51話:初めてのコラボ配信③




 道や建物なんかも自分達で造りながら、街っぽい感じにして村人なんかもちゃんといる。ただ近付くと少し五月蠅いけどね。


 街を守る為か、ちゃんと城壁っぽい感じのモノまで作っているのだから、此処まで作った人の愛を感じる。暗くなる過ぎない様にランタンやら松明なんかの灯りが点在している。


「これが全部ブロックで出来ていおるのか? 凄いのう」

「遠くに見えるのは、先輩達のキャラ絵があるのは何でですか?」

「個々で作ってる場所って所かしらね」

「勿論、合作もありますよ」


「自分の土地って感じかな、個々はキャリの場所だからさ、本当にしっかり作り込んでるんだよね。街並みも綺麗だししっかり整備されてる感じでさ」


「いま私の事は良いから、早く奈々の場所まで行くわよ。観光案内なら後でも出来るよ」


 ちょっと恥ずかしそうにしながら、奈々先輩の方へと向かうように言う。

 ミスナ先輩を何度か素手で叩きながら、そそくさと奈々先輩の方へと向かっていく。

 整地された場所には、大きな僕とカミのキャラクターが絵描かれている。


「これは……凄いのう」

「時間かかったんじゃないですか?」


 歓迎の言葉も添えてある。考えられているなって思うのは、僕等のスタート位置からだと丁度見えない様に作られていた事だ。


 キャリ先輩の建設物が視界を遮ってくれていたので、初めてログインした時に僕等からは絶対に見えない位置に作ってあったのだ。


「それじゃあ歓迎ムードの中で恐縮ですが、お二人にはちょっとしたゲームをして欲しいにゃ。正解を選べば特に問題は無いはずだし、酷い目にも合わないにゃいよ」


 皆と一緒について来ていたいと思っていたら、ひょっこりと僕等の絵の後ろから出てきて、真っ四角の建物を指す様に何度も腕を伸ばす。


「フタバちゃん、何時の間にあんなものを……」


「ふふ、奈々が頑張っている間にウチも作ったんだにゃ~。仕掛けの準備もバッチリしてあるから大丈夫にゃよ。犠牲になったのはキッグ団長だけどね」


「あの人まで制作に関わっているんですか、全く何をコソコソとしているかと思えば」



 ==という事は、アレだな

 ==あのトラップか……はぁ、またヤツを追炊き上げしにいかないとな



 視聴者達にとっては何時もの事らしく、アレという言葉で繋がっている。

 よく皆から燃やされているって春社長さんから聞いていたけど、何をやってそんなに燃やされているんだろう。



 ==悠月ちゃんは気にしちゃあいけない

 ==そうそう、あの人には気を許しちゃあいけない

 ==むしろ近付かないで良いレベルだからね



「物凄い言われ方をしてるんですね、団長さん」


 真っ四角の建物まで来たら意外と深くまで掘ってあったらしく、下の方には鉄の扉と水で囲まれた部屋が二つある。


「それでは、視聴者の諸君も聞きたかったであろう質問を幾つかするにゃ、そこで、〇か×の看板が立っているので、その部屋の中に入ってもらいま~す」


 フタバ先輩が近くにある扉を開きて見せるが、中には決して入らない。


「ささ、悠月ちゃんはこの中に入って~」

「えっと、入れば良いんですね」


 フタバ先輩に促されるままに、案内された部屋に入っていく。


「カミちゃんはこっちの部屋でボタン操作をして貰うから、悠月ちゃんが本当の事を言っているかで判断して、嘘だったら赤いボタン、本当だったら青いボタンを押してね」



 ==いえ~い、待ってました~

 ==前々から質問の募集をしてたもんな



「僕の知らない所で色々と動いてたんですね」


「えぇ、まぁ私達は知ってたけどね。今後の教訓として覚えておくと良いわ、繋がりのある人とコラボが確定している時にはフィットの確認をするって」


「これは、今は押さぬ方が良いのか?」


「まだ待ってね。それでは先ずはこちらか、え~っと「悠月ちゃんは結局、男ですか女ですか?」という質問ですね。さぁ悠月ちゃん、どっちですかにゃ? マルが男、罰が女ね」


 なんだそんな事か……そんなのは決まっている、僕は男の子です。

 迷わずに〇部屋に入っていく。


「……本当にそっちで良いのかのう?」

「なにが? 僕は最初から男の子ですと言ってるもんね」


 プロフィールにも男とは書いてある……その後に余計な一言が付いていた気がしたが、別にこの質問には関係ないだろう。


「それでは、お願いしま~す。カミちゃん、正解はどっちにゃ?」

「ふむ、勿論こっちじゃろう」


 カチカチと何度か連打してカミが押したボタンは、嘘であった。

 すぐにプシューという音が足元から聞こえてくる。


「ほぇ⁉ なに、なんでよ!」


 カミに向かって攻撃ボタンを連打してパンチを繰り出すがが、ポスポスと空を切って暴れている様にしか、相手には見えないだろう。


「だって、女の子ではないか(今は女性じゃろう現実でものう)、嘘はいかんのう」

「ちがっ! だってコレはカミが――」


 僕が最後まで言う前に、足元で大爆発が起きて、空高く飛ばされていく。


「ちょっと~、これ怖いんですけど~」


 高所から落ちて死亡しましたというテロップが流れる。

 すぐにリスポーンしますかという選択肢が出て来た。


「あ、リスポーン地点を設置しわすれてたにゃ」



 ==というか、やっぱり女の子なんだね悠月ちゃん

 ==今が女の子だからって事じゃないのか?

 ==でも高く上がった時の悲鳴は、女の子だったよ



「冷静だね皆はさ⁉ 僕の事を心配してくれても良くないかな!」


 思わずリスナー達にツッコミを入れてしまった。



 ==さ~せん

 ==可愛かったよ

 ==男の娘でも悲鳴はあげるぞ

 ==ショタっぽくもあったよ

 ==う~ん、まだわからんな





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