79話:新しい家③




「え~、お久しぶりですね皆様……先ずは遅刻してごめんなさい。遅刻した言い訳をする訳じゃあないんですけど、ちょっとネットの方に問題があって配信が出来なかったんです」


 引っ越したばかりで、色々な設定をしなければいけなかったらしく、それに戸惑い準備自体が遅れてしまったのだ。配信機器の確認とゲーム画像がしっかり映るかの確認なども遅れて、結局全てが正常に起動したのが一時間という感じだ。


 一人分なら半分くらいの時間で終わったのだろうけど、カミの分も含めて同時にやっていたから倍の時間を取られてしまった。



 ==無事に配信出来ているなら何より

 ==そうそう、無事ならオッケー

 ==事前に遅れるって情報も出してくれてたしね

 ==ネットの問題じゃあしょうがないね



 引っ越しの話は伏せてあるけど、それ以外の事はフイットの方で一言コメントとして知らせていたから、リスナーさん達も優しく待っていてくれたようだ。


「すまぬのう待たせてしまって」

「皆さんありがとうございます」


 もう一度きちんと謝りながら、空気を切り替えようと次の話題にシフトする。


「えっとですね。今回は初めにちょっとしは報告があります」

「良い方の話じゃからな。心配せずとも大丈夫じゃぞ」


 少しザワザワしだしたコメント欄だったけど、すぐにお祝いムードに変わっていく。


「僕とカミが登録者数一万人を突破したことのお祝いと、ルトフォー機能が解禁になりました。日頃の感謝を込めて……何かしらの配信をしようと思ってます」



 ==おぉ、マジか!

 ==何をしてくれるんだろうね

 ==やっぱり歌じゃないの?

 ==歌は確かに聞きたい


 キャリ==聞きたいね~、むしろ一緒に歌いたいまである

 フタバ==先輩は遠慮してください。ここは後輩同士で私と歌うべきかと

 グルド==……カミ様! 女の子で悠月ちゃんに歌わせて下さい⁉



 なんかコメントに混じって先輩方が好き勝手に言っている。

 それを早々と見つけてしまい、ジト目でコメント欄を眺めてしまった。


「これ悠月、先輩達をそんな目で見るでないぞ」

「はっ! すみません、つい自由人が多いなと思って見てしまいました」



 ==ストレートだなw

 ==まぁあの先輩達だからなぁ

 ==可愛がられている証拠じゃないか、良きかなよきかな



 先輩達もコメントの方に沢山書き込んでくれているみたいだけど、速攻で流れていってしまうので目で追うのを止めた。配信が終わった後にでも確認しよう。


「何をするかは、まだ決まっていませんので追々にお知らせします」

「歌うにしても、やはり練習はしたいしのう」

「カミって歌えるの?」

「失礼なヤツじゃな。歌えるに決まっているではないか!」


「聞いた事がないから、僕には何とも言えないんだけど……本当に? 案外音痴だったりしない? 鼻歌だって聞いた来ないのにさ」


「我の歌声を聞いて感動させてやるからのう、覚えておくのだぞ」

「腰を抜かさないよに気を付けるよ」


 キャラが頬を膨らませて睨みながら僕の方を見てきている。


 その顔を見ると、前の家でやっていた時に見たカミの特徴を良く捉えている。母さんも一緒に見ていたから、それを踏まえて絵にして父さんと一緒に落とし込んだんだろうな。


 あの状況もある意味では良い環境だったようだね。


「何を笑っておるのだ!」


「いや~、別に何でもないよ。理由が知りたかったら放送が終わった後に話してあげるからさ、それまでは我慢だね」


「むぅ~、ちゃんと訳を言うならば我慢しようではないか」

「それじゃあ、今日の配信を始めよう」

「今日はロボ戦の続きじゃろう」

「そうそう、早く続きをやりたかったんでしょう」


 もう2時間くらい時間が過ぎてしまっている。

 延長も考えて配信しないといけないかもしれないな。


「報告は以上ですので、後は僕達のゲーム配信を一緒に楽しんで頂けると幸いです」

「ふふふ、今日中にサブストーリーを網羅してやるのだぞ」


 それは不可能だと思うけど……まぁ、全力でサポートすれば半分くらいは終わるだろう。

 一度ゲーム画面に切り替える為に、挿絵を映して準備に取り掛かる。


 配信の方の画像でもしっかりと挿絵に写し変わったのを確認し、すぐに僕とカミはゲームを起動して、ゲーム画面をキャプチャーする。


 環境が変わったから、念入りに音声確認と音量を注意してみる。


 父さんからオーケーサインが出たら、画面を切り替えて自分達のキャラもゲーム画面端の邪魔にならなそうな場所へと移動させる。






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