8LUK ラックと戦とバトロワと
第5層都市、クリスティア。
その大通りはどこかの観光地かのように綺麗な道で、見渡す限り、左右には沢山の店が並んでいます。
「うわぁ〜、きれい!」
ミイはそれを見て興奮気味に叫びます。
「ミルク!あそこのお店見に行こうよ!」
どうやらミイこと美咲の以前から行きたかった場所である、フランスのパリとその風景が被るらしく、
「ちょっと疲れたよぉ、わたしぃ〜」
振り回されるミルクはヘトヘトでした。
第2階層ボスの赫の捕食者を倒し、それから何度かもボス戦を繰り広げ、少したくましくなったミイとミルクですが、赫の捕食者との戦闘後から、あの金髪の青年は現れなくなってしまいました。
2人は不思議に思いましたが、グングンと上がり続けるレベルによって、ピンチそのものが訪れることがグッと減ったので、困ることはありませんでした。
~ミイのステータス~
Lv:23
攻撃力:23
防御力:23
魔力:150
攻撃力そのものや、防御力は他のプレイヤーから見れば有り得ないほど低く見えますが、実際は、
~ミイの防具武器等装備時ステータス~
Lv:23
攻撃力:170
防御力:220
魔力:150
というようになるのです。
アバターのステータスそのものはとても低いですが、装備している武器や防具などの効果でそれを底上げしているのです。
他の同レベルのプレイヤーと同等か、それ以上の攻撃力と防御力を誇っています。
そしてミイとミルクともに様々なスキルも得ました。
「ん〜っ!これ美味しいっ!」
ホットドックのようなものを両手に持ったミイがふにゃふにゃしながらそう言います。
口の中はパンパンで、リスのようになってしまっています。
「ミイさん、それ私にもちょーだいなっ」
とだけ言ってミルクはミイが手にもつホットドックのようなものに勝手にかぶりつきました。
「んんんんっーーー!!」
口の中がいっぱいで喋れないミイは、上半身がなくなったホットドックを見て悲しそうに声を上げます。
そんな時でした。
ミイとミルク、いや、全てのプレイヤーの目の前にタブが現れました。
[~バトルロワイヤル開催のお知らせ~]
そんな見出しでした。
「なにこれ」
ミルクがタブを操作して、文章を読みます。
[現実世界時間5日後、初の公式PvPイベントが開催されることになりました!全てのプレイヤーに出場資格があり、また、上位3チームには豪華な景品も用意してあります!]
ふむふむ。それで、ルールは……
[ルール説明
今回のバトルロワイヤル、仮称<チームオブファイト(ToF)>は、2人1組のデュオ形式で参加していただくことになります。
出場資格はありませんが、参加できるのは先着300チームまでとさせて頂きます。
30人15組ごとのグループを10個つくり、それぞれのグループで勝ち抜いた上位3組が、決勝進出となります。只今より応募を開始しますので、ぜひご参加ください。
なお、詳しいルール説明に関しては、参加者が確定次第お送りさせていただきます]
「なるほど……」
「つまり、どういうこと?」
理解したミルクと、理解出来てないミイは顔を合わせます。
そのミルクの顔はやけに輝いて見えました。
「──参加しようっ!!!!」
そう言ったミルクはすぐに参加の手続きを開始し、数十秒後には済ませてしまいました。出場はほぼ確定です。
「え、なになに……!?」
まだ状況が理解出来てないミイは困り果てています。
「ミイ、つまりね──」
「つ、つまり……?」
ごくり。ミイは固唾をのみます。
「戦じゃぁぁぁぁぁっっっっ!!」
❖❖❖
目の前にあるのは巨大な檻。周りに広がるのは果てしない暗闇、そしてそこに1人の女性が閉じ込められていました。
そしてそれをどうにかして助け出そうとする少女がまた1人。
「ど、どどど、どうすればいいのぉー!!」
これはどうやら、助け出そうとしているより、ただただ泣きついているだけでしょうか。
「だ、大丈夫だから!落ち着い──ミイ!後ろ!」
振り向いた暗闇のその向こうから、ギラリと煌めく刃がミイの首を断たたんと高速で迫ってきていました。
「え──」
❖❖❖
「さてさて、始まりました記念すべき
男の司会者兼実況者の男の声が響き渡ります。
最後に小さい声で、「仮称ですが」と呟きました。
ミイとミルクはカラオケルームのような個室にいました。
そこに据え付けられているモニターの中では、その司会者兼実況者の男が話を進めています。
話の内容は主にToFのルール説明。そして──
「それではそろそろ皆さんお待ちかねの、それぞれ10グループの出場チーム発表といきましょう!!」
ドンッと、モニター内に10個の四角い枠が現れて、それぞれの中に5秒間隔で、謎の文字が並べられます。
「なるほど、これの四角いボックスが各グループで、その中の謎の文字がチーム名ってわけね」
ミルクがそう言います。
そして、Cグループと書いてあるボックスの中に、気になるチーム名が現れました。
「『ミ×2』って……変な名前だね」
ミイが呟いて、ミルクの方を向くと、
「な、ななな、なんてことを言うんだね!!」
なにか訳の分からないことを言ってました。
「もしかしてこれ、ミルクが付けた名前じゃない、よね……?」
「…………」
「…………」
明らかな絶望的ネーミングセンスでした。
そしての名前の由来をミイは訪ねます。
だって、ミイとミルクどっちも『ミ』がつくじゃん。
とか言っています。
とりあえずそんな話はさておき、ToFの開始までもう残りの時間は少なくなってきました。
ゲーム内時間10分後、試合の開始です。
「多分ミイはルールをあまり理解してないだろうから、説明しておくね」
「お願いします」
「今、このモニターに映ってるのが出場チームの名前と、そのグループ。同じグループ内のそれぞれのチームが、広いステージ内で戦いあって、最後の最後まで生き残った人が勝ちってわけ。バトルロワイヤルってやつね
バトルに持ち込めるものは今自分が装備している装備一式。回復アイテムは支給されるから、一個も持ち込みは禁止。スキルは使えるものは全て使ってよし。オーケー?」
「うん!おっけー!」
「あ、アバターのレベルによってステータスそのものに圧倒的な差が他の人とあるんだけど、それに関しては実力でどうにかしてくださいって書いてあったよ」
なんとも無責任な運営です。
しかしミイは少しも怖気づきませんでした。
なぜなら、
「私めっちゃラッキーガールだから大丈夫!」
とのことでした。
❖❖❖
酒場『アホ屋』では、多くの人で賑わっていました。
据え付けられた大きなモニターを見て、多くのプレイヤーが叫んできいます。
なぜなら、
「おいおい!トッププレイヤーの<ジーグ>さんがいんじゃねぇか!こりゃ見ものだァ!」
だそうです。
バトルはゲーム内の酒場や、街にあるモニターや、その他の施設で放送されています。
そのため街は、賭けをするプレイヤーや、ドリンクを飲んで楽しむプレイヤーで大盛り上がりです。
ここで優勝したプレイヤーは一躍有名人になるでしょう。
❖❖❖
[転送を開始します]
そんなタブが、ToF出場プレイヤー全ての前に現れました。
「お、こうやって移動するのか」
体がポリゴンになり、パラパラと消えていきます。
ミイとミルクは互いを見つめあって言いました。
「「勝とう!!!!」」
不運な私は全てラックに任せます!〜不運女子高生はゲームでラックに極振りするそうです〜 きむち @sirokurosekai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。不運な私は全てラックに任せます!〜不運女子高生はゲームでラックに極振りするそうです〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます