閑話:エイプリルフールの悪夢
えっと、なんで僕は女子達によって閉じ込められているのだろうか、久しぶりの登校で友達と会えたからたと言っても、妙にテンションが高い気がする。
「紬ちゃん、私達ね……この日の為に全力で準備したんだ」
「そうなんだ……なにを準備したかは知らないんだけどさ。僕を解放してくれると嬉しいなって思うんだよね。なんでこんな事をしているのかな」
「今日は皆が嘘を言ってくるからね。私達は私達で嘘を本当に近付ける努力をしようっていう話し合いが行われたのよ」
「委員長さん、何時も真面目な貴方までなんで此処に居るんですかね⁉ 止めて下さい」
「ごめんね紬ちゃん、どうしても……もう一度みたいっていう思いが強くって」
「なにが⁉ 誰か助けてくださ~い。クラスの女子がこわいんですけど~」
本来なら女子に囲まれる状況って嬉しいモノだと思うんだけど、これは嬉しくないよ。なんか取りつかれてるみたいに、小さく笑ってる声とかも怖い。
女子の虐めは陰湿なモノだとニュースでやっていたけど、まさかそれじゃあ――、
「あぁ、別に紬ちゃんに危害を加える事は無いから安心して」
それを信じろと言う方が無理だという思うよ。
「ここに居る皆は紬『ちゃん』の事が大好きだから大丈夫よ。もしも、紬『ちゃん』を虐めようなんて人が居たら、きっとその人の方が大変な目にあっちゃうよ」
さっきから女の子達が僕を呼ぶ時に『ちゃん』の部分を強調して言うのが、物凄く気になるんだけど、なんか後ろの方に居る子達がカメラを手にして息が荒いし、怖い。
「はぁはぁ、紬が来るの遅いなって思ったら……ちょっと暴走し過ぎじゃないの⁉」
待ち合わせをしていて未希ちゃんが急いで駆け付けてくれたのか、息を切らしながら教室に入って来てくれた。
「未希ちゃん、なんか皆がおかしいんだけど⁉」
味方というか救世主が駆け付けてくれたと思って、未希の元に行こうとしたが、僕と彼女の間を塞ぐ様に女子達が壁の様に通せんぼをしてくる。
「未希ちゃんだってみたいでしょう。演劇部と家庭科部に映像研と裁縫部が作ったモノがあるんだけど……今日は嘘を何処まで本当に出来るかって皆で案を出し合ってね――」
「ちょっと未希ちゃん⁉ この人達の話を聞いちゃあ駄目だよ」
僕は一生懸命に飛び跳ねながら、遮られて向こう側に居る未希ちゃん語り掛けるが、肝心の未希ちゃんにも三人くらいに囲まれて、何かを耳打ちされているようだ。
目の前に居る子は何か手に持っているみたいだけど、何を見せられているんだろう。
彼女との話し合いは終わったのか、どうやら通して貰えるようだ。
急いでこの教室から出ないと、せっかく未希ちゃんが助けに来てくれたんだから。
「助かったよ未希ちゃん。皆の目が何だか血走ってる感じで怖くってさ」
「そうね。それじゃあ――」
未希ちゃんがちょっと俯きながら喋るから、表情が良く解らなかった。
僕の一歩前を歩いている。
教室から出ようとする僕を遮るようにしてドアに手を掛けて動かなくなってしまった。
「み、未希ちゃん?」
口角が上がっていき、僕をチラッとみた目には光が宿っていない感じに見えた。
開いていたはずのドアをビシャリと閉めて、他の子達が連携する様にドアを施錠する。
「ごめんなさい、コレは私には止められないみたい」
「止められないって言うか率先して手伝おうとしてないかな、駄目だよ未希ちゃんってば、目を覚ましてよ。何を聞かされたのさ」
さっき何かを見せていた子が僕に見せつける様に、りょてを軽く前にだす。
手に持っていたのは可愛らしい洋服だった。そして次々に女の子達が手元に洋服を持ち出して、僕の体に合わせるかのよに翳してくる。
「其々に考えた力作ですよ」
「ステージの用意は完成してます」
「ちゃんと着替える場所位は用意してあるから大丈夫ですよ。ただ、着るのには手間取るだろうからお手伝いしてあげるね」
こうなったら窓から逃げようと思って振り向くと、そこは女子達によって塞がれていた。
「外から見られない様に工夫はしてありますから、大丈夫よ……もちろん、逃亡防止も兼ねてるんだけど。流石に逃げようなんて思ってないよね」
「せっかく作ったんですよ。これは休み期間中の自由研究も含まれているのです」
椅子を用意されて、演劇部が使うドレッサーなんかも持ち込んでいる。
決して力尽くで逃げられなかったから、なんて貧弱な理由じゃない。僕は彼女達を助けると思って協力をしたに過ぎない。ごねていても時間ばかりが過ぎるから、仕方なかったんだ。
猫耳を付けられてポーズをしたり、メイド服を着せられて給仕している時の写真を撮られたり、アニメキャラの衣装を着せられて、そのポーズを撮られたりと――、忙しかった……問題なのは、この写真を未希ちゃんが焼き回しをして母さんに献上したことが一番の問題だ。
そのせいで、家族全員に女子達が本気を出した僕の女装姿を晒すはめになった。
ちなみに、新聞部も中に混じっていた為に、ちょっとした話題になる一面記事として学園で僕の女装姿が改めて知れ渡る事となる。
★☆★☆
「ふふ、だから注意するように手紙を書いたのに? まぁ読む暇を与えなかったのは、私だから同罪かな? でも、可愛い姿は密かに撮らせて貰えたし、私の好感度は上がるかも?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます