60話:カミの頑張り配信③
整地をしながら喋っているだけなはずなのに、カミは次々とトラブルを持ち込んでくれる。お陰様でただ地面を掘っているだけという感じにならずに助かっているけれど、僕が笑いで過呼吸になりそうで、ちょっとだけ辛い。
ガラスを手に入れようと砂漠を目指して、適当な場所を掘ろうとしたら、一発で地盤が崩れ落ちて谷間に落ちていくし、そこで下に水が流れていて助かるも、下にはモンスターが待ち構えていて、トラウマを思い出したカミがパニックになりながら逃げ回る。
最後には落ち着いた瞬間に自爆する敵に寄られて、マグマにダイブする落ちが付いた。
==笑いの神様に愛されてるね
==カミ様だからな
==それにしても、悠月ちゃんが笑いが止まらないんだけど
==苦しくなって机叩いてるもんね
==笑い転げている姿が目に浮かぶね
「笑っておらずに助けに来てくれても良くないか⁉ なんで我だけこんな目にあうのじゃ。少しは悠月に向かって行っても良いはずだぞ」
数はすくないけれど、ちゃんと僕の方にも敵は来ていた。速攻で処理したから別に何ともないだけで、ちゃんと戦っていれば別に問題はなかったのだ。
カミが怖がって無駄に逃げなければ……の話だけど。
「はぁはぁはぁ――お腹痛い」
「笑い過ぎじゃぞ!」
マグマに入っちゃったから、アイテムは完全にロストしたと思う。
「ふふっ、なにか重要なアイテムって持ってたっけ?」
「いや、失ったのはスコップやつるはしくらいじゃぞ。石で出来ているヤツ」
「リスポーン位置って何処だっけ?」
==地下だね、初めの場所から動かしてないし
==ベッドはもってってないからな~
カミが喋るよりも兄妹達の方が早く答えてくれる。
優秀な人が多いな、僕が聞いてからほぼノータイムって事は死に戻りしてから、すぐに僕にコメントしてる事になる。先読みの力でもあるのではないだろうか。
「こっちまで来れそう? なんなら戻るけど」
「ん~、方角は大体覚えておるぞ」
「じゃあ大丈夫そうだね」
「うむ、この世界では我の方が長く居るからのう、心配などせずとも大丈夫じゃぞ」
得意げになって良い所を僕に見せようと、すぐに戻って来るみたいだ。
「見ておくがよい、我だってすぐに悠月よりも沢山集めて見せるのだから」
「別に競争はしてないでしょう――」
そう思って十分ぐらいは砂漠の砂を採取していただろうか……、
一向にカミが現れる気配がないんだけど、どうなってるんだろう。
「カミ~? まだ来ないの?」
「うぅ~悠月~、ここは何処なのじゃ」
==迷ったな
==向かった方向は間違ってないと思ったけどな?
==座標を出して見たら?
座標の出し方を説明しながら、現在地を確認すると確かに方向は正しかったみたいだけれど、僕が砂場を掘り進んでいたので姿が見えずに先に進み過ぎてしまったらしい。
「隠れるとは酷いぞ。出迎えてくれても良かろう」
「いや~ごめんね、サクサクと掘れるからさ。ついつい楽しくなっちゃって」
テンポよくサクサクと音が鳴るから、それを聞きつつやってるとどうしても掘る事に集中しながら、カミと下らない話で盛り上がっていたせいで、相手の位置なんかの確認を怠った事で、カミは僕の場所を見失ってしまったようだ。
「ようやく見つけたのだ」
向日葵が咲いたみたいにパッと顔が明るくなって、僕に向かって飛び跳ねながら向かってくる……僕の手前辺りで、ボコっという嫌な音が鳴った、
「ひぃやあぁぁぁぁ~~~~」
瞬間に、カミの姿が目の前から消えてしまう。
「落とし穴って怖いね。まぁ僕のせいじゃあないんだけどさ」
カミの良い悲鳴を聞きながら、落ちていった穴を慎重に覗き込む。
「うぅ~、びっくりしたのじゃ」
穴はそこそこの深さだったけど、別に落下ダメージでHPが無くなる事はなかった。
「目標のモノは手に入れたし、今日は帰ろうか」
「うむ、帰る。もう疲れたのじゃ」
小さな子供を慰めながら、拠点に帰る。
==ほのぼのだね~
==ほっこりする絵だな
ちゃんとついて来ているか、僕が先導しながら何度か振り返る。
カミは一生懸命に僕のすぐ後ろをぴったりとくっ付きながらついて来ている。
僕が止まってカミを見ると、しゃがみながら子犬みたいに、僕を見上げてくる。
「なんじゃ、別に離れないから大丈夫じゃぞ」
「いや、子犬みたいで可愛いなと思っただけ」
「何を言っとるのだお主は?」
パシっと一発だけ殴られたが、痛くない。
恥ずかしさを隠す様に顔を背ける仕草はそのままキャラにも反映されているので、それが少しだけ可笑しくって、ちょっと笑ってしまった。
「むぅ~、何を笑っておるのだ」
「ごめんって、別に悪い意味じゃないからさ」
「意味が分からんぞ」
「気にしな~い、気にしな~い」
「そう言われたら逆に気になるぞ⁉」
==今回はてぇてェ回かな
==まぁ悠月ちゃんの気持ちは解るけどね
==向こうのコメントも可愛いで埋め尽くされてるよ
あんな姿を見たら、誰だって可愛いと思うだろう。
子犬っていうよりも、猫の方がしっくりくるかもしれない。
本質的には構って欲しい子犬でも、素直になれない子猫という皮って感じだろう。
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