63話:ロボットの戦いはやっぱり熱い方が良いでしょう




「さぁ今日も始まりました。ロボ戦をやっていきますよ」


 僕が配信の音量と自分達の音が聞こえているかを確認しながら、キャラの動きなんかも一緒に見てから父さんの方を見てOKの合図を待つ。


 父さんが手で丸を作ってGOサインを出したので、配信は問題ないようだ。



 ==今日でどのくらいまでやるのかな?

 ==序盤はもうすぐ終わるんじゃない

 ==そうなると、今回の配信は丁度良い部分で終わるのか



「大丈夫、切りの良い所までは進める予定だからね。僕の場所では良いけど、そういうコメントはカミの場所でしちゃあダメだからね。あっちはネタバレ禁止だからね」



 ==は~い

 ==了解しました



 まぁ実際には父さんの方で危なそうなコメントは消してくれるだろうから、僕等は気にせずにゲームに集中した方が良いだろう。


「ふっふっふ~、今回は前回配信の時とは違う我を見せてやろうではないか」

「配信前に少し練習したもんね」

「これ、余計な事を言うでない」


 パタパタと両手を広げて怒ってくる。


 基礎の動きと、それを応用した回避と近接の潜り込みモーションだけ、出来るようになったんだけど、それだけ出来れば中盤の敵とも良い勝負が出来るようになるだろう。


 それに序盤から中盤辺りに入るシナリオは、かなり熱い展開が待っている。

 弱すぎてグダグダになってほしくもないし、強くし過ぎてあっさりと終わり過ぎても駄目だろう。

 だから、ワザと強い武器が取れない様な場所で練習のための周回をさせた。


 これならお金は溜まっても、序盤で手に入る武器くらいしか集まらないので、機体の調整も中盤の敵と同じくらいになる。


 僕自身も狙撃系統の装備は慣れてないから、特殊演出を見せられるか分からないけど、頑張って見ようと思っている。


 途中でライバルの敵として熱いヤツが出てくる場所で、罠に嵌められて一対一で死力を尽くして戦う展開を、悪質な敵キャラが邪魔をする場面がある。


 そこを、二人プレイでやる時には援護という形で僕が参加できる訳だ。


 ミサイルを撃ち落として、カウンターショットで敵を倒していくとみられる特殊な演出は僕もまだ見たことが無いんだよね。


「そういえば、なぜ悠月は銃ばかり使っておるのだ? 練習の時に見せてくれた中距離? だったかのう、あの格好良い動きは見せぬのかう」


「まぁね、今回はカミが主役だからさ。僕はその相方でしょう。近接で戦ってるんだから僕は狙撃で援護の方がバランスが良いでしょう」


 って言うのは、建前なんだよね。

 ただ、僕が特殊演出を見たいから、初めっから遠距離装備一本に絞ってやっているだけだ。


 まぁこのゲームではカミが主役だと言うのは本当だし、僕よりも目立って欲しと思っている気持ちもある。その事は口にはしないけど。


 早くカミも一万人の登録者数になって一緒にお祝いをしたい気持ちが半分くらいだ。


「おぉ、今回は大会で優勝するのを目指すのじゃな。一番を取ってやるぞ」

「頑張ってね~」

「お主も頑張るのだぞ⁉」

「分かってるってば」


 実際、上位三位以内入らないとストーリーは進まないからね。


「ぬ、こ奴は初めからいちゃもんを付けて来たヤツではないか、動きもちょこまかと面倒な奴等が多いのう。友達とも戦う事になるのだな」


 そうか、二人プレイでやると親友キャラがもう一つのライバル枠的な感じで当たるんだ。



 ==おぉ~、随分と動けるようにはなってるね

 ==これなら問題なく上位まで行けそうだ

 ==っていうより、悠月ちゃんの方は容赦ないな

 ==本当ならもっと苦戦してるはずなのに、良い勝負にあなるように援護は最低限か



 チーム戦だから、近距離に不利な配置で試合が始まったりするのだけど、僕が居るからその辺は問題なく進める。でも、カミの邪魔にならないように、陰湿な奴だけさっさと倒して、後は高みの見物を決め込んでいる。


「さぁカミ選手。動きに翻弄はされているものの確実に相手を追い詰めております」



 ==暇すぎて実況を始めたな。

 ==援護せんのかいw



「あ~っと敵に釣られて罠エリアに嵌められた~」

「気付いておったなら教えんか⁉」


「いや~、そういうのも経験だからね。僕だっていつもカミの方を見れてる訳じゃあないんあだら、しっかりとマップの把握もしないとダメだよ」


「ぬぅ~、何時になく悠月のヤツがスパルタじゃぞ。それもこれも、お前のせいじゃ」


 いや、それはどうだろう。ただの八つ当たりで生意気同級生がボコボコに倒された。

 その後は順調に進み、決勝戦まで進んできた。


「好敵手と最終戦で戦うとなると、熱くなるのう」


 そうだね……さて、ここからが本番だ。


「ふぅ~、そうだね」


 やり直しは無しの一発勝負。


 敵のチームは憧れの先輩と親友が組んだライバルチーム。先輩がカミの相手で、親友が僕と同じく狙撃機体に乗っている。


 決勝戦が始まると同時に、サイレンが鳴り出して僕等は閉じ込められる。



〈どういう事ですか先輩⁉〉

〈私だって知らない! どういう事ですか⁉〉

〈何を驚いている、コレで簡単に手に入れる事が出来るだろう〉

〈こんなの、こんな事を望んで何ていない……〉



「あ奴が悪か⁉ 物凄く腹立たしいのう」

「さぁ勝負しよう」

「こんな気持ちで戦えというのか、気分が悪いぞ」

「大丈夫だよ、二人の戦いは邪魔させないからさ」


 目をパチパチとさせてカミが僕の方を見てくる。

 最初は僕以外の全員が動かない。


 カミも攻撃がし辛くて手が出せないでいた。


 ライバルたちもどうすれば良いか分からずに動けない展開だから丁度良いんだよね。


 十秒から二十秒。

 試合開始から僕が全力でこっちに飛んでくるミサイルを一発を通さずに撃ち落としてく。


 すると、ライバルチームが僕のキャラの名前を呟き始めた。


「やば、一発もらした⁉」

〈そういう事なら、手伝うぜ〉


 ギリギリ間に合ったらしく、援護が一人増えた。


 親友が僕と一緒になってミサイルとこちらに向かってくる無人機や有象無象共を一緒になって撃ち落としてくれる展開に移行し、曲が段々と熱いモノに変わっていく。



 ==マジか、特殊演出狙いかよ悠月ちゃん

 ==え、えぇ⁉ なにこの展開は

 ==俺も知らなかったな

 ==やべぇ、曲も相まって熱くなってきな





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