53話:初めてのコラボ配信⑤




 線路が敷かれた道を大まかに見てみると、確かに変な仕掛けはなさそうなので先輩達を先に乗り込んでから、僕も最後尾から付いていく事にした。



 ==物凄い警戒してるよw

 ==楽しいから大丈夫だよお姉様

 ==やっぱ行動が可愛いんだよな

 ==子猫かな



 なんと言われようとも、僕はこれ以上の恥ずかしい思いはしたくないもんね。

 それに、この先輩達は、何と言うか気を抜いた瞬間に悪戯をしてきそうだ。


 特にキャリ先輩なんて真面目な感じだけど、気を許したり気に入った相手には悪戯をしてくるんじゃないかって思う。どことなく学園に居る北斗のお姉さんを思いだすんだよね。


 意外と悪戯好きで、周囲からは真面目で頼れる先輩と頼られている。


 ゴトゴトと音を鳴らしながらトロッコは進んで行く。所々に加速する装置が敷かれていて勝手に進んで行ってくれる。


「右手に見えますのが私達が作っていた建物ですね、左……は、見なくて良いです。と言うよりも無視してもらって構いませんので気にしないで下さいね」


「これだから、男の人って嫌い……」

「奈々は男性が苦手にゃだけだよね。むしろミスナ先輩と同じ――」

「フタバちゃん、何を言おうとしてるのかな?」

「……圧が凄いにゃ」



 ==ミスナに毒されたな~、あれほど関わると腐食していくと言ったのにな

 ==そうか、奈々ちゃんも手遅れになっちまったか

 ==これは……今日は女の子で来て正解だったか?



「なんか知らないけど、姉弟達が怖い会話をしてるんだけど」

「もう、気にしちゃダメだよ。仲良くしよう、ね」


 声だけななのに、物凄く間近まで迫ってきて壁ドンでもされている気分になって来るんだけど気のせいなのだろうか、ただ分かるのは物凄く必死に(逃さない様に)友達になりたいんだなっていう事は、良く解ったので頷く感じで返事をする。


〈こらこら、歓迎ムードだろう⁉ 無視するのは酷くないかな、俺達もお祝いしたいんだよ。邪魔しないからさ、ねぇ混ぜてくれって〉


〈そうだ~、混ぜてよ~〉


「ちょっと団長~、しっかりと部下の手綱くらいは握っててもらわないと困りますよ」

「今はウチ等の時間なんだから、男子は今度だよ……絡めるかは知らないけどね」


 キャリ先輩とミスナ先輩が揶揄う様に言った直後に、下の方で跳ねている二人が一瞬にして射抜かれて、高い位置に居たせいで落下で死亡してしまった。


〈ごめんね~、うちのバカ共がお邪魔しちゃってさ~。まったく、悠月ちゃんとカミちゃんとのコラボが中止や延期になっちゃったらどうしてくれるのよ〉


〈そうそう、次の機会に遊べるんだから今は大人しくしててよね〉


 遠くから射抜いたのは、前にコメントで絡んできた先輩達だ。確か、一人はカエデ先輩って人とソフィア先輩という人だった気がする。本社設立時の初期メンバーである大先輩だ。基本的には自由人でトラブルメーカーな感じだけ、裏ではしっかりとした常識人らしい。


 そう見せているだけ、というのもあるけどね。


〈話が違うぞ⁉〉


 というグルド先輩とカブト先輩のブロックラフト内のコメントが、カエデ先輩達の適当なコメントで一気に流れていってしまい、一瞬で見えなくなった。


〈コメント欄には何もなかった、良いね〉

〈何を言うつもりだったんだろうね、ソフィアは分かりません〉


 射抜かれた二人は、リスポーンした位置で射抜かれていて、すぐに追い出されている。


〈おいこら、リスキルは止めてください。悪かったから帰りますから~〉

〈すみませんでした~〉


 二人の先輩達がログアウトしたという情報が流れてくる。


「流石はカエデ先輩達だね。よくあの距離から当てられるな~」

「後でお二人はマネちゃん達から怒られてもらいましょうね」

「面白い二人だのう。それで遠くから撃っていた道具は何なのだ?」

「アレは弓矢、後で射的場に連れてってあげるから」

「おぉ楽しみだのう。我が一番にパーフェクトを取るのじゃ」

「カミの腕前だと、無理じゃないかな」


 僕がボソッと言うと、少しだけ頬を膨らませながら睨んできた。


「では勝負でもするか? 負けた方が罰ゲームじゃぞ」

「別に良いよ、カミには負けないもんね」


 まだまだ適当に撃つ事しか出来ないカミに負ける事はないだろう。


 それにしても、本当に色々と作ったんだなぁと改めて周りの景色を見回しながら鑑賞に浸っていると、僕のすぐ目の前を走っていたキャリ先輩の方から、カチャリという音が聞こえた気がした。


「……カチャ? え、先輩?」

「えへ、ゴメンね。ちょっと間違えて線路の方向を弄っちゃった」


 皆と離れて行ってしまう。

 一番後ろで少しはなれた位置を走っていた僕だけが、違う路線を走っていく。


「み、皆と逸れてるんですけど⁉ キャリ先輩はいったい何をしたんですかね⁉」


 コトコトと加速装置でどんどん上の方まで運ばれていく。


「た、高いんですけど‼」

「アレはアレで楽しそうだのう……その先は地獄じゃがな」


 カミが冷静に僕の走る先を眺めているらしく、ハッとして僕も先を見据える。


「先がマグマじゃないですか⁉」

「久しぶりに見たのう、キャリちゃんの悪戯」

「最近は可愛くない後輩になっちゃって、全然引っ掛かってくれないんだもん」



 ==あ~、次は悠月ちゃんが目を付けられたか

 ==ご愁傷さまです

 ==お姉様達の絡み……これはこれで良いかも



「全然良くないよ⁉」






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