54話:初めてのコラボ配信⑥




 マグマにダイブした後には僕の警戒心は最高値まで高められ、誰一人として信用することなく警戒しながら付いて行く事にした。


「なんか必死に隠れながら付いて来る姿って、ちょっと萌えるわね」


「キャリが突発的にマグマの道に切り替えたからでしょう。昔の悪い癖はもう治ったのかと思ってたけど、全然じゃない、キャリがそっちに行ったら止める人が居ないでしょう」


「珍しいですね、ミスナ先輩が常識人になってる」

「いや~、普段はあんな性格にゃよ。必死にキャラ作りしてるのが健気でにゃ~」


「今では可愛げないほどに生意気になっちゃってるのよね~。まぁ一皮向けた感じでね、それはそれで好きなんだけど。歌だって初めの頃よりもすっごく上手くなってるし」


「ちょっと止めなさい⁉ 私のキャラが崩壊しちゃうでしょう⁉」


 あぁ、この先輩も弄られる側の人みたいだ。少なくとも僕一人に集中攻撃が来る事はなさそうで安心してしまった。ミスナ先輩には悪いけど、仲間が居てくれてうれしく思います。



 ==デビュー当時にキャリさんが帰ってきたな

 ==ちょっと昔の配信を後でみてみるかな

 ==意外だな、物凄く真面目な人だと思ってた



 奈々先輩にやり方をゆっくり聞いていると、カミが後ろの方でコソコソと動いているが気にしないで良いだろう。何をしても僕の勝ちは揺るがない。


「悠月から先にやってよいぞ。我はその後でやるからのう」

「はいはい、後の方が有利ってことだね」

「いえ、的は一応はランダム生成になってますよ」


 奈々先輩がすぐに補足で説明をしてくれる。


「だってさ、後だからって有利とは限らないらしいよ」

「別に、大丈夫だぞ」


 ディスプレイの向こうに座っているカミを覗き見ると、少しだけ目が泳いでいるのが分かる。その顔が少しだけ面白くってクスッと笑ってしまった。


「その割には顔に動揺している感じが出ちゃってるじゃん」



 ==目が泳いでるからな~

 ==いったい何を考えてたんだろうね~



 視聴者にもバレているって事は、キャラの方でも目がかなり動いていたんだろう。


「それじゃあお先にやらせてもらうよ」


 スイッチを押すと、無限弓が飛び出して勝手に装備される。これも自分達で造ったんだよね、本当に凄いな。他にも色々なギミックを作ってるんだろうな。


 秒数が画面に出てきて、すぐにカウントダウンが始まるので、弓を構えて待つ。

 一枚、二枚と割っていく。


 初めの方は一個ずつで簡単だった。八枚辺りから的が二つ三つと連続で出始めてくる。


 十五枚目で、少し離れた位置から同時に飛び出してくる的が出始めた。そこから連続だったり、こちらのタイミングを外してくるものもあるが、問題なく打ち抜く。


 二十五枚目から一気に難易度が跳ね上がって、同時で尚且つ連続に飛び出す的には流石に付いて行けずに、二枚を見逃してしまう。


 そして三十枚目から、ラスト五枚が飛び出してきて、二つは打ち抜けたけれど、動きが不規則過ぎて、他の的は全て外してしまう。


「なに、最後の動き……あんなの当たらないよ」

「ですよね~」

「全部で三十五点だから、三十点にゃ~。初見で良くまぁ高得点を叩き出したにゃ」


 コラボが決まってやるゲームが決まってから、すぐに予習復習はしてきたからね。下手なミスをしなければ、だいたいこんなモノだろう。


「これだから、真面目に練習しているヤツは……少しは手加減とかして欲しかったのう」

「ふふん、罰ゲームがありそうな事に手を抜くアホはいないでしょう」



 ==ドヤ顔ですなぁ~

 ==さすがお姉様です、憧れる

 ==さっきまで泣き顔と警戒MAXの小動物だったけどな

 ==それもまたよし!



「兄妹たちはどっちの味方なのさ」



 ==今日もジト目を頂きました

 ==ご褒美です

 ==どちらかと言えば……カミちゃん派かな

 ==もちろんお姉様です……罰ゲームを受けているお姉様も見てみたいけど



 全然、僕の味方っていう発言が無いんですけど。泣くぞ! 泣いちゃうぞ僕だって。


「では次は我の番じゃの、お願いするぞ!」

「いや、スイッチは自分で押さないとダメでしょう。誰にお願いしてるのさ」

「わかっておる、後ろから我の注意を削ごうとしても無駄じゃからな」

「はいはい、黙ってますよ」


 カミもすぐに弓を構えて何度か試し打ちをしてから、すぐに指定された位置に立つ。

 初めは順調に的に当てていったが、段々と危なっかしくなっていく。


 これなら楽勝だと高を括っていると、二十枚目辺りから的が急に射抜かれたように見えた。いや、実際に殆ど同時に打ち抜かれている様に見える。


「ちょっと⁉ え、どうなってるの⁉」

「わ、わかんないです」

「あ~、アレだにゃ」


 少し離れた位置からカエデ先輩とソフィア先輩がカミを手助けするように的を撃ちぬいているのだ。遠くから撃っている分の難易度は上がっているだろう。


 でも的目掛けて確実に射抜いていくのが不思議でしょうがない。


「あの人達はずっと此処で遊んでた配信をしてましたからね、パーフェクト取るまで寝ない配信とか、だから多分ですが、ある程度の出現パターンは掴んでいるのではないかと」


 キャリ先輩が冷静に説明してくれる。

 結局、カミは二人の先輩の手を借りてパーフェクトを取ってしまった。


「こんなんアリ⁉」


「手を借りては駄目とは言っておらんかったからな」


 可愛らしくドヤ顔で僕を見下してくるカミを絶対に今度は解らせてやる。


「お、覚えてろ~」


 僕は涙目でカミの事を指差しながら叫んだ。


「ふふ~ん、我の勝ちは揺るがぬ。次は怪談話系のげーむでもやるとしようのう」





☆★☆★☆===========================☆★☆★☆



いや、違うんですよ。ちょっとピンクのま~るい小悪魔に取りつかれてね、ポンと忘れてた訳じゃあ無くってね……もうすぐ100%だからって、集中してたら時間が過ぎてたとかじゃあないんです……。


 ………………申し訳ございませんでした(土下座

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