#29

「キャーーーー!」


突如として、家中に妻の叫び声が響き渡った。

そろそろ夕飯の支度をしている頃合いと思ったが、何事か。


私は大慌てで、自室からキッチンへと向かった。


息を切らせて辿り着くと、立ちすくむ妻の姿があった。

とりあえず無事に見える。


近くへ寄ると、異様な光景が目に入ってきた。

なんと、流し台は真っ赤に染まっていたのだ。


混乱する頭の中を落ち着かせる。

だがやはり、怪我をしている様子はない。


「な、何があったんだ?!」


「アナタ・・・ごめんなさい。こんなことになるなんて・・・」


「一体どうしたんだ」


「夕飯のメインにする予定だった、ミネストローネ。全てひっくり返してしまったわ」




















――深紅のシンク

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