68話:二人のセンス③




 リスナーさん達とやり取りをしながら、カミと僕の建築物について語っていると、急にハル社長さんからチャコードの方でコメントが書かれた。


 カミもそれに気付いたのか、僕と一緒で視線が画面の端へと向いている。



 ==どうしたんの?

 ==いま、なんかのメッセージが届いた音がきこえたけど?

 ==二人とも同時になったっぽいかな?

 ==二人で何か見てる様子はわかるな



「ちょっとごめんなさい、しばらく離籍します。動画はこのまま垂れ流しにしてるから、楽しんでてね。お母さん、ちょっとの間だと思うけど宜しくね」


「任せときなさいな。ふふ、リスナーさん達にちょっと言っとくと。別に大変な事件じゃあないから大丈夫よ。しばらくまちましょうね」


 母さんの様子からすると、ハル社長が急に連絡してきた事について、何か知ってるのかな。


『ごめんなさい、突然に』


「いえ、急にどうしたんですか?」

「なにか放送中で知らせたい内容があると書いておるが? 何かあったかのう」


『えぇ、貴女達初期メンバーが取りあえず決まったのよ。杏ちゃんや他の絵師さん達から許可も貰ったし、キャラ絵といってもシルエットだけになちゃうけど、公開して欲しくてね。これから情報も小出しに発表していくから。今回の放送の最後に発表を貴方達から言って欲しくてね。急で悪いんだけどお願い』


 配信中という事もあって、ハル社長の言葉は矢継ぎ早に言われるが理解は出来た。


 キャラの立ち絵も送られてきているので、後はこれを張り付けて発表すれば大丈夫だと、キャラ毎の背景絵もしっかりと付いている。


「我等にはこういうのはなかったのう」

「まぁぶっつけ本番みたいなモノだったからね」


 まだそんなに経っていないはずなのに、懐かしく思えてくるのは不思議だ。


『こっちも放送終わりまでには、其々の子達のプロフィール等を仕上げておかなきゃだから、よろしく頼むわね。分からない事があったら杏達に聞いてね』


「わかりました、頑張ってみます」

「心配せずともしっかりとこなしてみるから、安心てよいぞ」


 なんでカミは自信満々に言えるのだろう。

 ほぼ僕に丸投げする気なんじゃないだろうね。


 ジト目でカミの方を見ていると、ニッコリと微笑んでから何も言わずに手を付き出して、親指を立てて、「頑張ろう」と言ってきたけど、それが僕には「頑張って」に聞こえたのは、絶対に気のせいじゃないと思う。


 吐息交じり配信に戻ると、なんかリスナーさん達が笑っていた。



 ==何を話していたかは知らないが、ちょっと面白かった

 ==露骨に最後はジト目でため息を付いてたね

 ==反対にカミちゃんは物凄く良い顔をしてたよ



 そういえば、キャラは動いていたんだ。

 すっかり忘れていて、妙な恥ずかしさから顔が赤くなってしまった。



 ==お、照れてるのかにゃ?

 ==うむ、可愛いのう



 何時の間にか父さんと母さんによって追加されていた、恥ずかしがる差分でキャラも一緒になって顔を赤らめているのが表現されていた。


「何時の間に⁉」


「ふふ、私の愛に不可能は無いのよ。ちなみにカミちゃんの方にも感情差分データを追加してあるから、色々と動くようにはなってるわよ」


「ほうほう⁉ 全然気がつかなんだ……流石は母上であろうのう」


 いやいや、そういうのは事前に僕等に知らせておくべき事でしょう。


「それより、何処まで進んでるの?」

「ちょうど、其々の場所で建築が始まってから半分くらい出来てる感じね」

「ふふん、どうじゃ。我の作ったモノは」



 真っ四角の建物に、部屋を用意しただけの建物を自慢されてもな。





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