第6話 ボス撃破のあとは……なのじゃ!
体を隠すためにとりあえずの下着を着せられ、宿屋の一室に放り込まれたあたし。みんなは祝勝会で大騒ぎしているのに立役者がこんなところで震えているだなんて……しくしくしく。
でもまあ、こんな姿を見られたくないしね。こっそりと外に出て、馬車の中に入っていたお宝でも物色しますか。あれは私と幼女ハイエルフの戦利品で、欲しいものはいただけることになってるのだ。わははは。
馬車の近くまでいくと、馬車の中で灯がともってる。こそ泥か!?
そろりそろりと近づいて、馬車の中に突入する。残念ながら花草水月と翠乃沃土は持ってきていないからきりころ、剣の峰や尻を使って殴ることは出来ないけど、驚かして注意することは出来るでっしゃろ。
こうやって狩りっぽいことをするときって本当楽しい。きつねは肉食なので狩りをするから、その血を引いているんだなあ。
「ばあ! 盗人め覚悟しろ!」
「あぎゃぁ!?」
そこにいるのは幼女ハイエルフでした。
宴を楽しんでると思ったらこんなところに。
「あれぇ? 盗みに来たの? 戦利品は均等に分けたら残り売却する手筈だよね」
「おわわ。盗むだなんてそんな。お、お主もなんでここにいるんじゃ??」
「あ、あ、あたしは別に物色して少しでも価値が高い物を分けてもらおうだなんてことで来たわけじゃないよ!」
「答えをいっとるではないか!」
「いってないもん! あたしは無実だもん! じゃあ幼女はなんでここにきたんだよ!」
幼女はちょっと顔を曇らせると、
「そ、そのう……ワシがとても欲しいワンドがあって……それだけは譲ってもらおうと……ただ、価値があって……」
「盗もうとしてるじゃん! そのワンドはどれなの?」
「いや、この手に持っている棒がそうなんじゃが、はめ込まれていた宝石がなくて……」
「棒きれゲット乙」
「ちがうのじゃー! 大体あのワンドをあげるって言われてついて行ったら捕まったのじゃからあれはワシのなんじゃー! もうもらったのじゃー!」
「やーいだまされてやんの」
「ムキー!!」
ぽかぽかぽかぽか。棒きれで殴ってくる幼女。全て私の目の前で止まる。
「あ、パワー解放したままだった。マギスパワー・ストップ、充填モード」
幼女は目をまん丸にしてぽかんと口を開ける。あ、かわいいかもしれない。
「どしたの? あたしを見つめて」
「いや、戦闘中の時は必死で気が回らなかったのじゃが、おぬし一体何者じゃよ。あの巨人の攻撃を完璧に跳ね返す魔法。脳内に響く経験値なんたら。しかも魔法は今まで継続していたってことじゃろ、今さっき展開を止めたようじゃし」
「だれって、サカキ・ボタンだよ。そっちこそだれじゃ」
「自己紹介したじゃろ! クレス・クラインじゃ! ハイエルフのな! もー、なんで忘れてるのじゃ、凄い丁寧に挨拶したじゃろうに」
「あぁ……。いや、だって火だるまになったあとだったから。宿屋の一室に押し込まれるまで大暴れしてたし?」
幼女はソッと目を背ける。
小声ですまんと言ってら。きつねのみみはどんな小さい声でも聞き取っちゃうぞ(はぁと)。
「いや、燃え移っちゃったのはすごい気にしてるけどあんまり気にしてないよ。敵味方識別できる魔法だったんでしょ? 毛は焼けちゃったけどさ、熱さは感じなかった。あのものすごい火力がなかったらあいつも倒せなかったかもしれない。凄いよ」
「うん……ありがとう」
「よし、じゃあその宝石を探そっか。組み合わせるとなんか凄いんでしょ?」
「探してくれるか!? アレがあれば魔力集中が早くなるし、コントロールも上手くなるのじゃ! もう火が飛び散ることはないぞ!」
「おうおう、そうかそうか」
それじゃあと中を捜索していく。基本は食料だねー。服とか武具も見つかったけどボロボロ。ま、悪に手を貸す人なんていないもんね。
性欲処理の人々と、かんしゃくを起こした際に殴られていた男性達は保護してある。売ってお金になる子ども達も無事だ。女将さんが呼んだ助けが来たら、ちゃんとした場所へ送られるでっしゃろ。
しかし宝石が見つからない。あらかた探したんだけれども。
「ここに来る前に落としちゃったのかな?」
「や、そんなはずは。お金も見つかっとらんし、どこかに隠してあると思うのじゃが」
どこだろなー、首をクイッと曲げる――。
――きつねの第六感、発動!
「わかった、ここだ!」
そう言って移動牢獄の底面、その裏を見る!
そこにはなんと! 箱が取り付けてあった!
「きつねって、首を曲げると本当に感が働くのじゃなー」
「きつねには本当に感が存在するんだよね。動物のきつねみたく故意には発動できないんだけどさ。きっと入ってるよ、翠乃沃土を持ってくるからちょっと待ちなー」
私が罠がないか丁寧に調べて、翠乃沃土をロックピック状にして解錠し、もろに罠に引っかかって毒を受ける。
「ふう、生命力回復のポーションを持ってなかったら死んでいたぜ……」
「おぬし出来るやつなのか出来ないやつなのかわからんの」
そんなことを言いながら箱を開けると、中には魔導小切手や宝石、キレイなアクセサリーなどがつまっていた! しっぽぽんぽん丸!
「わーすごい! この中に例の宝石がありそうだね! お、このグローブなんだろ、着けてみよう。――おお、指先までなめらかにフィットする! これは魔法の品っぽいなあ! 貰っていい?」
「よいぞよいぞ。ワシの宝石は……これじゃの。こうやってこうやれば上手くはまるはず。――出来た! 〈ファイアビーム〉! 〈ファイアビーム〉! 〈ファイアビーム〉! おおー! 発射までの時間もかからないしキレイに飛ばせる! 貰って良いかの?」
「いいよいいよ! 魔導小切手は額面で半分こしよっか。残りの宝石とかは女将さんあたりに鑑定してもらってこれも半分こにしよう。換金性が良いし街とかいったら売ればいいよね」
「この赤の服は?ハーフリングサイズのようじゃが」
「着たら? サイズぴったりじゃないかな」
ワシはハーフリングではないぞー! などと言いながらおとなしく着る幼女――じゃなくてクレスちゃん。
服が小さい感じだったけれど着ている最中に伸縮してちょうど良いサイズに変化した。魔法の品かあ。
「おー似合ってる似合ってる。【赤のハイエルフ】って感じ! 超強そう!」
「そ、そうかの? ワシ炎系がそこそこ強いからそういうのも悪くないのう。あはは」
なんかねー、神官が着るようなゆったりしたワンピースで、凄くキレイな赤色と白色なの。
クレスちゃんのかわいいお顔と相まってどこかの貴族の子みたいな感じがするよ。
しかしクレスちゃん顔がかわいいよなー。眉の配置から目の位置、唇の位置まで、全部ここに置けばかわいくなる! って所に配置されてる。さすがはハイエルフか。
「ハイエルフは小さくても完璧なんだねえ……」
「ぐ……小さいがもう1012年は生きとるぞい! まあ詳細は後で説明してやろう。それよりも、ワシは服が手に入ったがお主の服が早く手に入ると良いな」
「うん、今仕立て直ししてもらってるから、時間はかかるかもしれないけど手に入るんだ」
救援部隊が来る前に完成するといいなあ……。
ジャイアント雑種が混ざった賊の集団を殲滅した英雄が下着姿で現れるわけには、いかないでしょ……。
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