13話:身近な応募者と、身の危険⑤
外に出るまでに約一時間は稼いだ気がする。
ただ、そんな僕の頑張りも虚しく終わり、両親とカミによって半場無理やりに車に乗せられ、外に連れ出されてしまった。
「なんで、こんな格好で外に出ないといけないんだよ」
「良いじゃないの、似合ってるわよ」
僕の恰好は、ポンチョコートに短めのスカートで絶対領域よろしくの太腿をチラ見せするような感じの足元に、白をベースにしたおっとり系清楚素なイメージを崩さない、お姉様令嬢をイメージした衣装だといって着せられた。
「やはりこう見ると、理想的な姉上と言えるな。料理も出来るし、包容力もあるしのう」
「いいなぁ、俺もそっちに座りたい」
「こら、劉ちゃんは運転に集中してよね」
コレでも妥協をした服のチョイスで、幾つも拒否した中には、チャイナドレスからセーラー服などのコスプレ衣装を何とか跳ねのけたのだ。
落ち込んでいる僕を他所にして、車は商店街の大通りを抜けて大きなショッピングモールの駐車場へと向かって行ってしまう。
ここに来たくなかった理由は他にもある。
今日は、女の子にされてしまっている今の状態で絶対に会いたくない女子二人が、この界隈に居るかもしれないという事だ。
「もう来ちゃったものはしょうがない。けどね、さっさと目的の服を買ってすぐに帰るからね。絶対に余計な寄り道はしないから!」
「もう、せっかくのお買い物なのに~」
「こういう場所は初めてくるのう。あんな大きな建物が今の時代には普通に立ち並んでおるとは、時代は進んだものじゃな」
カミは別の事で感心しながら、お上りさん見ないにキョロキョロと周囲に気を取られていて、目を離すとすぐに迷子になっちゃいそうで怖い。
「はぁ、良いカミは僕と一緒に行動するからね。絶対に手を離さないでよね」
「むぅ、こんなにしっかりと手を握れれておっては嫌でも離れんぞ。そんなに子供扱いせんでも解っておるわ、ちゃんとお主に付いてゆくから安心せい」
「やっぱり、良いお姉ちゃんね~。紬ちゃんが女の子だったらこうなってたのね~」
「身長が男の時よりも高いのは、どっちの血が濃かったんだろうな」
「ん~、私のお父様じゃないかしらね? 背は高い方だったし」
「なるほど、あの人となら確かにありそう。顔は家のお袋に似てるけどな」
「嬉しくないっての、どうせなら男の時に身長が高くって、カッコ良くなりたいっての」
「こ~ら、女子が乱暴な言葉遣いはダメなのじゃぞ。もう少しお淑やかに話さぬか」
傍から見たら、どういう状況なんだよコレって。僕の方が背が高くってお姉さんっぽいのに、言動から見たらカミの方がお姉ちゃんをしている様に見える。
姉妹仲良くお喋りしながら、歩いている様に見えるのか微笑ましそうに周りの人達がチラチラっと何度か見返すよにして、チラ見してくるのだ。
特に、そういう視線が向くのは男子の方が圧倒的に多いみたいだけどね。
「案外、視線て気が付くもんだね」
「そりゃあ無駄に綺麗なお姉様と、神秘的なロリっ子なカミちゃんが居るんだからね。男子の視線を集めるのは当たり前よ」
何故か知らないけど、母さんが得意げに答えてくれる。
「女子からの視線は、どっちかっていうと羨ましいって感じがするのう。我ではなく、主に紬に向かっているようだぞ、熱い視線を向けられておるな」
カミが揶揄うように笑って言う。
「いやいや、意外にも子供からの視線も集めてるみたいだぞ。あんな姉が居たらなぁ~的な熱のこもった瞳で見ている子達もチラホラと見て取れる」
父さんは目敏く周囲の人達を観察しながら、僕等にこそっと教えてくれる。
「知りたくない情報を言わなくて良いの、さっさと洋服屋に行こうよ」
「何を言ってるのよ。最初に向かう先はラグジュアリーショップの方よ。しっかりと紬ちゃんの体を測ってもらわないと下着も買えないんだからね」
「それじゃあ俺は、足りなかったマイクやらヘッドホン何かを買ってくるよ」
そういって父さんはそそくさと僕を置いて、電気街の方へと向かって行ってしまった。
「僕もつれて――」
「ダメに決まってるでしょう。誰の服を買いに来たと思ってるのよ」
「そうだぞ、我の服と紬の服を買うて貰うのだから、しっかりと母上殿に付いて行かねばな」
「まるで僕が迷子になりそうな子供みたいに言わないでよね」
母さんとカミに両手を引っ張られる様にして、服屋へと連れ込まれてしまう。
「いらっしゃいませ~」
「は~い、おひさしぶりね~」
「あら~、ちょっとご無沙汰だったんじゃないの? ダメよ、貴方は元が良い最高の女性なんだから普段から服装には気を遣わなきゃ~」
筋肉質な男性なのに、その心は乙女という感じの男性が出迎えてくれる。
普通は女性の従業員さんが出迎えてくれるもんだと思ってたんだけどな。
「ふふ、このお店なら紬ちゃんも来やすいでしょう」
「いやいや、どういう気の使い方なんだよ」
「あらまぁ⁉ 随分とかわゆい子達じゃない⁉ なぁ~に、貴方の隠し子かなんか⁉」
「違うわよ、こっちは居候のカミちゃんで、もう一人は劉ちゃんとの子供です~」
「あらあら、そうなの~。ん~、アタシの事はケリーって呼んでくれて良いわよ。あぁ、測る時はアタシじゃあなくって、ちゃ~んと女性の従業員さんにやってもらうから安心して」
そうケリーさんが言い終えた辺りで、聞き覚えのある声が聞こえた気がした。
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