第7話 旅は続くのじゃ!

「わーい、完成したぞう、私の服」


 救援部隊が到着したあとにな! つぎはぎだらけの服がな!

 この服を持っていた猫亜人は身長160センチメートルくらいで、私は身長175センチメートルくらい。何もかもが小さい。胸回りもキツキツ。スカート丈も短すぎてパンチラしまくりそう。

 緑の服を基本に、つぎはぎだらけの服をあつらえるだけでも時間がかかってしまったのだ。しっぽしょんぼり。


「隣村の先には街がある、そこで布そのものからあつらえ直して貰うといい。うちの村じゃ良い生地なんて樽をひっくり返してもないからね」


 と女将さんはいうけれどさあ。新品の服って高いんだよねえ……。


 はあ、宿屋の一室で今日もいじけちゃいますよ。いじいじいじ。


「あー疲れた。ボタンーマッサージしてくれー」

「やだよ。クレスちゃん、今日は何があったの?」

「宿屋居酒屋ネットワークから褒賞をもらったぞい。副賞でなにか欲しいものがあるかと聞かれたからな、こう答えてやったのじゃ――」



「――――――――あぁ、あ、あたしのふくぅ!?!?」


 宿屋全体に響くような声で私は叫ぶ。だって新品の服だよ!? この貧乏国家ラリスタッド国で!? ガスダット帝国とかなら余裕だろうけどさあ!!


「そうじゃ。今回は宿屋居酒屋ネットワークから冒険者ギルドに救援要請がいったそうなのじゃが、救援が必要ないとなってな、冒険者ギルドに支払う謝礼金がほとんど要らなかったそうじゃ。それで――」

「――浮いたお金を功労者の私たちに少し振り分けようってこと? でもいいの? 私の服につぎ込んじゃって」


 雑魚は私が倒したとはいえ、ボスを倒したのはクレスちゃんだ。私だけ貰うってなんか違和感を感じちゃうよ。


「うん、まあ、その、なんだ。おぬしそろそろここに来て2年じゃろ。人は2年で違うところにいくではないか。そこにー……」

「連れて行って欲しいと」

「――女将さんに言われたんじゃ、ワシは世間知らずすぎるというか、だまされやすすぎると。ボタンはああ見えて危険察知能力はたいしたもんだから、一緒について行くといいぞってな」


 ああ見えてって……女将さん……。


 そういえばもうすぐ2年かあ。

 あたしがここにお世話になったのは生活協同組合会員になって、ここで修行を積むという名目で居座らせて貰ったんだよね。一つの場所に居られる期間は2年。これはどこのギルドや組合でもほぼ同じ。2年経ったらほかの村や街に行って新たな修行を積む、と。

 次の集落に移動することで街道に人が増え、賊や魔物が減るんだっけか。


「どうした、深刻な顔をして。やはりダメかの? まあそれでも良いのじゃ。権利は貰ってあるから街へ行って新品の服を貰うと良いぞ」

「ん、ああ、ちょっといろいろ考えていただけ。いいよ、一緒に行こう。ハイエルフの幼女を一人歩きさせるなんてとんでもない!!」


 ムキー!! ようじょじゃなーい!!

 という言葉とぽかぽかぽかぽかされながら、あたしたちはコンビを組むことになったのである!

 まずは洋服を作りに街まで行くぞ!

 そういやコンビボーナスがクレスちゃんにも入ってるはずだなあ。あとで説明しないとね。




 ――――――――


 救援部隊がやってきてから数日後、救援物資を運ぶ部隊がやってきた。

 村の復興が始まった。といっても破壊されたのは門と少しの畑。期せずして馬が3頭も手に入ったので逆に儲かったかもしれないね。

 この村はもう大丈夫、うん、きっと、おそらく。きつねは楽観的だからね!


「樽を2つ、大きなチェスト(長方形の木箱)を3つ。樽には水をたっぷり入れて、水の質を長持ちさせる錬金術の薬も入れておいたよ! チェストには道具や食料が満載だ! ――しかし、本当に入るのかい?」

「ありがとうございます女将さん。〈マギス・インベントリ〉!」


 そう唱えると私の脳内イメージに3*3のマス目が出来上がる。


「まだまだ空きがある。収納っと」


 そうつぶやくと一瞬で樽が私の脳内イメージに吸い込まれ、現実から霧散する。


「いつ見ても面白いねえ。本当にマジックアイテムとかじゃあないんだよね?」

「あたしのマギス・インベントリはユニークスキルでマジックアイテムではないですねーわはは」


 ほかのも含めてこれで6スロット使ったから残り3スロットか。少し余裕があるね。


「このスキルはなんでも吸い込めるんだよね、私の脂肪も吸い取って欲しいよ」

「なんでも吸い込めますけど、1つの枠には1つの物体しか入らないです。脂肪は難しいかなー……。えっと、だから箱とかに細かい物を詰め込むんですよ。あと、あまりにも大きいとか重いとか、そういうやつは一気に2*2の4スロット使ったりします。大樽や、鉄のゲキおもな箱は取り込めないってわけです」

「そうなのかい。じゃああと一つチェストをやるよ。空の入れ物もあった方が良いだろうほうがいいだろう?」


 いいんですか!? と言ったけど、なんでも隣の村が木を供給している村らしくて、木材はたくさん手に入るそうだ。貰っておーこお


「これで準備は良いかな、クレスちゃん」

「あるわ! おぬし今の格好を見てないのか! ボロボロの着流し一枚はおってるだけで何も着けてないじゃろ! 乳は見え見え尻はぷるんぷるんなのが丸わかりじゃぞ! なぜつぎはぎだらけとはいえ洋服の体をしておるものを使わん!?」


 ……強制的につぎはぎの服(と、あり合わせの下着)を着せられて、私たちはこの村をあとにするのでした! しっぽぽんぽん丸!


「女将さーん! 今度ここに来たら旅の話を聞かせますねえー!!」


 私たちの旅はこれからも続く!

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この二人なら楽しい旅になるに決まってる! きつねのなにか @nekononanika

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