閑話:悪巧みの社長と先輩達
「ねぇハル社長~、良いんですか? こんな悪巧みを考えちゃって」
「悠月ちゃんの両親からは許可を得ているわよ。それに元々の約束だったホラーゲームをやるっていう話もしていたじゃない」
「だからって、こんな騙し討ちみたいな事をしなくても……ちょっとかわいそう」
「じゃあ奈々は今回は参加しないって事で良いのかにゃ?」
「ダメです嫌です、参加します」
本社自体はまだ完成した訳ではないが、必要最低限の設備は使えるようにしてもらった。
「ホラーが苦手なクセに、無理しちゃって。本当に大丈夫なの?」
「大丈夫です」
ムキになって答える奈々に周りの面々が苦笑いを浮かべている。
「テスターとして俺も参加したけど、かなり怖かったぞ……本当に大丈夫かよ」
「団長が叫んで逃げ回ってたのは初めて見たね」
「普通に画面を見ながらホラーゲームをするのと全然違うぞ。VRゲームを舐めてたよ」
「キッグさんがそこまで言いますか……まぁ、悠月ちゃん達と一緒なら大丈夫なはず、誰かと居ればきっとクリアー出来る気がするから」
「奈々が珍しく燃えてるよ。後輩ちゃん達に良い所を見せたいのは分かるけどね、きっと失敗するよね。キッグ団長が腰ぬかした程だしにゃ~」
「まてフタバ、俺が何時、腰を抜かした」
「尻餅ついて、しばらく動けなかった時を見逃してないのにゃ」
フタバがケラケラと揶揄う様に笑い、キッグ団長が捉えようとしている動きから逃れる。
「道には毛布やマットで安全対策をしないとダメよね」
今回の企画では道に沿って進む感じだ。
VRゴーグルを着けてもらいながら会場入りをしてもらおうと考えている。
「悠月ちゃんはあんまり自分の登録者数を気にしてないみたいだから、まだ気付いてないけど、そろそろ五万人はいっちゃいそうなのよね」
ブロックラフトとロボ戦の動画。
それらの切り抜きされた動画から更に加速して見てくれている人が増えている。
「ロボ戦の覚醒って切り抜きは見モノだったね。熱い音楽とマッチしてて」
「ちゃんと最後の方はカミちゃんが主役になってるからまた良いのよね」
ライバル達との戦いから、旅した先で磨いた技術みたいな演出の回想っぽい差し込みで、悠月ちゃんの覚醒に感化される様に最後はボスを圧倒して倒した。
「はいはい、皆は手伝いに来てくれたんでしょう。二人の動画を見てばかりいないで」
後輩が増えた事が嬉しくって、後輩を可愛がりたい気持ちもあるだろう。
「このままのペースだと遅れちゃうでしょう。早く悠月ちゃん達に会いたいって言うならしっかりと手を動かしてね」
「は~い。いまから取り掛かります」
「初めての後輩と一緒にコラボ……ふふ、どんな子なんだろうな」
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