第18話 新たな予感
「面白いね彼ら」
ゴズとメズ、ルシファーとレイヴンの戦いを観察していた者がいる。百メートルも離れていない距離で観察していたというのに、レイヴンやルシファー、カエデに気配を悟らせないのは、ただ者ではないだろう。
「噂の魔神とその器を見に来たんだけど、中々に面白い力を持っているね彼ら」
それは男であった。白の法衣を纏った長身の男。彼は右手に持った真っ黒な宝玉を見つめていた。
「次はどんな魔物をけしかけようか。ククク……楽しみになってくるね」
彼はそう言って、姿を消す。まるで最初からそこにいなかったみたいに、音や魔力を立てることなく静かに。
レイヴンと彼が出会うのはもう少し後の話。
***
「いや~助かったよ君達。君達みたいな凄腕の冒険者がいるなんて思わなかったよ」
ゴズとメズを倒したと、交易路で足止めを喰らっていた人達に報告する。傷だらけの冒険者は危機は去ったと安堵していた。
「この話は冒険者協会にも伝わるはずだ。冒険者としての功績に残る働きだろう」
「冒険者の間で、話が伝わるのはそんなにも早いのですか?」
僕は疑問に思って、冒険者にそう聞く。すると彼らは……。
「Aランク相当、もしくはオーバーの魔物は滅多に現れる存在じゃない。それに交易路なんて人通りの多いところにはね。それをほぼ被害ゼロで討伐出来たんだ。君達の活躍はどんな形であれ、広まることだろう」
そうなるなら、僕とルシファーの話が広まる前に、王国を出るのがいいだろう。
「でも被害ゼロに出来たのは、私達の前に善戦した貴方達のおかげなのです。彼らの活躍は勿論だとして、貴方達の活躍も私から報告しておくのです」
「本当かい? Aランク冒険者にそう言われるのは光栄だ。ありがとう」
カエデは詳しい話のために冒険者達と話し込んでしまう。こうしてみると、カエデが持っているAランク冒険者という肩書は影響力が大きい物だと分かる。
「ルシファー。これからの予定なんだけど」
「丁度いいわ。私もお前様に話したいことがあったの」
カエデが話している間、ルシファーと少しでも早く国を抜けようと話そうとした時だ。ルシファーも僕に話したいことがあったのか、ルシファーも僕のことを呼んだ。
「何かあったのかい? 僕の方は、早いところ国を抜けたいという話をしたかったんだけど」
「私達の話や存在が広まる前に、王国が手出ししにくい商業連合に行くっていうことよね。それは理解しているわ。
私が話したいのは、それよりも優先度が高い重要な話よ」
僕とルシファーの存在がバレるよりも重要な話……ってなると相当だろう。ルミナス王国で僕らの存在がバレてしまうのは、何度も言っている通り、命を狙われたり、刺客を放たれてしまう危険があるため、ここから出るのは最重要なはずだ。
封印されていた魔神が解き放たれ、忌み子の僕が生きている事実はそれほど重要な話なんだ。僕が平民や孤児だったらもう少しだけ重要度は下がったはずだけど、僕はエンデュミオン家の生まれ。エンデュミオン家が、忌み子である僕の存在を絶対に許さないだろう。どんな手段を使ってでも僕の存在を抹消するはずだ。
「こっちの方向かしらね。邪神の気配が弱まったおかげで感じることが出来たのだけど……私の気配を感じるわ」
「それって……!!」
僕はルシファーと出会った時のことを思い出す。十二に別れて封印されたルシファー。そのルシファーが自分の気配を感じ取っている。つまりそれは。
「間違いないわ。十二に分かれた封印された私という存在。この先に私の羽根があるということよ」
気が休まる暇もなく、僕らの前に新しい何かが起ころうとしていた。
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