73話:揃った初期メンバー④
『それでは、自分の時間はここまでです。次はシェルちゃんで~す』
体を左右に動かして、終わりの挨拶をしながらフェイドアウトしていった。
最後まで元気いっぱいの放送だったな。
次に映ったシェルちゃんは少し暗めの顔をしている。どっちかというと不機嫌という感じかもしれないけど、気の強そうな顔から疲れた表情になる手前という感じだろう。
『この後って物凄くやり辛くない。ねぇ、なにこの空気? すっごく面倒なんだけど』
もう配信が始まってますよシェルちゃん。
気付いてと思うが、すぐに僕等が助けにいける訳でもないでのチェコットの方でシェルちゃんにコメントを直ぐに送るくらいしか出来ない。
彼女の配信にピコンッ!という音がしたことから、僕のコメントが届いたのは間違いないんだけど、コレって音がそのまま乗っちゃっているから、不用意に喋るかける事も出来ないんじゃないって事になる。
『えっ⁉ あっ、本当だ。わぁ、今の無し、ちょっと聞かなかったことにしなさいっ!』
==それは無理だな
==なんだ、意外と可愛らしい子だったな
==気が強そうな不良っぽいイメージだったけど、意外と清楚系かもな
『違うわよ、変な想像しないでよね。って、違う! もう変なコメント打つヤツが居るから反応しちゃったじゃないの。んんっ、え~、アタシはシャルっていうの、よろしく』
シャルちゃんのキャラがチラチラと画面端に目がいっている事が分かる。
これはきっとセリフ的なモノを書いていて、それを見ながら喋っている事が丸分かりだ。それに気付いているのはリスナーさん達を同じようで、なんかコメントの方でニヤニヤとした絵文字やら言葉やらが大量に書かれだした。
『な、なによアンタ達……コメントがちょっと気持ち悪いわよ』
==気持ち悪いとは失礼な
==ただ、一生懸命にやっているなと思って見ているだけじゃないか
==うんうん、頑張って
気付かぬは本人ばかりという事だろう。
その後も一生懸命に書いたであろうセリフや自己PRなんかを紹介していく。
不良というよりも、もうツンデレになっている気がする。
『もうさっきから何なのよ、妙に優しくしないでよ』
そう言いつつも、ちょっと嬉しそうに見えるのは気のせいではないんだろう。声だって嬉しいの必死に隠しているようだったし、キャラの顔も笑顔がチラチラと垣間見えている。
『アタシはアンタ達に変な名前を付ける気はないからね、リスナーやら視聴者さんって呼ぶから、変な期待をしても無駄だからね』
==了解しました。
==別に問題はない
基本的に彼女はゲーム全般を殆どやってこなかったらしく、メジャーなゲームすら初心者という事らしい。記載されているキャラ紹介には、見た目のせいで友達が少なく、初めて出来た友達とゲームしてから、仲良くなった人が増えたという。
ただ、一人でやっても楽しくなかったので、友達とこの業界に飛び込んで来たという。
『フロネに下手な手出しをしてみなさい、絶対に許さないんだからね』
その友達というのがフロネちゃんになるらしい。
==あれ、悠月ちゃんも大好きなんだよね
==さっきエルモちゃんが言ってたよな?
==タイプは何が好きなんだろう
確かにそんなことを言っていたけど、別に掘り返す必要はなくないか。
『そうね、別にアタシが好きと友達って別でしょう。まぁ特別に教えてあげるけど、アタシが好きな恩霊先輩は女装時かしらね。可愛らしくしながらも、男寄りで恥ずかしさで悶えてるのとかって、かなり好きなのよね――――』
駄目だ、なんでエルモちゃんに続いてこの子も僕の事を嬉々として語るのだろう。
まだ二回くらいしか女装絵ではやっていないはずなのに、良くまぁ覚えているな。
『先輩達も一万人はもう突破するし、恩霊先輩の方は下手すると五万人はすぐに突破して、3Dとか出て女装時の姿が早く見たいな』
配信の殆どが僕の女装時にさせたい事やら、見たい衣装と絡みになっちゃっている。
トリップしてないで早く元のシャルちゃんに戻ってほしい。
でもここで僕が声を掛けて良いモノか、物凄く悩ましいんだけど。
「お~い、配信そっちのけで何をしておる。せっかくの初配信がただの悠月話になっておるぞ。今後でいくらでも見られるのだから今は配信に集中せい」
あのカミが的確な指示をしている。ちょっと感動するな。
「な、なんじゃ悠月⁉ そんな妙な目で見るでない」
「いや~、カミも成長してるんだなって思ってさ」
『はっ! すみませんでした。ありがとうございます』
「うん、気を付けてね」
「悠月の女装姿が立体で見れるよう、我等も頑張らんとな」
「そこは普通で良いの、頑張らないよ。なんで女装時の姿でお披露目しないといけないの」
『楽しみにしてますね』
「しないで良いから!」
==ん~、やはりちょっとズレてる子だったな
==俺は女装時の悠月ちゃん派だからな、シェルちゃんを全力で応援する
なんか変な方向になってしまっている。
「とにかく、後は頑張って自分のお話をしようね⁉ じゃあね」
「ぬぅ、逃げたのう」
『逃げられちゃいました』
なんで二人は残念そうにするかな、リスナー達も妙に残念がるのが逆に怖いんですけどね、そんな事をしても、僕は再び現れたりしないからな。
「…………こらカミ、早く戻ってくる」
『やっぱりなんだかんだで優しいですよね』
「うむ、流石は悠月じゃのう」
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