95話:かくれんぼ②
バタンと凄い勢いで玄関が閉じられた。
僕は慌てて振り返り、すぐに玄関の取っ手を動かしてみるけど、ガチャガチャと引っ掛かる感じで取っ手が回る事は無かった。
「閉じ込められた⁉ かくれんぼの鬼を閉じ込めちゃあ駄目でしょう⁉ それより、なんで内側なのに鍵が掛かっちゃうのさ⁉」
〈逃げるの~? 見つけてよ~〉
ケタケタと笑いながら男の子と思われる幼い少年の声が部屋中に響く。
「さっきと違う子?」
声のした方を探ろうと色んな場所に視線を向けるけど、居場所は分からない。
とにかく早く終わらせたい僕は手当たりしだいにアクションコマンドが出そうな場所を見つめて、手を伸ばして掴んだりしてみる。
『そんな紙やシーツを掴んだって何も無いでしょう。ほらほら、別の部屋に行くとか押し入れを開けるとかしないと~、トイレだってまだ調べてないよ』
僕が意図的に避けていた場所を的確に指示してくる。
別の部屋に行くにはドアを開けないといけない。
だけど、そっと開けて隣の部屋を覗くなんて怖い事をしたくない。
==視線が行ったり来たりしてるな
==もどかしいね~、手を伸ばしては引っ込めてるは可愛いけどね
==悠月お姉様のもじもじ悩んでるのが最高ですの
『お姉様、ファイトですよ』
『ほれほれ進むのじゃいい加減に次の景色が見たいのう』
『大丈夫よ、きっとまだ怖がらせるようなことは無いとおもうから』
好き勝手に言ってくれる外野を何とか黙らせてやりたい、というか一緒に同じゲームをプレイしてく良いじゃんか、なんで一人でホラーゲームなんてやらなくちゃいけないんだ。
意を決して震える手で何とかドアノブを掴んで思いっきり開ける。
ばさぁと何かが倒れる音と、体の近くをサッと黒い影が走り抜けていった。
飛び跳ねそうになるのを何とか耐えて、影が通り抜けていった方を向く。
「いま何か通ったよね⁉」
『いや、我は見ておらんのう』
絶対にカミの奴はニヤニヤしながら喋っていそうだ。
『もうカミちゃん、悠月ちゃんを虐めないの』
キャリ先輩が優しくしかってくれる。
少し屈みながら隣の部屋を覗く。
寝室っぽいけど、この部屋もやっぱり朽ちてしまっていてあんまり歩けるスペースはなさそうだ。押し入れの場所には行けそうだったので、大きく溜息を吐き出しながら、もう一度だけ勇気を出して押し入れを開けて見る。
力んでしまったせいで、パンッと大きな音を鳴らしてしまい自分でビックリした。
「はぁはぁ、心臓に悪いんだけどこのリアル視点」
押し入れの中には、木彫りの人形が置かれていた。
ここに住んでいた子供の名前だろうか、木彫りの人形を取るだけでも怖くって、必死に何にも見ない様に目を瞑りながら木彫り人形を手に取ってみる。
「名前が読めない」
古くなって所々がボロボロで擦り切れてしまっているせいで、名前が分からなかった。
〈あ~あ、見つかった。もうちょっと遊びたかったな~〉
それだけ言うと男の子が少しだけ寂しそうにしながら、霧のように消えてしまった。
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