36話【配信】:僕にはどう呼ばれたい?
配信は既に始まっているのだが、僕は喋らずに黙々と音量調整を弄っている。
「お~い、もう始まっておるぞ」
『知ってます』
「文字で会話するでない! 視聴者の人達には分からないではないか!」
『僕の事は居ないモノだと思ってくれても結構ですが?』
「阿呆な事を言うとらんで、しっかりと始めんか」
==なんぞ?
==悠月ちゃんが喋らないが、別に体調が悪いってわけじゃあないんだよね?
僕を心配してくれているリスナーさん達がチラホラと居るけれど、絶対に騙されないからな、そもそもの原因は大勢の視聴者である君達が招いた事なのだから。
「心配はいらぬ、悠月はちょっと拗ねているだけだからのう。今回は御使い達からの要望が多かったので、悠月は女子になってもらっておるぞ」
『僕は全く許可していません』
「視聴者達に分れば良いという事でもない、なぜお主とちゃっと欄で会話せねばならぬ、他の視聴者と混じっていて見にくいし、会話もし辛いだけではないか」
ちょっとしたお茶目交じりの、嫌がらせだけど、リスナーさん達も僕がコメント欄に現れた事で少しだけ盛り上がり始めている。
==本当に悠月ちゃんがコメントで会話しようとしてる
==なにしてん、草生える
==声を聴きたいよ
「はぁ……仕方ないですね。皆さんのせいでこんな事になってるんですから、少しは反省をして欲しいんですけど、これ以上は意味なさそう」
画面上の悠月も僕の大きなため息に合わせて、しっかりと肩を落とす感じで大きな溜息を付いているのが良く解る。ジト目で画面越しに居るだろうリスナー達に見てやる。
というよりも、改めて自分のキャラを見て気付いたけど、僕の今着ている制服っぽい普段着と一緒のモノを着てるんだ。
「そう言えば、お主は視聴者達を何と呼ぶのだ? 我は御使いと呼んでおるが、ちゃんとした呼び方を決めておらんのではないかえ?」
言われてみれば、しっかりと決めた事は無かったと思う。
神の言葉に反応して、リスナー達のコメントも一気に盛り上がり始めた。
==弟君とか呼ばれたい
==弟や妹ちゃんで良いんじゃないか?
==年上は、兄さん姉さん呼びか?
==そうだな
==他の呼ばれ方もされてみたいが、しっくりくるのは身内呼びだな
大体の方針は決まったみたいで、殆どの人が兄妹で呼ばれたいという気持ちが強いらしい、若干の論争になりかけているが、何となく僕の知らないネタ的なモノが多くある。
「それじゃあ兄妹呼びで良いかな? あれ、そうするともうちょっと砕けた感じで話した方が良さそうな感じですかね?」
==だね~
==ですます調でも味はでるけど、少し砕けてお話してくれた方が、身近にかんじるね
「ある程度で良いのではないか?」
「ん? カミ?」
何時もの感じではなく、ちょっとリスナーさん達の言い方が急に冷たくなった様に思ったので、カミの方をこっそり覗き込むと、少しだけ気に入らないと言った感じの表情で、口先を尖らせながら不機嫌になりつつある。
「なんじゃ?」
僕に見られていると分かった途端に、何時ものカミに戻った。
「いや、気のせいなら良いんだけどさ」
「だから、なにがと言うておろうが?」
「いやだって、なんか急に態度が変わったから気になってさ」
「はぁ? 何を言うておるんじゃ? 我が別に何時も通りであったろうに、のう御使い達よ。何か我はおかしなところがあったかのう?」
僕から視線を逸らすようにして、リスナーさん達に語り掛けているが、急に態度が変わったと思ったのは僕だけではないらしい。
==いやいや、あからさまに不機嫌になってたぞ
==悠月ちゃんを取られたと思ったのかな?
「そ、そんな事はなかろう?」
「ふふ、気付いてなかったのか、なんか嫉妬してるみたいだったよ。ちょっと可愛かった」
「バカを申すな、というか真っ正面からなんという事を言うのだお主は」
「はぇ? 可愛かったら可愛いって言うでしょう?」
「はぁ~もう良い、この話は終いじゃ」
なんか知らないけど、顔を真っ赤にしてそっぽを向かれてしまった。
別に照れなくても良いのに、可愛らしい仕草だったし。
==そう言えばさ、二人って姉妹なのか?
==いや神と従者の関係だろう
なんか色々な憶測が飛び交い始めた。
「カミと兄妹だとしたら、僕がお姉ちゃんだね」
「それは慎重やら身体的な特徴から見たらの話であろうが、暦で言えば確実に我の方が姉になるではないか、我よりもスタイルが良いからと調子に乗るでない」
じーっと僕の胸辺りを睨みつけてくるので、思わず胸元を手で隠してしまった。
「えぇいその仕草を止めろ! なんじゃ、我への当てつけか」
「それはカミが胸元ばっかり見てくるからでしょう。じ~っと見られると恥ずかしんだからしかたないでしょうに、誰だってあんなに見られたら隠したくなります」
==ほう、つまりは悠月ちゃんは女の子と?
==いやそりゃそうだろう
==一緒の部屋に居て配信してるんだろうからな
==会話的に近くに住んでる幼馴染か、一緒に住んでるくらいの中だろうからな
==ってかさ、リアルでスタイル抜群って事だよな
==…………そうだな⁉ 天才か!
まだそんなに情報も出回ってないから、リスナーさん達の推察が捗っている様子だ。
なんか女子と男子でコメントの差があって、ある程度は男女と区別しやすい感じだな。
「はいはい、この話はお終いにしてゲームしようね。内容はこの前の続きかな」
そうして僕達はゲームを起動する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます