45話:久しぶりの自由時間とお友達





 今日は久々に友達と遊べる日になった。


 最近は何時もカミとばっかり遊んでたし、配信の準備やゲームの予習をしていた。初見プレイのカミには楽しんで欲しいので、昔に全クリした記憶を引っ張り出しながら、動きの確認と並行して、配信でも問題なく動くかのテストなんかもしていると、時間はあっという間に溶けていき、友達に合っている時間がなかった。


 慣れていないというのもあったけど、最近は少し時間が取れる位にはなった。


「やぁきみ一人かい?」


 待ち合わせの時間は合ってると思うんだけどな。


 家の中でもキャラと同じ服装を母さんに懇願されて、仕方なく可愛らしい服を自ら着なければならないという事もあった。


 今日は男の体で、好き勝手な服で出かけられるんだから、思いっきり羽を伸ばそう。


「聞いてるか? 君だよ~。ちょっとボーイッシュなキ・ミ」


 それにしても遅いな、アイツが遅刻とは珍しい。

 これは後で何かしらを奢ってもらうかな。


「気付いてくれっての」


 急に肩を触られてビックリした。


「えっと? 何か?」

「本当に気付いてなかったんだね。無視されてるのかとも思ったけど違って安心だ」


 なんか妙にチャラチャラした人だな。


 僕に声を掛ける意味も分からない、知り合いという訳でもいだろうし。僕が覚えてないだけで、学園に居る人なのかな。


「いや、そんな可愛らしく首を傾げないでくれないかい。さっきから暇そうに立ってるからさ、俺と少しお茶でもしないかなって思ってね」


「いえ、待ち合わせをしてるので結構です」


 確かに何にもせず、ただ待ってるの暇だけど。良く解らない人とお茶に行こうなんて普通は思わないでしょう、そもそも誰だよ。


「つれないな~、可愛い顔をしていてもやっぱり気は強めみたいだね」


 さっきから物凄く気持ち悪く絡んでくる人だな。


「あの、くっ付いてこないでもらえますかね」

「そんなこと言わないでさ~、少しお茶に付き合ってくれるだけで良いんだよ」

「だから、待ち合わせをしてるって言ってるじゃないですか」


 人の話を聞かない人だな。


「良いじゃん、キミを待ちぼうけさせているヤツなんてほっといてさ、俺と行こうぜ」


 許可もなく、勝手に人の手を握って来た。


「放してくださいよ」

「はぁ、良いから来いよ」


 何で逆にキレてんだろう。怒りたちのは僕のほうなんですけど。


「そうそう、さっさとその手を離した方が身のためですよ」

「警察さ~ん、あの人です。友達に絡んで無理やり連れて行こうとしてるんですよ」


 誰かは知らないけれど、二人の女性と警官っぽい格好の人が僕を助けに来てくれた。

 それを見た途端に、男は僕の手首を離して逃げ出して行った。


 毎日鍛えていそうな警察は少し離れた位置で男を確保し、近場にある交番に連行していってくれた。


「コレでもう大丈夫だね」


 ちょっと人懐っこい猫みたいな感じの、釣り目で身軽そうな可愛らしいお姉さんが心配そうにしながらも、ほっとした表情で頭を撫でてくれる。


「助けて頂いてありがとうございます」

「ああいうのは駄目だね、断られたんなら素直に引かないと」


 逆にクールでスタイルの良いお姉さんが、捕まった男の方を睨みつけながら見ている。


「あの人は何で僕に声を掛けたんですかね?」

「そりゃあ君が可愛いからでしょう?」

「君は……すまないパッと見た感じだと女の子に見えていたんだが、男性だったのか」

「そんなに分かりにくいですかね」


 自分の恰好を見下ろして、確認するがそこまで変な格好はしていない……と、思う。


「仕草も女の子っぽいよ、きみ」

「あの男が見間違えるのも無理ないかもしれないな」


 二人とも僕から目を背けながら、何てことを言うんだろうか、立派な男だよ。


「あの人って僕が女の子だと思って声かけてたんですか⁉」


 僕に声を掛けていたのはナンパしたからだったなんて、全然気付かなかった。


 最近になってカミや母さんが僕に女性のイロハを教え込んで来るからいけないんだよ。体も女性になったりしてたからだ、きっとそうに違いない。


「気が付いてなかったのか? 何というか、天然な子だね。君って」

「生のショタだよ……はぁはぁ、ちょっと感動――」

「落ち着け馬鹿者。発情するなら後でにしてよね」


 猫というよりもライオンに近いかもしれない。


「お~い、遅れてわりぃ……ってだれ、この人達⁉」

「北斗が遅れたせいで、僕がナンパに捉まっちゃってね。それを助けてくれた人達」


 むしろ、この二人の方がナンパされそうだと思う、どちらも美人さんだ。


「はっ、ならばお返しに何か奢らねばならないな」

「なんで北斗がナンパしだすのさ。お礼はしたいと思うけどね」

「はは、気にしなくて良いよ。それに私達も待ち合わせをしてる所だからね」

「それは残念ですね。またご縁があれば何かしらのお返しを」


 北斗は紳士の礼でお辞儀しながら、僕とゲームセンターを目指す。


「ありがとうございました。縁がありましたら今度お礼をさせてくださいね」

「ふふ~、そうだね。会えたらよろしくね~」




   ★☆★☆




「潔い男だったな」

「可愛い男の子だったね~」

「あら貴方達もう着いてたのね?」

「あ、来たね。時間通りじゃん」

「何かあったの?」

「なに、ちょっと面白い出会いがあっただけ」


「ふ~んそう……って、あら紬君と北斗じゃない。出かけるって言ってたけど紬君と遊ぶ予定だったのね。教えといてくれれば良いのに」


「舞の知り合いなの⁉」

「小さな子は後輩でね、紬君っていうのよ。あっち隣は私の弟よ」

「なるほど、少し似ている所もあるな」


「話は家で聞かせてもらうわね。何かあったっぽいし、今日は配信小屋の方で良いわよね。コラボについての話し合いもしないといけないから」


「あぁ構わないよ」

「こんど紹介してもらお~」





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