37話【配信】:垣間見えた、ダーク部分
==さてさて、今日はどんな伝説が生まれるかな
==前の戦いは見応えがあったね~
==別の意味でも見応えは十分でした
==ちょっと男子~、変な目でお姉様を見ないで頂戴よ
==お前らだって違う目で見てたヤツが多いだろうが
何人かのツッコミで視線を逸らせる顔文字が大量に流れていった。
「僕らの放送って変態さん達しか居ないの⁉ こっち見てよね」
「悠月よ、それはそれで変な意味に聞こえるから止めた方が良いと思うぞ」
確かにカミの言う通りだ、思わず叫んでしまったが勢いでツッコミを入れるのは止めた方が良いとすぐに思い知ってしまった。
大量の顔文字が、今度は画面を凝視するような感じのモノでコメント欄が埋め尽くされてしまった。コレだけならぶと逆に不気味で怖すぎる。
「ごめんなさい、やっぱり見ないで」
「だから悠月⁉ 言い方と恥じらいの表情で言うな阿呆。こっちが恥ずかしくなってくる」
「いやだってさ、急に皆がこっちを向くような顔文字ばっかり打って来るんだ。流石に凝視される感じで見られてると思うちゃうと恥ずかしくなっちゃうじゃん」
「基本的に主の発言によるモノで、そうなったのではないかのう」
「はい、反省してます」
僕を責めるように見てくる目に耐えられずに、素直に謝った。実際に僕の不用意な発言から、皆が一丸となって僕を見て来たんだし、今回はカミは全然悪くない。
「でもさ、皆さん仲良過ぎない? なんでそんな連携みたいな事をして全員で同じ顔文字をコメントで打ち込んで来るの⁉ そっちの方が驚きなんだけど」
まぁ中には面白半分で、全く別のコメントをしている人達も何人かは居たけれど、コメントをしてくれているほぼ全員が同じ感じの顔文字で僕を見ていると強調してきたのは、素直に凄い事なんじゃないかって思う。
==なんかいきなり物凄い変な統率力をみせつけられたんだが
==なにこれ怖い
「ほら見て、初見さんが驚いてるから」
「彼等もそのうちに染められていくのだのう」
「何をしみじみ言ってるのかな。というかね、今ってそこまでの余裕はないの⁉ 分かってる? 今結構にピンチだからね。カミが無駄に回復アイテムを取っちゃうから回復出来ないし、今回はカミも一緒に居るから此処の敵を全滅しないと出られないからね」
「うむ、分かってはおるが、こ奴強すぎんか? 何なのだ、あの攻撃範囲は、無駄に広いし、炎の攻撃には余波みたいなものがあって、燃えている部分なんてだめーじ判定とかいうのだったか、それがあるのは卑怯ではないかのう」
まぁ敵の英傑は今作でもトップ3に入る強さだからね。初心者からしたら辛い戦いを強いられる事になるんだけど、本来なら此処までの苦戦はしない。
「僕等が会話に夢中になり過ぎたっていうのがあるね。イベントをよく聞いてなかったでしょう。本当ならもっと弱った状態で戦う筈の敵だからね」
「う~む、勝てるかのう? 我では相性が悪くないか?」
そういうステージで、苦手キャラが出てくる分の救済処置があるんだよ。全部無視をしてしまったせいで、今の状態に陥ってるんだけどさ。
「それじゃあね、僕が敵を引き付けてるから、ガードしながら必殺技を打つボタンを長押ししてると、必殺ゲージが溜まっていくから、溜まったら撃ちに来てくれる。
「なるほど、了解したのじゃ」
「溜める時は、右端でジャンプすると乗れる場所があるでしょう。そこなら安全だから」
「ふむ、此処じゃな」
カミはすぐさま言われた通りの場所まで行って、必殺ゲージを溜め始めた。
==けど悠月ちゃんは一人で相手に出来るのかね?
==強キャラだし、他の雑兵も居るからかなり辛いんじゃないの?
「まぁ、人が使ってるなら勝てる余地はないんですけどね、所詮はコンピューターですから、古めのゲームっていうのもあってAIはまだまだ弱いんですよ」
だから、攻撃も分かり易いモノしか振ってこない。
強攻撃の連打だって人がやっていれば、ワザと遅らせたりテンポをズラす行動をしてきたり、嫌な行動ばっかりしてくるんだけど、このゲームのNPCにはそこまでの知能は無い。
「ちなみにですね、このキャラの上切り上げと下段突きにはガードをしてしまうと、次の攻撃で必ずダメージを貰っちゃうので合わせるならパリィです。モーションが分かり易いですから、簡単に出来ますよ」
==はっ? いやいや、何言ってん
==……コツは?
==本当にパリィしてるよ
「コツですか? 下段は両手で地面の方に向かって武器を下げた時に一泊置いて、切り上げの時なんかは左足を踏み出す時に出る砂塵が舞うタイミングを見て押せば、簡単に成功させることが出来ますよっと。ほらね」
==ほらね、じゃねぇよ
==全然分からん
==なるほど、今度試してみる
==悠月ちゃんってゲーマーさん?
「人並みにはゲーム大好きっ子だとは思います。最近は……そうですね、死にゲーなんて呼ばれてる会社様のソフトにハマってずっとやってますしね」
僕がサラッと言うと、なんかコメントの皆さんが「なるほど、納得」というコメントで笑いながら納得されてしまった。
「溜まったぞ~」
「それじゃあ、一緒に必殺技を打つから近付いてきて~」
二人の合体技をやれば、相手が頭上に吹き飛ぶので後はコンボを繋げて嵌め込んでから、ライフを削りきれば勝利となる。
ここのステージはボスを倒せば終了なのだ。
「ふふ、ふふふっ。苦しめてくれた借りはキッチリお返しするからね」
「ゆ、悠月⁉」
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