔はもっと賑やかな場所だったんだよ」


 少し暗い口調で、ルパートさんは教えてくれた。

 曰く、このシェルフィスという村は、もともと炭鉱の町として栄えていたらしい。全盛期には今の十倍以上の人が住んでいたという。だが、採掘される魔鉱石の量が減少していくにつれて町の規模もドンドン縮小していき、今ではこのような小さな村へと変わってしまったと、ルパートさんは教えてくれた。


 そのルパートさんは祖父の代からこのシェルフィスに住んでおり、彼自身もこの村に愛着があって好きだという。しかし、人口減少に歯止めはきかず、今はもう全盛期のような賑わいは見る影もない。


「今日は久しぶりに客人が来たんだ。豪勢に行こうか」

「そんなこと言って、食材は変わらないじゃない」

「まあ、それはそうなんだが」


 楽しそうに会話を交わす親子。

 ……俺は物心ついた頃にはすでに両親がいなかったからな。神父様が父親代わりだったから、寂しくはなかったけど――


「っ! そうだ!」


 俺は慌ててポケットへ手を突っ込む。

 思い出したのは、神父様から受け取った例の麻袋。これを処分してくれとのことだったが、あの激流に飲み込まれてしまったか――と、心配したが、麻袋はちゃんとポケットの中にあった。


 ……というか、処分を頼まれたのだから、あのまま激流に飲み込まれていても特に問題はなかったな。


 そんなことを考えていると、「神父様が殺された」というとてもじゃないけど信じられない出来事が、間違いなく事実であることを改めて実感する。


 なぜ――神父様たちは殺されなければならなかったのか。


 今頃になって、素朴な疑問が浮かび上がった。

 神父様はもちろん、教会のシスターたちも恨みを買うようなことなど考えられない。みんな、王都の人々に愛されていた。それに、一緒に殺された、俺と同じ境遇にある幼い子どもたち……彼らの未来を閉ざしたのは、一体誰なのか。


「うん? どうした? 険しい表情をして」

「何かあった?」

「っ! い、いえ、なんでもありませんよ! そ、それにしても、一体どんな夕食になるのか、今から楽しみだな~」


 ルパートさんたちに余計な心配をかけないよう、俺は明るく振る舞った。

 


 村の人たちは俺を優しく迎え入れてくれた。

 本当に、村に住む者以外がここを訪ねて来ることは珍しいようで、俺はいろんな人から質問攻めを食らう。

けど、ルパートさんが「疲れているんだからその辺にしておけよ」と制止してくれたおかげで助かった。


「さあ、何もねぇ家だけどゆっくりしていってくれ」

「ありがとうございます」


 正直、雨風がしのげるだけでもありがたいし、贅沢だと思う。

 とりあえず、今日一日はここで過ごすことにするか。






※続きは19:00に投稿予定!

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