74話:揃った初期メンバー⑤
柳生さんとは違った形でリスナーさんと言い合いをしながら、ちゃんと自己紹介を混ぜて活動の方針もちゃっかり喋っている。
『さてと、もう終わりの時間ね。なんかどっと疲れたわよ』
あれだけリスナーさんに対してツッコミやらツンケンしていれば疲れもするだろう。
そのくせ、嬉しい思いを必死に隠そう(隠せていない)としていたんだから……彼女の初配信を後々に見せたら面白い反応が返って来そうではあるけど。
その辺はハル社長かフロネちゃん辺りが、企画してそうだな。
『次の子はアタシの親友よ。下手なちょっかいなんかしたら承知しないから』
それだけ言い残して、後は分かれの挨拶を済ませて配信を終了した。
〈はぁ~緊張した〉
〈お疲れ~〉
〈お疲れさん。最後はフロネさんだね。がんばって〉
チャコットの方で終わった三人が労いながら、次の準備をしているフロネちゃんを応援している。コメントだけでは彼女が緊張しているのかどうかは、僕達には判断がつかない。
〈えぇ、ありがとうございます?〉
返ってくる返事は、基本的に淡々としたものばかりだからな。
それに疑問形式で話すのを見ると、どうしても更紗ちゃんを思い出すんだよね。以外にも似た人は居るんだなって思う。
フロネちゃんの配信が始まり、一枚絵で「少々お待ちください。」のテロップと豪邸の絵の背景に広い庭、そこでお茶会を準備している絵が描かれている。
待っている間にも楽しませようと、少し絵が動いているのもまた楽しい演出だ。
『ごきげんよう皆様。フロネと申します?』
挨拶からその疑問系譜は変わらないんだ。
==お嬢様だな、綺麗な女の子だ~
==まだ彼女が清楚と決まった訳じゃあないぞ
==シェルちゃんはピュアだったけどな
==悠月ちゃんが絡まなければな
『あら、しょうがないと思いますよ? 恩霊先輩が魅力的過ぎるのがいけないんですよ。カミ様には本当に感謝したいです。ちなみに私はお姉様が大好きです』
そう言われた瞬間に画面越しなのに、物凄い寒気が僕を襲ってきた。
「どうしたのじゃ?」
「いや、気のせい……だと思う」
思わず振り返ってしまったけど、当たり前にただ家の壁があるだけで何も居ない。
カミが居るくらいだし、幽霊くらいは普通に居てもおかしくはないだろうが……変な場所にも行った事がない幽霊に憑かれたとは考えたくないな。
『あぁ、エルモちゃん、安心してください? 男の方は譲りますから、女の子の恩霊先輩は私に下さいね。……あ、でも子供は欲しい?』
==初配信でなんか物凄い爆弾発言してるぞ、このお嬢様
==いや~、シェルちゃんが画面越しに真っ赤になっているのが想像できるな
==きっとチャコットのコメント欄は大荒れだな
確かにリスナーさんの想像通りで、コメント欄が物凄い事になっている。
〈ちょっとフロネ⁉ アンタ何言ってんのよ〉
想像通りというか、シェルちゃんは絶対に顔を真っ赤にしながらリアルで叫んでそうだ。そういう話には免疫がなさそうだし。
「お主も真っ赤な顔をしておるぞ」
「えっ! そ、そんな事は無いよ」
「主も免疫など無いだろう。女性にした時にお風呂に入るのは我か母上が居ないと気絶して危ういという話になったであろう」
あの時の記憶は殆ど無いので、正直な話……覚えていません。
思い出したくない封印された記憶も眠っている気がする、母さん達に散々おもちゃにされていた記憶が微かに……いかん、またしっかりと封印しておかないと倒れるな。
「自分の体を見て倒れるとはのう。はぁコレは母上と話し合いをせねばなるまい」
なんか勝手にカミが納得しながら、母さんとアイコンタクトで語り合っている。
というか、フロネちゃんは何時まで僕の事について話してるのかな。
『……おかしい? ここまで話していれば来てくれると思ったのに?』
「僕待ちだったの⁉」
『女の子バージョンできてほしかった?』
「贅沢な奴じゃのう。しかし、後輩のデビューとあっては叶えてやらねばのう」
カミが物凄く悪い顔をしながら僕を見てくる。
「ちょ! 今は駄目ッーー」
僕の静止なんて聞かずに、すぐに女の子にされてしまう。
「もうカミ⁉ 怒るよ」
『はぁ~、お姉様。私の事も怒ってくれて良いんですよ?』
「それは後で怒ります。まったく初配信で何を言ってるんですかフロネちゃんは⁉」
『正直に話しただけですが、ダメでした?』
「ダメです、まったくもう」
「悠月も性の話には免疫が無いからのう。許してやってほしいのじゃ」
『そうだったんですね。意外です』
==あ~、清楚な人いたな
==そういえば悠月ちゃんは意外にも清楚だな
「皆が僕の事をどう見てるか、知りたいよ。ちゃんと自己紹介してね」
『はい、おふざけはここまでにしておきます。じゃないとお姉様に嫌われちゃいそうですからね。此処からはしっかりと私の事について話しますね』
すぐにフロネちゃんが話しの方向性を変えて、しっかりとリスナーさん達の名前を決めていく。女の子は「メイドさん」で男の人達は「執事さん」になるらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます