24話:今後の戦略を……視点:【美希】



   ☆★☆★視点:【大東美希】☆★☆★



 通話も出来るディコというアプリを使って、更紗が通話部屋に入って来るのを待つ。


 それにしても、急にどういう心境の変化なんだろう。


 前に誘った時は全然乗り気じゃなかったのにさ、ライフのコメントでいきなり自分も応募するって言

うんだもんな。まぁ、更紗が一緒っていうのは心強いんだけどさ。


 でも……やっぱり気になるんだよね。


 あの時に何かあったとしたら、紬ちゃんのお母さんあったのと、私達が会った事のない、お姉さんなのかな……あれ? でも紬ちゃんにお姉さんが居たって話は聞いてないな。


『お~い、返事が無いけど? 唸り声だけ聞こえるこっちの身にもなって欲しい?』

「あっ、ごめんね。ちょっと考え事をしてて」

『別に良いけどね。どうせ、急に私も応募するって言った事について考えてたんでしょ?』

「うんまぁ……だって、気になるじゃん」

『その理由については、今日発表のライブ配信を見ながら語る、と思う?』

「だから、そこで疑問詞にしないでよ」


 私を揶揄うニュアンスで言いながら、お互いに少しだけ笑う。


『勉強をしながら見ようね?』

「えっ⁉ なんで勉強をしながらなのよ」


『このライブ配信は重要だから、かな? 先ずは基礎的な事から。というかさ、応募する会社くらいは調べてるんだよね?』


 更紗が少しだけ圧の掛かった声で聞いてくる。


 私が主に調べたのは、動画の作り方とか応募する時にはどんな感じでアピールをすれば良いのかって事くらいで、受けようと応募しようと思っていた所の事なんて調べていない。


 しばらく沈黙していると、イヤホンから『ふっ』という、鼻で笑われた。

 きっとちょっとだけ呆れながら、ジト目で笑われている気がする。


『私がいて良かったね?』

「はい、ごめんなさい」

『まぁそんな事だろうとは思ってたから良いんだけど』


 本当に見透かされているんだと思うから、何にも言い返せないのが悔しい。

 絶対にマイクの前ではドヤ顔で私の事を上から見下ろす様に言っている気がする。

 何時かは分からせたい、あの上から見下ろしてくる笑顔。


『マルフラッグって言うのが大本の会社で、そこから賀沢春という人がね、もっとバーチャルライバーの達に配慮した子会社を作りたいって事で動いてるのが今の募集』


 相変わらず、この短い期間で良く調べてくるものだなって関心してしまう。


「なるほどね、今日はそのハル社長さんって人も出るのよね」


 確か新しいスタートって事で、一期生としてデビューする子達の紹介には必ず出てきて、細かな設定資料なんかも紹介しながら挨拶をする感じになるそうだ。


 その辺はフイットのコメントに載っていたので、私も知っている。


『重要なのは、このハル社長がどういう人材を求めているかって事だからね。そこから外れちゃうと受かる可能性も下がるかもよ。多分、今回選ばれた子達は、参考にはならないかもしれないけど。もしも、スカウトから入ったのなら、方向背は見えてくると思う?』


「そんなの、どうやって分かるのよ?」


『社長さんがスカウトで選んだのなら、元々は動画配信者って可能性が高いでしょう? いきなり新人を起用するとも思えないし。その点、元々が配信者だったら、安心じゃない? でも、素人さんだったなら、何をしてるのかとか、良く聞いておくのは良いと思う?』


 なるほどね、更紗も色々と考えてるんだ。

 そんな事を話している内に、もうライブ配信の時間になってしまっていた。



『どうも皆さま、初めまして――――』


 丁寧な挨拶と自己紹介から始まって。今回デビューする子達の紹介を始めてくる。

 立ち絵を用意して、今回の気合を入れたポイントなんかを力説してくれている。


『すごいね。力の入りよう』

「ちょっと圧倒されちゃうね」


 私達以外のコメントも同じように若干引き気味であったりする者が多く居る。


『それにしても、初めから衣装が三枚? 凄いね、立ち絵が違うこの子が最初なのかな?』

「でしょうね、リーダー的な感じになるのかな」


 キャラの設定やら過去話的なストーリーと合わせて語ってくれているの、分かり易い。


『二人で一人、みたいな感じなんだ?』

「男の子の方は私好みだな~、女装させたラ可愛いと思うな」

『私は、こっちのお姉さんが良い。前にあったあの人を思い出す』


 声や仕草を見ている内に、ふと知り合いの男の娘を思い出していた。


『誰かに、似てる?』

「私もそれ思った。紬ちゃんに似てない?」


 そう言うと、お互いに声を揃えて驚きながら画面を食い入るように見てしまう。


『ふ~ん、なるほどね。ねぇ、ちょっと私の話に乗らない?』

「なによ、いきなり怖いわね」

『大丈夫だから、ちょっとした協定を結ばないかって話と、協力しないかって話だから――』





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