48話:久しぶりの自由時間とお友達④




 思いっきり遊んで帰って来てみると、なんかテレビや動画で見た主人の帰りを待つペットみたいに、玄関前で僕を待ちわびた様にちょこんと座っているカミが居た。


「え~っと、ただいま」

「遅いではないか、我を待たせるとは良い度胸をしておるのう」

「今日は父さん達に遊んでもらってるんじゃないの?」

「うむ、遊んでいたがのう……なんか違うのじゃ」


 カミの言っている事がいまいちピンとこない。


「そもそも、遊びに行くならば我を連れて行ってくれても良いではないか」


「気兼ねなく遊べないだろうが、少なくとも何かきっかけで知り合いって言うのなら、連れて行ってあげられるけどな、流石に無理だろう。しかも性別も違うし」


「むぅ~、ではまたしばらくは、我と遊ぶのだぞ。お主が居ないと楽しく遊べんのだ」


 父さん達は僕よりも遊ぶ事は上手だと思うんだけどな、カミは僕と遊んでいる方が楽しいみたいだから、そう言われては悪い気はしない。


「それよりも、そのげーむせんたーとやらもだ、我は行った事がないぞ」


「そりゃあ前に出掛けた時は、服や生活用品の買い出しだったからね。遊びに行く場所には寄ってないんだしょうがないでしょう」


「今度で良い、我も連れて行ってもらうからな」

「ふふ、別に良いよ。今度は一緒に行こうな」

「絶対じゃぞ、約束だからな」


 そこまで念を押さなくても連れて行ってあげるのに、カミは心配なのか指切りをしようと小指を絡めて、しっかりとした約束をさせられてしまった。


「お昼はちゃんと食べ……はぁ、なるほどね」

「お腹すいたのじゃ」

「待っててね、ちょっと片付けたら簡単に食べられるものをすぐに用意してあげるから」


 少しは家事スキルも上達したんじゃないかと思っていた僕が阿呆だったようだ。


 ただ、レンジで温めるだけで良かったもの、なぜオーブンに突っ込んだ様な跡があり、流しにはカップ焼きそばでも作ろうとしたのだろう、痕跡もある。


「お湯切りに失敗したんだね。努力は認めよう」

「カップ麺とやらは美味しかったぞ」

「そうだね、簡単だもんね。でもそんなんばっかり食べてたら体に悪いからダメ」

「わ、わかったが、偶には食べたいのう」


「別に偶になら良いんだよ? 父さんは後でオーブンを磨いてよね。母さんは電子ポットでお湯を沸かしておいてよ。少し掃除するんだから、じゃないとご飯抜きだからね」


 リビングの方に隠れていた両親に声を掛けると、観念して頭を下げながら出て来た。


 相変わらず家事は駄目ダメなんだから、まぁ家電がお釈迦にならなかっただけでも、良しとしておこう、カミに良い所を見せようと頑張ったみたいだしね。


 料理が出来るスペースをサッと作ってから、何を作ろうとしたのか分からない残り物の中から、使えそうな材料を選んで、余分な部分と使えない場所は全て切り落として再利用しながら細かく刻んで、ウィンナーにスライスハムも適度に切り分ける。


 後は味を調えながら、前に余って冷凍しておいたご飯を解凍して鍋の中で全部を均等に混ぜる様に溶き卵とあえながらチャーハンを作る。


「あのゴミみたいな残飯から、このような料理になるとはのう」

「ほら、父さん達も食べちゃってよ。どうせお腹が空いてるんでしょう」


 嬉し泣きしながら、僕の頭を逐一撫でてくる。


 今度はカミにレンジの使い方を教えて置けば、大丈夫かな。両親たち程に家事スキルが壊滅しているとは思えないし、大丈夫だよね。


「カミ、今度さ、料理の温め方を教えておくからね」

「うむ、頼むのじゃ」


 父さんは機械に強いはずなのに、レンジとオーブンを間違えて使うのはどうなのだろう。


「そんなジト目で見ないでくれ、今日はちょっとドジっただけでさ、別に温めるならオーブンでやった方が焼き目が付いて美味しいかなって思って使っただけだったんだ」


「お願いだからさ、勝手なアレンジを増やそうとして余計な失敗はしないで下さい。せめて使い方をちゃんと覚えてから使ってね」


「はい、すみませんでした」


 なんでカップ麺に生野菜をただ突っ込もうとしたりするのか、未だに僕は理解出来ない。


 せめて茹でたりとか、ちょっとは工夫をして欲しい。包丁は……あんまり怖いから使わないでほしいけどね、余計な怪我をしそうで恐ろしい。




   ★☆★☆【森丘北斗】★☆★☆




「ただいま~」

「あら、お帰りなさい」

「げっ姉貴⁉ なんでこっちに居んの!」

「別宅に今友達が来ているから、お母さん達にご飯の話をしようと思ってね」

「それなら、俺に声を掛けに来なくても良いんじゃないのか?」

「ダメよ、北斗からは今日の事を聞きたかったんだから」

「今日? 別に普通にブラついてただけだぜ」

「目を逸らしながら言われてもね~、紬君と会ってたわよね愚弟?」

「見てたのか」

「見ちゃったのよ」

「今日はカラオケに行ってないから、歌は録音とかしてねぇよ」

「そうなの、残念だわ……でも、あっちの方角はゲームセンターよね」

「ノーコメントで」

「あらあら、ダメよ。きっちり全部話しなさい」

「ダチが来てんだろうが⁉」


「簡潔に、あった出来事で私の知りたいような情報をピックアップして話せば良いでしょう、何年、同じことを言ってると思ってるのかしらね」


「わ、わかった。話すから勘弁してくれ――――」





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