第10話

そうは言っても...それをどう伝えるかが問題だよな...。

手話なんてまだ通じるわけもないだろうし。


そう思いつつも、ダメもとで手を動かしてみる。


(なにがあったのか、はなしてくれるか?)


こっちを見てくれはしたが、返事はない。まぁ、やはり通じないだろう。


「......ほんとに、話してもいいの...?」


俺は頷いた。

と同時に、驚いた。きっと、あれからも手話を勉強して、俺の言うことを読み取ろうと努力してくれていたわけだ......

そんなに俺は、彼女にとって...

彼女にとって、俺はなんなんだ...?


いや、今は話を聞いてやろう。

そしてできることなら、誰からも見放された俺が、彼女のために手を差し伸べてやりたい。



「ねぇ、ほんとにいいの、?私なんて、見ず知らずの赤の他人だったんだよ、?たった1週間弱の付き合いなんだよ...?」


俺は、もう一度強く頷いた。


彼女は、また泣いてしまったが、それでも涙声で話し始めた。



「私ね、ずっと死にたかったんだ。ずっと、ずっとずっと辛かったんだ。それに、今だって死にたい。斉原さんがいるのに。

私がつらいとき、辛い話する訳じゃないけど、他愛ない話して。私にとって、それがすっごく救いだったんだ。」


俺はまた、深く頷いた。


彼女が自分のことを私と言っているのを聞いたのは、これが初めてかもしれない。それにも、彼女なりの理由があったのか。深く関係してるのかもしれない。俺は続けて、彼女の話を聞いた。

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