84話:内緒の初ホラーはVRから
「追い付いた訳ではないが、ようやっと我等のスタートラインというとこりじゃ」
「頑張っていかないとね……主に僕の呪いを解くために」
「まぁそう簡単には溜まらないと思うがのう、次の配信は先輩達と一緒に遊ぶのであろう。どんな人物達かすっごく気になるのじゃ」
今日も家の片付けなんかを手伝い、寮になる場所もお手伝いさん達と一緒になって掃除をしたり部屋の模様替えを手伝ったりした。
その後に母さん達から事務所兼スタジオ完備の本社が近くにあるから行ってきたらどうだという事で、教えてもらった道を地図にしてもらい、カミと一緒に移動中だ。
カミの神社を突っ切らせてもらい、神社を挟んだ反対側の頂上付近から一気に本社の方へと行ける道が出来始めている。
「ほう、何時の間にこんな道が作られていたのだ?」
「なんでここの所有者が知らないんだよ」
「ハルと母上には好きにして良いと言うておいたからのう。移動に便利な道が出来るのであれば我も嬉しいからな。コレはこれで上々じゃぞ」
「でも、まだ途中って感じだね」
坂道を歩きやすい様に草木を避けつつ、くねくねした道にして急な坂道を下り易くしている、太い木と土留なんかも使い、しっかりと足場を固めてあるから安心して歩ける。
神社から少し下って行くとすぐにハル社長が居るであろう本社が見えてきた。
家の寮うと一緒になった建物よりも更に大きくて広そうだ。
ハル社長は見た事があるから、会えばすぐに分かるだろうけど他の人達はさっぱり知らない。
スタッフ? いや社員さん? どっちだろうこの場合……まぁとにかく先輩達であるライバーさんなのかが、僕達には見分けがつかない。
失礼の無いように気を付けたいところだけど、僕等が知ってるのは通話で話した感じだけで後はさっぱり分からない。声の感じだって通話だと違って聞こえるからなぁ。
上から見下ろした感じでは外装の方は終わっているようだけど、内装はまだまだ完成している訳ではなさそうだ。工事関係の人が出入りしているのが見える。
作業服を着ているのは工事のお仕事をしているひとたちだろう、他にも若い子達が何人か出入りしているようだ。母さんから、スタジオの方は一早く使えるようにしてもらっているという情報は得ている。
「あれはハル社長ではないか?」
周りではしゃいでいる僕等と近そうな年齢の人達に囲まれている。
その中心には、確かに見覚えがある自分物が居た。
「それじゃ、挨拶しに行こうか」
「うむ……その前に」
にゃ~っと意味深に微笑みながら僕を見たかと思ったら、カミがパチッと指を鳴らして僕の方を舐める様に下から上へと見つめて、何度も頷く。
その視線にすぐに嫌な予感がして、自分の体を見下ろす。
「なっ! ちょっとカミ⁉ なんで女の子にならないといけないのさ!」
「こういう事はやっぱり形から入らんとな」
「意味が分からないんだけど⁉」
「良いではないか、下手な勘繰りをされるよりも、女の子として通した方が主の為じゃぞ。それとも男だと……いや、この際じゃから中途半端な感じが良いのか?」
なんかカミの奴が変な思考に走り始めた。
「やめて、そんな変な目でじっくり見つめないでよ」
冷汗が止まらない。
「ちょうど良い半分くらい……う~む、それは違う気がするのう」
その言葉を聞いてほっとしたのも束の間に、何か良い事を思いついたようにポンと手を付いて、僕の写真でも撮るかのように指で枠を作って覗く様に見てきた。
すぐに僕はその構えられた枠から逃れようと動くが、一足遅かったらしい。
カミは口角をあげて、もう一度指を鳴らす。
「こうするのが良いかのう」
体は女の子のままに、長い髪を後ろで纏めポニーテールにして格好は男性っぽい服装にされてしまった。よく見ると母さんが買ってきた服の男装バージョンの服である。
「こうしてみると、キリっとして格好良い女性に見えるのじゃ」
「それは、嬉しくないんだけど……なんで男の時よりも女性時の方が格好良くなるのさ」
ガクッと力なく肩を落とすと、慰めるようにカミが背中を叩いてくる。
「カミが慰めるなよな」
「ははは、良いではないか。さぁ行くぞ」
「帰りたい……」
「何を言うておる、こっちに来た意味が無くなってしまうではないか」
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