#13
河原の土手の法面で寝そべるのがささやかな趣味、みたいなものだった。
それはこんな天気の悪い曇天でも変わりはなかった。
野球のサウンドが、ランニングのリズムが耳に流れ込む。腕で目を覆っている分、聴覚が研ぎ澄まされているのかもしれない。
寝ようと思っている訳では無いが、眩しすぎるのも考えものだ。生憎今日の空模様を見る限り、必要とは思えないが。
案の定、ポツリと来た。
突如、後方にあたる、堤防の天端の部分から声が聞こえてきた。粗方こちらは寝ていると思われているのだろう。
俺は耳を澄ませた。
「俺、前からお前の事が好きだったんだ。付き合ってくれないか」
「私もあなたの事が好きだったの。こちらこそ付き合って欲しいの」
「雨が強くなってきた、ウチ近いから雨宿りしていかないか? 」
「ありがとう…!」
けっ。
クソッタレ。
雨足がどんどんと強まる。
人がいるところで告白なんてするもんじゃねぇ。
耳に入るこっちの身にもなれってんだ。
さっさと帰ろう。
腕を目の上から退けると、口に入った雨水を吐き出して歩き出した。
――甘ぇ雨
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