4話:計画の全貌は一石ナン鳥でしょう
「さぁて、父さんが寝ぼけてくれていた御蔭で、とんでもないことをしてるって分かったんだけど、いったいどういう事かの説明はしてくれるんだよね」
きっと母さん達から見たら、青筋でもこめかみに浮かんでるんだろうけど、一言も相談なく進んでいた計画とやらを正直に話すまでは、絶対に許してやらないんだから。
「そんなに怒ってはせっかくの可愛らしい顔が台無しだのう」
「せめてカッコイイ顔って言ってくれるかな?」
「無理じゃろう――いだっ! これ、我の頭をそんなぞんざいに掴むでない⁉ いや、本当に痛いぞ、潰れてしまう⁉ 我は林檎ではないのだぞ」
「少し、静かにしてましょうね」
「うぅ、わかったのじゃ……」
カミには悪いが、今は家族会議の真っ最中なので余計な事で体力を使わせないでほしい。
「そのね~、裏山が急に買える値段で相談されて~。そこに前々から劉ちゃん達と企画していた話が進みに進んじゃってね。時期とかも丁度良い機会だったから、そのままノリと勢いで盛り上がっちゃって」
母さんが小さく舌を出して悪戯っ子ぽく謝ってくる。
「お母様、それは人に謝る態度ですかね。良いんですよ掃除をご自分でしてもらっても」
そうすれば、僕が楽になるんだから。
「ひ、酷い。そんなことをされちゃったらお母さんが生きていけなくなっちゃうじゃない」
全くこの両親共は、どれだけ家事が出来ない人達なんだ。
必要に駆られて、僕の家事スキルが上がっていったせいで、幾度となく同級生達からは「良いお嫁さんになれる」というセリフを聞いた事か分かったもんじゃない。
「ごめんなさい~、見捨てないで~」
家事をしないと言われて、今度は必死になって謝って来る。
「最初から素直に謝ってください」
僕が許すと、すぐに母さんは拗ねた子供みたいに唇を尖らせる。
「ぶ~、紬ちゃんが反抗期ですよ劉ちゃん」
「まぁまぁ、今回ばかりはこちらが悪いからね~。仕方がないと思うよ」
父さんは流石に分かってくれているようで良かったと思いたいが、絶対に僕のおやつが目当て何だろうな、こういう妙に物分かりが良い時の父さんには要注意だ。
「それにしても裏山を買えたっていったいどう、いう……」
確か裏山はカミと初めて会った場所で、あそこにはボロボロの神社があった場所だ。
父さんも母さんも、僕が聞こうとした事に関係があるという感じの視線を、チラチラとカミのヤツに向けているので、イヤでもそっちに顔が向いてしまう。
「ふふん、だから言うたであろう。お主は我からは逃れられん運命になったのだよ」
僕より小さいのに無駄に大きく見せようと胸を張って、ドヤ顔で僕の事を見てくる。
今度は頭じゃなくって、額を鷲掴みにし親指と小指、薬指に力を入れていく。
「ふぉ~ワレル割れる、頭がわれてしまうのじゃ~」
「あんまりカミちゃんを虐めてると、また女の子にされちゃうわよ」
母さんの一言で力が緩んでしまい、カミはその隙に僕の手から逃れて母さん達の方に回り込んで、盾にする様に後ろに隠れた。
「ふふ~、命拾いしたのう」
ベーっと舌を出しながら挑発してくるカミに、顔がピクピクと引き攣りつつ睨みつける。
「何時か絶対に泣かすっ」
「いや、逆に紬が涙目になってちゃあ、そのセリフはフラグでしかない気がするな」
自分の半身が無くなった時の虚しさを、父さんは知らないんだ。
その上、昨日は女の体の洗い方を一から十まで事細かに教え込まれたんだぞ、母さんとカミのヤツに、僕も触った事がない場所まで丁寧に洗われたんだから。
「あら、何を思い出してたの紬ちゃん」
僕の反応を見て、何かを察した母さんとカミのヤツがニマニマとイヤらしい笑み浮かべながら、思わせぶりに聞いてくる。
「何でもないよ。それよりも話の続き!」
「ほら、お母さんの仕事って絵描きじゃない。その延長線上でね、お友達に一緒にやらないかって声を掛けられちゃってね」
「そこに俺も参加する事になってな、前の仕事やら昔馴染みとのコネクションでな、それならばいっそのこと、自分達で環境を一から作っちゃおうって事になってな」
それで場所を探していた所に、カミが現れて母さん達の企画に興味を持って積極的に手伝う事にしたらしく、その上で自分の神社も立て直して貰おうと思ったらしい。
ついで、僕に掛けた呪いの事も両親にはキッチリと説明していたという。
「…………ん? それで、なんで僕と関係がある話になるのさ?」
「だって、お主が頑張らねば呪いは解けんのだからな、しっかりと我の神社を再建して貰わねば、お主に掛けた呪いが解けんのだ。今の神社では神界にも行けぬし、呪いを解くにも我の神力が弱まっているせいで、不可能になっておる」
「は? え? じゃあどうするんだよ⁉」
「そこでね~、一石二鳥どころか三も四もお得なお話が、私達の企画って訳よ~」
「知名度が上がれば、カミちゃんの信仰度もまして神力が上がり、人が集まれば集まるほどにお金も得られて、神社の立て直しだってゆめじゃない! 最後に俺の夢である、自分の子供をアイドルへと導ける」
「最後のはどうでも良いよ」
僕はまだ許してないからな、勝手に応募して、知らない所で傷ついた僕の気持ち。
「で、それってなに?」
話を聞く限りでは、確かに可能性のある話なんだろう。
「それはね、カミちゃんと一緒に紬にもバーチャルライバーをやってもらうのよ」
母さんと父さんが、物凄く決め顔で僕のことを指差して言う。
「…………殴るぞ」
イラッときたので、冷めた声で睨みながら拳を握りしめる。
しかし、それと同時に母さんの携帯電話から音楽が鳴り響いた。
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