12話:身近な応募者と、身の危険④
「父さん、母さんも連日の夜更かしっていうのちょっとどうかと思うんだけどね」
製作が終わって、少しだけ休んだみたいだけど……両親の目尻にはクマが少し見える。
「ふふふ、ふふははは。そう言わないで頂戴よ~。ようやっと完成したんだから~」
「突貫制作ではあったけどな。ほぼゼロから一週間以内に五キャラ分を作った俺達を褒めてくれたまへ、称えたもうぞ。我が息子に娘よ」
徹夜のし過ぎだろう、共に変なテンションで僕とカミに粘着してくる。
「ダメじゃな、こ奴等はもう腐れ神にでも取り付かれておるぞ」
「カミ、お願いだからすぐに映画の影響を受けないでくれないかな」
両親はお仕事で忙しく、カミの相手は僕一人でするしかなくって遊び疲れた時には苦肉の策として、色々な映画を見せてやると大人しくなってくれる。
それでも、一緒に見ていないとダル絡みされるのだけど。
常に遊んでと絡まれるよりもましだったので、なんとかカミとの契約を守れるギリギリの範囲を探って、僕の勉強の時間やら家事の時間を稼いでいた。
その後の影響が、変に残ってしまったりしているけどね。
「もうそれよりも私達の傑作を刮目して見よ」
「いや、こういうのって先に見ちゃって良いのかな?」
「大丈夫だ、問題ない事は確認済みで社長にも既に聞いているからな」
決めポーズを取りながらサムズアップで答えてくれる。
「こういう時になると、未来予知みたいな先読みだのう」
「普段はあんなにダメダメな父さんなのにね」
とりあえず、母さん達に促されるままに外部モニターを見る。
僕のキャラクターは中性的な顔立ちで、フワッと広がった感じのポニーテール。髪の色は黒くサラサラした質感っぽくなっている。
ショタっぽくって小さい体をしていて、小顔で華奢な体をしている。
逆に女の子になっている姿の方がお姉さんっぽくって、色気が増している。胸も大きく色白で透き通るような肌が見える太腿、長い脚に引き締まった腰付きをしている。たれ目がちで気だるそうな感じであるが、優しそうな雰囲気もしっかり感じ取れる。
「随分と極端だね。こんなに変える必要ある?」
別にお姉さんな感じでも良いんじゃないかなって思うんだけどね。
「それは、カミちゃんの方を見れば分るわよ。姉妹っぽくしたくってね。双子なのに結構違う感じにしてみたのよ」
「いやいや、そうじゃなくってね。なんで女の子になった方が背が高くなってんの⁉」
普通は逆でしょう、男の姿の方があからさまに背が小さいよね。
「なるほどのう。男の時に女装をすると、我のきゃらと確かに似ておるな」
カミの方は髪の毛が銀髪で、活発そうなストレートロングな少女になっている。
男の時は双子っぽい。
女の子バージョンの時には逆に姉妹感が増し増しになっていて、しっかりと僕のキャラクターに甘えられそうな見た目になっている。
「ちゃ~んと女装バージョンの紬ちゃんもあるからね~」
パパっと画像を用意してくれていて、三枚の立ち絵を並べられた。
「我の立ち位置はどういったものになるのだ? 神という設定とやらはそのままなのであろう。呪いを掛けた張本人が姉妹の様に似ていて良いのかのう?」
「自信の姿を思い出せないって感じでね、貴方のキャラは名前が『名無カミ』っていうの。良いかしら? イヤなら変えるように社長に言うけど?」
「ふむ、別に問題ないのう。事実じゃしな」
徹夜のテンションのまんまで名前を決めたんだろうな。
しっかりと名前が決まった事が嬉しいのか、カミ自身は満足そうな笑みを浮かべている。
「姿が似通ってるのは、自身の本当の姿が分からないからって感じだな。それを紬のキャラに似せて作った理由だ。遊びの神様って事だけは覚えてるからな、ゲーム感覚で眷属にしようとしている紬には、自分のお姉ちゃんになって欲しい気持ちと、弄り回したい男の姿と、どっちも好きだから、常に共に行動しているって設定だな」
キャラクターの設定資料にも確かにそう書いてある。
「ねぇ、この呪いを掛けたから離れられないっていうのは?」
「あぁそれは、神様が自分の領域外に出るんならそれなりの理由が必要じゃない、実際に呪いを紬に掛けたから、カミちゃんは我が家に居れる的な感じよ」
「地縛霊なんじゃね?」
「我はカミだと言っておるだろうが……そうじゃな、確かに姉上というモノには憧れもある、良い姿ではないか、なってみたくなったのか?」
「冗談だ! 本気にするな」
「だから神を舐めるなというておるだろう。意地悪で言うておったくせに今更何を逃げようとしておるのだ。今日はまだ遊んでもおらぬ。十分に我の姉上として、優しく甘えさせてほしいものようのう」
ニヤニヤとしながら、一歩一歩近付いてくる。
このまま捕まれば、母さんの作ったキャラみたいな女性にされる事は確実だ。
「そういえば、女性の声質を調べておかないとね、余りにもイメージと違ったら違和感しかないキャラになっちゃうから、調べるのにも丁度良いじゃない」
「よかない! くそ、この家には僕の味方は居ないのかよ⁉」
「残念ながら、居ないんだな~。大人しくしてもらおうか紬ちゃん」
父さんが一瞬にして背後に周り、逃げようとした方向には母さんが既に廻り込んでいた。母さんに羽交い絞めにされて、嫌がる僕にカミは容赦なく抱き着いて来た。
「さぁ、お着換えしましょうね~。ついでから買い物にでも行きましょう」
「いやだ、この格好で外なんて出るもんか⁉」
「しかしのう、下着が無いと辛いのではないか? 今後の事も踏まえると、勝っておいた方が良いと思うがのう。我の洋服も欲しいしな」
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