第6話

「僕の名前は、葉月はづき みどりって言います。おじさんの名前はなんですか?」


...さっきも言われたけど、おじさん呼ばわりは結構来るものがあるな...


まぁ、減るもんではないし教えてあげよう。


「...へぇ、斉原さんっていうんですね。」


少し嬉しそうだ。

ところで、話すと言っても、そこまで手話ができる訳では無いだろうし、1音ずついちいち手でやるのは骨が折れるな...


「んー、斉原さん...何から喋ったらいいんでしょうか...」


無理に喋ろうとしなくてもいいのにな。


「...えっと、その、死のうとしてたんですか?」


随分直球に聞いてくるんだな...

隠すのもあれだし、ここは素直に答えてよさそうだな。


「やっぱりそうだったんですね...」

「...あ、そういうこと、話しにくいと思うので、今日は僕の話を聞いてくれませんか?」


まぁ、こっちとしても、その方が楽だな。

こんな真昼間に屋上に来るなんて、この子も恐らくワケありなんだろう。

話を聞いてあげることで、この子が楽になるならいくらでも聞こうか...


「え、なんか期待してます!?そんな重い話なんてしませんよ?フツーに、他愛ない話をするだけです。」


良く考えれば、出会ってすぐのやつに、自分の悩みをそうつらつらと言える人間なんて居ないよな。とんだ思い違いだったみたいだ。


その日は本当に、他愛ない話が続いた...

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