71話:揃った初期メンバー②




 柳生さんの放送が始まり、僕等は仲間のデビューにワクワクしながら画面に噛り付く感じで待機していると、父さんと母さんに画面に近すぎると少し引き剥がされた。


『え~、大丈夫ですかね?』


 また細かく動くようにはなっていないから、絵全体が動いている。


 それでも緊張でコメントと画面を一生懸命に見ているんだろうという感じで、キャラがキョロキョロと動いている様子が良く解る。


「僕達もこんな感じだったのか?」

「そうだな、大体は同じだぞ」

「分かるのう、コメントが早く流れていくからビックリするのじゃ」


 カミが頷きながら、物思いにふけっている。


『凄いですね……コメントが早い⁉』


 リスナーさん達は男の人って事に驚いている人達が半数くらいはいるだろうか? 後は柳生さんの渋い感じを弄っている人も何人か居る。


『え~先ずは自己紹介から、柳生五郎です。宜しくお願い致します。自分は育成ゲームからスポーツ系、RPGなんかが大好きでして、そちらの方をプレイしていくと思います』


 凄いガッチガッチに硬くなっている。

 少し前にチャコで話していた雰囲気が微塵も無い。

 今後の活動やら、自己PRなんかを淡々と進めていく。


『男性ライバーも随時増やしていくそうなので、諦めないで応募してくださいと社長さんが言ってましたよ。自分としても、男のライバーさんが増えるのを待っております』


 コメントも拾ってはいる様だけど、ちょっと持ち前の良さを殺してしまっている感じだ。勿体無いな~と思いながら眺めるだけの僕等に社長さんからコメントが飛んで来た。


『このままじゃあちょっとアレだから、援護射撃をよろしく~』


 ハル社長さんからの、無茶ぶりを投げられてカミと一緒にお互いを見た後に、頷く。

 一応、柳生さんに連絡を入れる。

 社長さんからも一報が入っているだろうけどね。


『あ~、ちょっとお待ちください』


 何かやらかしてしまったのかと、焦った感じでチャコの方を一生懸命に見ている。


「どうも、ちょっと配信にお邪魔しますね」

「声を入れてもらって良いかのう」


『えっ⁉ はいっ分かりました』


 音声が大丈夫かの確認をして、すぐ配信に戻る。


「どうも、少しだけお邪魔します」

「悪いのう、ちょっとだけお邪魔するぞ~」


 僕等の登場にコメント欄からも反応が凄いある。


『え~っと、ゲストに先輩達が駆け付けてくれました』


「初めてだから仕方なしにしても、硬いの柳生よ。お主の面白さが全然伝わってこんのじゃ」


「それは仕方ないでしょう。それよりも、男ならここに居ますから。今はメンバー内に一人しかいないみたいな言い方はしない様にね」


 僕がちょっと呆れながら言うと、何故か柳生さんもリスナーさん達も困惑している。



 ==それはない

 ==どうみても女の子だからな~

 ==むしろ悠月ちゃんの性別は悠月ちゃんだからね

 ==君にもう性別は存在しない



 なんか酷い言われようだ。


『うん、悠月先輩に性別は存在しませんな。合格した後に新入メンバーで集まったんですけどね。そこで社長さんから悠月先輩の差し入れデザートを頂きましたが……美味かった』


「え、僕達はまだ会ってないのに、皆はもうお互いを知ってるの⁉」


『男一人で心細かったんですよ~』


 柳生さんは心からそう言っているが、コメント欄ではしっかりと嫉妬の炎で燃やされている。特に、僕のデザートを食べた辺りを責めている。


『ふんっ、社長さんも言っていたが、この箱に入った特権だ⁉ 誰が悠月先輩のデザートをあげるものか、あれは絶品スイーツと言っても過言ではないのだ』


「過言だよ⁉」

「いやいや、あの魔性の美味しさはおかしいのじゃ」


 ぶつかり稽古みたいに柳生さんがリスナー達と口論を開始する。


 これなら大丈夫そうだ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る