#19
左後方座席の窓側にドカりと座る。
足は伸ばせないほど狭い。
荷物はそんなにない。
どこかで買ったお茶のペットボトル一本だけだ。
ガダガダと大袈裟に揺れる。
乗用車より大型のバスの方が揺れは酷い。
窓ガラスにつけたこめかみに響く。
痛みは感じなかった。
風景が流れる。
街路樹、
人、
建物、
看板、
電信柱。
後ろへ流れる。
内に抱く仄暗い感情も、置き去りたかった。
徒歩では追いつかれるけれど、バスならあるいは置き去ることが出来るんじゃないか。
そう思った。
体重を掛けていた左肘が痺れていた。どれくらいの間、ぼぅっと眺めていたのだろうか。
お茶を一口飲む。
喉が渇いているかも不明瞭。
腑抜けている。
もぬけの殻。
間抜け。
見慣れた街並み。
見知った風景。
終着点。
結局、バスでも逃げ去ることは出来なかった。
お茶でも飲み下すことは出来なかった。
その感情を。
――ナーバスバス
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます