47話:久しぶりの自由時間とお友達③




 ダンスのゲームは笑われなかった……けど、僕は今すぐにでも穴があったら飛び込みたい衝動に駆られている。とにかく、この場から逃げ出したくて堪らない。


「早く出よう、別の場所に行こう、な」


 北斗の服と背後からチョイチョイと引っ張って、とにかく移動しようと促す。


「くくっ、あぁそうだな。それじゃあオレらはコレで失礼するんで」

「え~行っちゃうの。もうちょっとお話したかったな」

「ほら、ダメでしょう。ごめんねウチの友達が妙な絡み方をちゃってさ」


 彼女達が悪いという訳じゃあないんだけれど、僕のダンスゲームの動きを見て萌えてしまったそうだ。彼女の心を震わせる何かがあったらしい、僕は一生懸命にゲームをクリアーしようと頑張っていただけなので、さっぱりわからない。


 ここに北斗が居なかったら、今頃は赤面してパニックになっていたかもしれない。


 僕は体も背も小さい方だから、北斗の後ろに隠れるとすっぽりと全身を隠せるのは便利だとは思うけど、やっぱり身長はもっと大きくなりたいし、体付きだって男らしくなりたい。


「可愛い人達だったじゃないかよ。良いのかよ、せっかくモテモテになれるチャンスを潰しちまってよ。もったいねぇ~な、姉貴とは真逆の可愛さって言うのは貴重だぞ」


「分かってて揶揄わないでよね。そういう事を言ってるからモテなんだよ」

「へいへい、わるぅござんした。次は何をやってくんだ?」

「落ち着くまでは、アレでもやってよう」


 とにかく一人で落ち着きたいけど、まだゲームはしたいので卵みたいなコックピット席がある、少し大型なゲームで戦闘機に乗ったり、ロボットに乗って戦えるモノを指差す。


「しょうがねぇな。一回だけだぞ、アレって時間かかるし一回高いんだから」


 五百円で三戦出来るが、一試合の時間が五分から十分は掛かる。


 画面も百八十度の立体モニターなので、酔いやすい人だとすぐにダウンしてしまう。北斗は強い方だけど、やれて三戦が限界だって言っていた。


「もう絶対にダンスなんてやらない」

「別に笑われるダンスをしてたって訳じゃないんだから良いじゃん」

「可愛い可愛いと連呼される僕の身にもなってよね」

「あのダンスをみて可愛いと言わない人は居ないだろうがな、痛って⁉」


 ちょっとムカついたから、脇腹辺りを思いっきり抓ってやった。


「大体さ、何がそんなに可愛く見えたんだよ?」


「そうだな、先ずはパタパタさせてる足に、細かな動きが小動物っぽい仕草に見えて、人が見てると解ってからのお前の動きが、頑張りながらも一生懸命踊ってる感じだからじゃないかな。後はジャンプの瞬間だったり、ポージングが可愛らしい感じだった」


 自分の中ではカッコ良く決めたつもりだったのに、なんで可愛いと言われるんだ。


「あの子達さ、初めの方が絶対に俺とお前がカップルに見えたんじゃねぇかな」

「何でそうなるんだよ⁉」

「後姿がな~、もう女の子みたいなんよ」

「殴って良い?」


「まぁ待てって、ちゃんとよく見たら男だって気付いてくれただろう(あのテンションが高かった方の子は、絶対に別の考えをしていた可能性が高いがな……(止めてくれよ、最近の紬は妙に女の子みたいな仕草が増えてきてるんだから)変な意識はさせないで貰いたい」


 妙な間があった時に、半目で僕の事をジッと見て来たけど、最後に思いっきり大きな溜息を吐きだしながら、物凄く失礼な事を言われた気分なんだど。


「今日はどっちをやるんだ? 確か内蔵されてるゲームって二つ三つあったよな」


「北斗の事を考えてやるんだら、ロボットの方じゃないかな? 戦闘機のヤツは酔っちゃうでしょう。前にやった時は強がってたみたいだけどさ」


「お前が異常なんじゃ、アクロバット飛行しながら敵の後ろに着くなんざ芸当をしといて、何で酔わないんだよ。バレルロールだのバーティカルクライムロールだのをしやがってからに、後ろを追うオレの身にもなってみろってんだ」


「しょうがないじゃん、高難易度の協力戦は僕等だけじゃなくって、世界中の人との協力プレイだから足を引っ張る訳にもいかないし」


「せめて対人戦でやってくれや、殆どのヤツはふるい落とされるから、そこを狙って撃ち落としてやるっての。NPC相手じゃあお前に付いて行くのが逆に難しいって」


 僕はゲームで酔った事がないから、良く解らない感覚なんだよね。

 クルクルと回ってるのは、僕的に楽しいから何時もやってしまうプレイの一つなのだ。


「自由に飛んでる感じで楽しいんだけどな」

「可愛く拗ねるな。……まったくよ、それじゃあガン●ムで良いな」

「頑張って連撃が出来るようになってね」

「言ってろ、芋スナになってたら敵を引き連れて行って忙しくしてやるよ」

「僕は基本的に動きながらスナイプするから、芋虫にはならないよ~だ」

「凸スナはゲームが違くないか?」

「動かないなんて詰まんないじゃん、移動しながら狙撃してる方が楽しいよ?」

「ってかあま、機体に乗るまでなに使うかは味方に合わせるしかないんだがな」

「中距離は貰うね、近距離って疲れるからさ」

「楽をしようとするんじゃあねぇよ」


 そんな感じで久しぶりの男友達とじゃれ合いながらの時間は結構楽しいモノになった。





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