72話:揃った初期メンバー③
『なんで初っ端からこんなにリスナー達と濃密なやり取りをせんとならんのだ』
「でも、そういう所が面白いってハル社長が思ったんじゃあないですかね」
「聞いていて楽しかったのだぞ。我等では御使い達とあんな掛け合いは出来んぞ」
多少なりと、僕等の事で嫉妬されて燃やされてはいたけど、ネタとして受け入れられている。これなら、皆で一緒にプレイしても問題はなさそうだ。
僕達が褒めると、気恥ずかしそうに咳ばらいをして、時間を確認して次へとバトンを渡す様な準備を始めている。
『さて、次の子達も待っているので、自分はこれにて。あぁ、次の配信ではバスケ選手の育成ゲームをしますんで。よろしく』
そういって、終わりの挨拶をしながらフェイドアウトしていく。
リスナーさん達には、そこをやるのかと笑われて、次回に期待という感じで終わった。
〈ありがとうね。助かった〉とハル社長からチャコでお礼を言われた。
次の子は、元気いっぱいのエルモちゃんだけど……大丈夫だろうか。
配信前にチェックはしてたから、多分……問題ないとは思うけど、一応だ、信じていない訳じゃないぞ、でも音量を最小にして、僕は待機した。
『皆さん初めまして~』
「うっるさいのじゃ⁉」
僕の方は音量が最少だったから特に問題はなかったが、カミの方から僕の元まで聞こえるエルモちゃんの声が聞こえてきた。
信じていたんだけどな……やっぱり爆音だったか、元々の声が大きいっていうのもあるんだろうけど、これで何人の鼓膜がやられた事か気になる所だ。
初っ端のコメントで、「五月蠅い」とか「鼓膜が……」というものが続々と流れていっている。
『わわ! ごめんなさい~』
==謝るのは良い事だけどね、音量を下げてくれ
==鼓膜がほんとにないなる
『こ、これでどうですか?』
やっと普通に聞ける状態になった。
「最初の印象はバッチリじゃな」
「まぁ、今度もこれが続かないと良いね」
もうネタというよりも、コレがないとって言い始めるリスナーさんが良そうで怖い。
まぁ元気を与えてあげられる配信を目指すって言ってたから、頑張ってほしい。
真っすぐで明るく良い子だってハル社長さんからの資料で見た。
初めからそれが良く解るな、ほぼ全力投球で配信しているけど……疲れないのだろうか不安になるレベルだ。よく喋り付かれないな。
『好きな事は運動全般です! ゲームはそこまで上手くないですが、体を使う事だったら大抵は何とか出来る気でいますよ?』
物凄く脳筋な発言だ。考えるよりも体が動くタイプなんだろう。
『…………あとは、なんでしたっけ?』
思わず画面を見ながら倒れそうになった。
カミの方もコテンと危なく椅子から落ちそうになっている。
「自己紹介が終わったなら次はリスナーさん達の名前とか、これからの活動方針とかね」
『あぁそうですね! ありがとうございます恩霊先輩』
僕の声は入っていないから、リスナーさん達には何を言われているか分からない。
何か助言されたくらいのニュアンスで、リスナー達が笑いながら沸き立っている。
「エルモと大人数でのげーむをしたら、楽しそうじゃぞ」
「まぁ、場はあったまるだろうね。どれだけ出来るか分からないけど」
突貫脳筋プレイは物凄く上手そうだけど、タイミングとかリズムゲームなんかも案外と上手いんじゃないだろうか。
『あぁ、ちなみに私は恩霊先輩の男の子バージョンが好きですね。すっごい好みなんですよ。あんな子がリアルに居たら、襲い掛かっちゃうかもしれません』
なんか物凄い発言をしている。
良く解らないけど、僕の背筋に氷水でも垂らされた様な寒気が走った気がした。
リアルで彼女と会うのは危ないかもしれない。
『ふふ、先輩とは仲良くしたいですね。でも、なんだかライバルが多そうなんですよ、同期の後二人とも、先輩が大好きっぽいですしね』
なんでだろう、楽しそうに話しているのに瞳が暗くなっている様に見えるのは。
『でもまぁ私とは違うタイプの先輩が好きっぽいので、仲良く先輩を分けられたら良いですよね。あぁ、男の子な先輩と一緒に早く遊べる様にならないかなぁ』
最終的な目的が僕なんだね。さっきよりも病んでいる瞳に見えてきた。
『優しいですし、押しにも弱そうで…… 家庭全般が得意な上に料理の腕前はプロ級。理想過ぎません、小っちゃいんだそうですよ、本当に、可愛がりたいなぁ~』
カミに助けを求める視線を送るが、首を横に振って拒否している。
『奈梨先輩も小っちゃくて可愛らしい先輩ですし、そっちも気になりますね。女の子にそこまで興味はないんですが、小さくて可愛い存在ってだいすきなんですよ』
==なんだろうな、まともなのは今の所は柳生のみだな
==まだ二人目だって、残りの子を見てから判断しような
==でもよ、俺達の悠月ちゃんが危ない気がするのは気のせいか?
==ばか、気のせいじゃねぇよ
リスナーさん達には僕の味方が居てくれるようだ。
==分かる分かる
==あの可愛らしい先輩をちょっと弄りたくなるよな
==また涙目で一生懸命にカミちゃんをフォローしてる姿がみたいな~
どうやら、リスナーさんが僕の味方なのは極少数のようだ。
「まぁなんじゃろうな、我もエルモの気持ちが分かるからのう……何も言えんな」
此処にも危険人物が居たんだった。
カミはむしろ味方ではなく敵の方だったのを忘れていた。
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