81話:ロボ戦の奮闘②
人を集めて発展してきた町を狙って、悪い人達がこの場所を手に入れようと躍起になる。初めは小物ばかりだったのが、段々と賊を雇い入れて襲ってくる。
「ぬぅ、ここに住んでおる者達が居るというのに、なぜ勝手に自分のモノにしたがるのだ? 元々は見向きもされておらん土地であったろう」
「意外とね、ここは肥沃な土地なんだよ。地図で見てみると分かるけど場所もかなり良くってね、他の領地にもアクセスがしやすいから、前線基地としても最適でしょう」
住むには開墾して、しっかりと整備しないと生活が出来ないような場所だったから見向きもされなかったというだけ。
「我らだけで戦うというのは、厳しくないかのう」
爽快アクションゲームじゃあないんだから。
マップが殆ど埋め尽くされる程に敵の反応がレーダーに映っている。
大会とかで準備されている場所じゃあないから、普通の建物や岩場が障害物となっている。もちろん耐久性も無いのでどんどん崩されて、逃げ場なんてすぐに無くなっていく。
「これは予想以上に厳しい状況ではないか、敵の数だってまだ増えている感じだぞ」
時間いっぱいまで、ずっと敵は湧いて出てくるのだ。
このステージでは体力調整が重要で、回復アイテムだって使える状態ではない。
かといって遠くからばかり狙撃していると、今度は弾切れで中盤戦が辛くなる。
しっかりと考えて動かないと、すぐに倒されてしまう感じの難易度になっていて歯ごえのある戦闘なのだ。もちろん、それに見合っただけの報酬が用意されている。
「力押しだけじゃあ勝てないよ。どうする?」
「ぬぅ~、あんまり考えるのは得意ではないのだがのう」
ダメージを食らわない様にしつつ、丁寧な立ち回りをしているが……残念。そう簡単には攻略できる訳はないんだよね。僕も居る分、ちょっと敵の硬さやAIが高めの設定になっている様で、一戦目はあっけなくやられてしまった。
「再戦じゃ! 悔しいのう……絶対に倒してやるのだぞ」
「ふふ、頑張れ~」
「悠月も頑張るのじゃ⁉」
「分かってるってば」
ぷっくりと頬を膨らませて怒られてしまった。
==やっぱり難易度高いよね
==俺も一回じゃあクリアー出来なかったな
==というより、悠月ちゃんは本当に銃縛りなんだね
「一番使って来なかった装備だからね。カミとやるなら丁度良い感じになると思ってね」
あまりにもグダグダになる様なら、自分が最も得意とするスタイルに戻すつもりではいるが、やっぱりカミには頑張って攻略して欲しいとは思う。
ゲームもそこまで下手ではないし、むしろ普通に上手い方だ。
二回、三回と数をこなしていく内に、連携も色々と考えて何とか第一段階をクリアが出来そうな感じになってきた。
==ぬぉ~、惜しかったな
==もうちょっとだった
「あと少し、もうちょっと体力に気を付ければぬけられそうなのじゃ…………悠月、そろそろ本気を出してもよいのだぞ?」
カミの集中力もそろそろ限界が近いのかな。
「いやいや、全力でやってるってば」
「狙撃ばかりでは飽きるであろう? 前に見た動きをそろそろ見せてもよいのだぞ」
「ん~、それじゃあ中盤戦まで行ければ見せてあげるよ」
どのみち、このレベルだと中盤戦の戦闘は、カミには荷が重そうだしね。
少しだけ機体のセッティングを弄って、装備の換装システムを入れて、中距離タイプの近接戦闘が出来るようにしておく。ただし、その代わりに今まで出来ていた遠距離狙撃は出来なくなってしまう。
「気分的にも癒して欲しいから、悠月ちゃんになってもらうかのう」
「なっ! それは聞いてないよ⁉」
強制的に女の子にされて、父さんもそれに便乗して僕の立ち絵を一瞬にして女バージョンへと変えてしまっている。
==本気は女の子の姿……と
==ふむ、気にせずに全力でやるのは女性なのだね
「そこっ、変な勘違いをしないでよ!」
なんかリスナー達が変な誤解をしているコメントが多く流れ始めた。
僕が兄妹達にツッコミを入れている間に、カミが再戦ボタンを押してしまう。
初めは狙撃寄りで、今までやってきた連携と同じ動きで敵を殲滅していく。
「ギリギリ、耐えきったぞ⁉」
カミが嬉しそうにするが、すぐに次の段階が始まりだした。
「は? これは……無理、むりムリ⁉ 多すぎるぞ⁉」
「二人プレイだと、拠点が強制的に狙われるのか……しかも、大変なのは2P側の方ね。これはちょっとばかり、理不尽過ぎじゃない?」
敵の強さも一段階上の機体が沢山出てきている。流石に無限湧きではないと思うが、流石に難易度がおかしいし、心が折れちゃうだろう。難易度の調整ミスでしょうこれは。
この段階を抜けないと、良いシーンを見れないし。もう本当に全力でやっちゃうかな。
早く続きの展開を見たいしね。
「こっちは手一杯じゃぞ。悠月の支援には行けんぞ⁉」
==二人プレイだとコレだからな~、やっぱ難易度おかしいって
==悠月ちゃんうごかなくなっちゃったよ
==上手い方ではあったけど、これを見ちゃうとね~
==絶望だな
実際、多少はグダついたけど、良いリスナーさん達が多くて助かってはいた。
でも中には下手だなんだと、言ってくる人も中には居る訳で……。
ストレスが溜まらなかった訳じゃあないんだよね。
「はぁ、もう……いいかげん、面倒なんだよね、弱い者を狙うのは戦いじゃあ当たり前だけどさ、ここまで露骨にされるとちょっとダメなんじゃないかな」
外装をパージして、狙撃武器を全部捨て去る。
「数のごり押しって、ダサくない?」
低空ブーストで一瞬にして潜り込みながら、敵の脚部を集中的に破壊する。
==はい?
==ちょw そのテクニックはえぐいってw
==誰か、説明モトム
キルモーションで一瞬で回り込んでから、また低空で移動した瞬間に動けなくなった敵を真上に投げておく、それだけで直角高速移動が出来る。
敵の頭上に出たら、頭部を格闘で破壊していく。
==動きが変態軌道なんだけど……戦い方もえっぐいね
==本当に最後までクリアーしたんだな。上手い……
==敵を完全に破壊しないで、周りを巻き込む爆発物として使ってるよ
敵のリーダー機がちょっと多すぎる気がする。
本来なら終盤での参戦になるはずだった者達が駆け付けてくれる展開へと繋がり出した。
〈俺らの町だ! 俺達も戦うぞ‼〉
その掛け声と共に、古い機体が動き出しす。
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