23話:僕達のデビュー④
「疲れた……しかも、色々と駄目ダメじゃないか」
「我は楽しかったぞ。次はゲームをしながら出来るのかのう?」
「どうだろうね、すぐに出来そうなのは選んでおくけど、まだメンバーも揃ってないからね。ゆっくり状況を見つつ、二人で遊んでいく感じで良いんじゃないかな」
僕等の放送が終わってすぐ、本サイトには僕等のキャラがしっかりと選べる仕様に変わり、選択するとプロフィールが出てくるようだ。
呟き掲示板には、数多くの反応もあるみたいだ。
「僕の料理を何時の間に写真に撮ってたのさ」
「出来栄えの良いモノは基本的に残しているぞ」
カミが話題に出した時に父さんがパッと写した写真は、昨日の内に用意したプリンじゃない事は見た瞬間に分かった。アレは、友達が来た時に本気で美味しく見せようと作ったプリンなんだから、普段作っているモノよりも見栄えもするだろう。
普段のプリンには生クリームなんかのトッピングをしないんだから。
「そうじゃ、我はアレを食べておらんぞ。確かに見た目はプリンが垣間見えていたがな。その上にあんな綺麗で美味しそうなモノは乗っておらんかったぞ」
「そりゃあ、普段は作らないしね。手間だし面倒だから」
フイットにはさっきの写真がミカのアカウントで紹介されていて、それにリスナー達が食いつく様に反応してくれている。
〈俺も食べたい〉
〈普通に美味そう。お店のじゃないのか?〉
〈というかさ、今日は一緒に出ちゃってたけど、二人は一緒に暮らしてるって事か?〉
〈事務所だろう?〉
〈いやいや、それよりも問題は男か女の子かってとこじゃね〉
〈本人は男だと言い張ってたけどな〉
〈いや、男の声って逆に声変えてるんじゃないの?〉
〈反応や仕草がなぁ、あんな男はおらんて〉
そこからの反応はまちまちだったけれど、概ね男には思えないという事で満場一致に落ち着いた所まで読んで、自分の携帯をソファーにぶん投げた。
「どいつもこいつも、僕がどうやったら女の子に見えるんだよ」
「あの会話の端々に見えた母親の様な面倒見の良さがなぁ、仕草も女性寄りだしな」
父さんが、物凄く言い辛そうしているが、顔はニヤニヤと笑ってしまっている。
「そもそも、母上と社長嬢にも母性全開の介護をしておったではないか。あんな話を聞かされて男と思える人の方が少なそうだがのう」
「あんな汚部屋に居たら病気になっちゃうでしょう。料理だって真面に食べないなんて更に駄目じゃんか、これから色々な事でお世話になるんだから、僕等が出来る事はしっかりとサポートをしてあげないと。片方が甘えるだけなんて、堕落のしちゃうじゃん」
これからだっていう時なのに、体調を崩されちゃったら堪らないからね。しかも、少し気を付ければ回避出来る事なんだから。
僕に出来る範囲で、手伝えることがあってよかったと思ていると、なんかカミと父さんからのジト目攻撃が飛んで来た。
「アレは、本当に無自覚なのかえ?」
「残念ながらね。母さんの天然な所と面倒見の良さは俺達の母さん譲りじゃなかってさ」
父さんと母さんの実家に行く度にお爺ちゃん達から言われ続けている言葉だったりする。僕が居るから、二人を任せて隠居暮らしが出来るって冗談交じりに会話が始まるのが通例だったりもするので、言われ慣れてしまったけどね。
「とにかく反省会はしようね。カミだって分かってるとは思うけど、一緒に出ちゃってさ。本来なら別々の枠でやる事を、なんで急遽一緒に始める形になるのかな」
あんまり痛くならない様に、頭をマッサージする感覚を少しだけ強めに揉み上げる。
「ぬぉ~、すまぬ。アレは我が悪かった。謝るのじゃ」
バタバタと手足を動かして、何とか僕から逃げ出そうとする。
「まぁ許してあげなさいって、紬ちゃんの転換設定もついでに紹介できたんだしね。怪我の功名ってヤツよ。あの設定を説明するのに貴方一人だったら出来ない事も多いでしょう」
二人のキャラ設定からして、最初から二人一緒というのは確かに分かる気がする。
ネットに記載されている情報でも、カミを拾って助けた経緯も、その呪いを自身に受けた感じのストーリーも、大体はそのままで描かれているのだから。
そう考える、確かに二人で一緒に出てしまった方が、後々にも説明がしやすいかも。
実際にお金を集めないと、カミは家に帰れない家無し子みたいなものだしね。
「ということは、我の行動は正しかったという事になるな」
「調子に乗らないの。急な変更はトラブルの元だよ。まだ僕だったから良かったけどね」
僕が呆れながらも、仕方ないと思ってしまう。
「いやいや、謝罪として我にもあのプリンを食べさせてくれてもよかろう。我はあのプリンを食べた事になっているのだぞ。感想を聞かれた時になんと返せばよいのじゃ?」
コイツ、こういう時には頭の回転が凄まじく早いな。
「分かったよ、作りますよ」
「やったのじゃ⁉」
「ついでに俺のもよろしく頼む」
「あ、私も食べたい」
この両親共め、何時か泣かしたるからな。
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