21話:僕達のデビュー②
「そういえば、カミの場合は大人バージョンに変わります」
「まぁ我が本気になった時に見せる姿ではあるのだがな、今日は皆に会えたという事で見せてやってもよいな。本来ならそう易々とみられる姿ではないからのう」
ノリノリで話すカミに合わせて、キャラも一緒になって左右に動いている。
==物凄く動く子だな
==まさに子供っぽいね
「幼く見えるがな、コレはお主らの信仰心が無いからなのじゃぞ。そのせいで神社はボロボロで神域としての力すら保ててはおらんのだから」
「あれ? それじゃあさ、その姿って大人に変わらないんじゃないの?」
「ふっ、何を…………バカなッ⁉」
どうやら僕の考えは当たっていたようで、姿が変えられても、それは良くって中学生くらいの姿にしか見えない。というか、現実でも本当に姿を変えないで欲しい。
「お姉さんとも言えないね」
「哀れんだ目で見るでない⁉」
==幼女から中学生だな
==良くって高校生
==ただし、身長が一番小さい低学年だな
==どの道、ロリババアなのは変わらないんじゃね
「誰がババアだと⁉ こんな若々しい我を見て、よくそのような言葉が出てくるのう」
『ちなみに、皆の信仰心やら神社の復興が進めば見られる、カミちゃんの神々しい御姿ですが、この放送終了後に差分選択で選べて、見れる様になるのでお待ちくださいね』
「凄いですね社長、何時の間にそんな準備をしてたんですか?」
『悠月ちゃんは私を何だと思ってるんですか⁉』
「いや、社長ですよ」
『目を逸らしながら言わないでください⁉』
「そうじゃぞ。お主よりも偉いのだから敬うのだ。社長さんは何時も優しく我と遊んでくれるのだぞ! お主だってよく一緒になって遊んでいたであろうが」
カミはきっと社長さんをフォローしているつもりなんだろうけどね。
悲しいことに、それは逆効果って言うんだよ。
だから、ほら見て御覧よ……コメント欄でも、僕が何故ジト目で社長に話しかけているかに付いても、理解してしまった者達が多く居る。
==寂しかったんかな?
==遊び相手が欲しかったんだね、社長……がんばって
等々、数多く流れていってしまっている。
『ほら見てよ、不用意な悠月ちゃんの言葉で皆が私の事をあらぬ誤解している目で見始めているじゃないの⁉ 訂正して!』
「あっ、はい……ごめんなさい皆さん、えっと、さっきのはですね嘘ですんで――」
『そんな嘘そうに眼を横に逸らしながら言わないで~~‼』
「ん~、そのですね。仕事はキチンとこなす人なので心配しないで下さい。ただちょっと私生活の方が壊滅的なだけでして。家の両親と同じレベルなんですよ。脱いだ服はほっぽりっ放しで片付けないし、一日三食食べる事も稀だったみたいで、カップ麺ばっかり。大掃除なんてするつもりはなかったのに、家全体を綺麗にするのに二日ですからね」
まだ事務所も完備している家は完成していないらしく、社長が今住んでいる場所に、父さん達に連れられていって、直接会って面接する前に大掃除する事になるとは思わなかった。
『ち、違うのよ。アレはね色々と予定のズレがあって。普段はあんなんじゃあないんだからね、悠月ちゃんが来た時は偶々、そう忙し過ぎて掃除する時間も無かったのよ』
実際に忙しがったというのは事実だろうけれど、あの部屋の汚さは違うと思う。
==なるほど、仕事はキッチリこなすが私生活は本当にダメなんだね
==社長は俺らか
==ねぇ、最近さ女の子の質が落ちてない
==ばかちげぇって、男の娘の基本スペックが高すぎんだよ
==女性が家事が得意って偏見だからね!
==男子も家事をしなさいよ
「もういっそのこと、社長も近くにいれば面倒事も少なくて良さそうなに」
『……なるほど。良いわね、そうよ皆一緒に住んじゃいましょう』
社長さんが明暗とばかりに、声のトーンが一気に上がった。
『ちょっと家の子は簡単にはあげないからね』
『丁度良いじゃない、アズキんも引っ越すんでしょう。一緒に住めば良いのよ。そうすれば、悠月ちゃんのご飯が毎日三食食べ放題になるわね。しかも、デザート付きで』
通話だから表情は分からないけれど、いまだらしない顔をして涎でも垂らしていそう。
あ、少しだけ口を拭った音が聞こえた気がした。
「はぁ、作り置きしたご飯は食べたんですか? ちゃんと食器は洗ってくださいよ」
『うん、美味しかったわよ』
『うちの子のご飯よ、美味しくない訳がないじゃない』
==なんだこの構図は?
==今来たんだが、なんで社長さいんと、アズキんぐがライバーさんを取り合ってんの?
==いやなぁ、会話の流れ的にかなりの家事スキルを保有しているらしいからな
==こりゃあ、この事務所のお母さんポジションはこの子だな
コメントから妙な温かみのあるモノ変わっていくの反比例して、なんか母さん達の争奪戦が激高していく始末だ。
どうやって止めようかと悩んでいると。
なんか知らぬ間にコメント欄で争いが起きている
「まぁ落ち着くのだ。皆の言いたい事は分かるぞ。今日の朝に食べたプリンも格別であったからな。社長さんの所に持って行ったケーキがあったじゃろう、アレも悠月の手作りじゃ」
『うそ、アレもそうなの。もうお店でも開きなさいよ⁉』
「いやいや、今から貴方の所で活動しようとしている子に対して、何を進めてますかね」
==何というカオス空間w
==やっぱりママやな
僕はそんなポジションには就きたくないんですけど。
「こういう時に、りすなー達に見せられんのがのう」
父さんが「大丈夫だ」と看板を上げてパッと写真を写す。
僕が作ったプリンやらケーキの写真だった。
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